今般の淀川水系河川整備計画策定は許せない |
「2008年度」のどんづまりの3月31日に、近畿地整は「淀川水系河川整備計画」を策定・発表した。策定された「淀川水系河川整備計画」は、本質的に昨年6月20日に(淀川水系流域委員会無視の)「見切り発車『案』」そのものであった。しかし、発表のときにはあたかも4府県知事意見を採り入れたかのような「錯覚を起こさせ、誤魔化す」策を弄した。「地方分権が進んだ」「関係府県知事の意見を採り入れた」かのごときポーズをとり、遠方の地域では、「大戸川ダム計画が止まった」との報道だけがなされ、一部市民には「大成果だ」というような見方も出てしまっている。
皮肉を込めて「美しき誤解」が事実となっていくことを願う。
当会として以下のような「要求書」を近畿地整に送付し、その旨を淀川水系流域委員会庶務にも送った。
PDFファイル版
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河川法16条の2第3項・第5項の公然たる無視
今般の淀川水系河川整備計画策定は許せない
要 求 書
2009年4月4日
近畿地方整備局長 木下誠也 様
徳山ダム建設中止を求める会 (代表:上田武夫)
去る3月31日、まさに「年度末」のその日に、貴職は、淀川水系河川整備計画を策定・発表しました。この整備計画の策定手続及び内容には、納税者・国民・主権者として看過できない問題があることを指摘せざるを得ません。
(1) 「見切り発車」の問題-河川法第16条の2第3項-
昨年6月20日に、貴職(=近畿地方整備局長。「個人」ではないので、以下、木下氏も布村氏も、さらに以前の近畿地方整備局長の方々も区別せずに「貴職」といいます)は淀川水系流域委員会が「淀川水系河川整備計画原案」についての意見を取り纏める作業を進めているまっ最中に、「見切り発車」で、河川整備計画「案」を関係府県知事に提示しました。
これについては、昨年6月19日、当会として『河川法16条の2の没却は許せない/「見切り発車」をしないで下さい』という要望書を提出しましたが(そして多くの人々が、そうした声を届けましたが)、無視されました。
さらに、貴職は、昨年9月に、淀川水系流域委員会が取り纏めた意見書には、「一顧だにしない」という頑なな態度をとりました。
貴職は「時間がない、急ぐ」として「見切り発車」したわけですが、流域委員会無視の暴挙は、「案」を提示された関係府県知事を大いに当惑・混乱させました。結局、関係府県知事は、河川管理者の他に流域委員会(委員)の意見も別個に聴くなどの対応をせざるをえず、河川法上の知事意見が出揃うのに多くの時間がかかりました。つまり、却って整備計画策定を遅延させることになったのです。
河川法第16条の2第3項(の趣旨)に基づき、貴職自ら設置した淀川水系流域委員会を、自らの「ご都合」にあわないとなると、無視する … これは1997年河川法改正を、国土交通省自らが正面から否定するものです。こうした暴挙-法を守るべき貴職による法治主義の蹂躙は、河川管理者への深い不信を刻み、(ダム建設の是非を巡るの意見の相違を超えて)今後の河川行政に大きな禍根を残しました。
この「見切り発車の『案』提示」の延長にある今般の淀川水系河川整備計画策定には、納税者・国民・主権者として「同意できない」と言わざるをえません。
(2) 関係府県知事意見無視の問題-河川法第16条の2第5項-
河川法第16条の2第3項を”スルー”した「河川整備計画『案』提示」に対して、関係府県知事は、それぞれの府県民の負託に応えるべく、さまざまな方法で独自の検討を行い、さらに、「大阪・京都・滋賀・三重」の4府県知事は、協議を重ね、揃って合同の意見を貴職に提示しました。
しかし、今般の淀川水系河川整備計画をみると、これらの意見は「つまみ喰い」でしか顧慮されることなく、結局は、貴職が提示した「案」に小手先の修正を施したのみで、正式な「淀川水系河川整備計画策定発表」としてしまいました。
地方分権が叫ばれる中、そして河川法16条の2第5項という重い法の条文がありながら、「河川管理者が決めるのだ!」とばかり、まるで時計を20年も前に戻したような今般の淀川水系河川整備計画策定でした。このことに強い抗議の意を表明します。
(3) 3月31日発表の「二枚舌」
「2008年度内の淀川水系河川整備計画策定」に拘ったのでしょう、2008年度の末日・2009年3月31日に、貴職は「淀川水系河川整備計画」を策定・発表しました。
この発表の仕方にも「まやかし・誤魔化し」があります。貴職は、発表文書において「淀川水系河川整備計画」本文の前に、大戸川ダムの工事を進めない旨の「言い訳(?)」を出し、あたかも4府県知事の意見を採り入れて「案」を修正したかのような錯覚を与えました(報道によると関係府県知事に対しても、この部分のみを先行的に連絡したとか)。
しかし、実際は単に当面は大戸川ダム本体工事予算を付けない、としただけで、「淀川水系河川整備計画」本文には、大戸川ダムをしっかり位置づけています。関係府県知事の意見を採り入れたようなポーズをとり、それを大きく報道させ、実際は「河川管理者が決めるのだ!」を押し通したわけです。
納税者・国民・主権者を錯覚させ、誤魔化すような、こうした不誠実な発表の仕方は、淀川水系の今後の河川整備の進捗に、大きな負の要素として残り続けることになるでしょう。その責任は、すべて貴職にあります。
(4) 終わりに-要求・住民の意見に耳を傾けよ-
1997年の河川法改正は、河川流域住民の思いや取り組みと河川管理者自身の自省の合致であり、単なる「時の勢い・気まぐれ」ではなかったはずです。貴職の河川法16条の2に関する姿勢は、河川流域住民に対する冒涜であり、河川行政をより良いものにしようとしてきた河川局の諸先輩と現役職員に対する侮辱でもあります。
河川流域住民の声・意見にもっと耳を傾けて下さい(河川法16条の2第4項をもっと活かすべき)。それは同時に河川法16条の2の第3項・第5項を尊重することでもあります。「河川管理者が決める!(他の者は黙って従え)」では、河川行政は円滑に進まず、河川整備の進捗に支障を来し、ひいては河川流域住民の安全の確保を遅延させます。
河川と人、そして住民と河川管理者のよりよい関係を築くためにも、今般の淀川水系河川整備計画については、計画そのものも淀川水系流域委員会による「事業進捗点検」の対象とし、計画の早期の見直し(変更)も含めて、流域住民の納得できるものとしていくことを強く求めます。
以上
連絡先:徳山ダム建設中止を求める会・事務局
近藤ゆり子
〒503-0875 岐阜県大垣市田町1-20-1
TEL/FAX 0584-78-4119
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