徳山ダム渇水対策容量がお役立ち? |
「環境用の水を利水に回せないかを検討していく」!
もう古い発表ですが:
12月8日中部地整発表
「揖斐川流域における近年30年間で2番目の異常渇水状況について」http://www.cbr.mlit.go.jp/kisya/2009/1211.html
http://www.cbr.mlit.go.jp/kisya/2009/1211.pdf
・・・・徳山ダムの水がどんどん少なくなって、有効貯水量のうちの不特定容量分を割り込んでいることは知っていました(洪水調節容量は洪水期に空けたまま)。
水資源機構徳山ダム管理所HP
徳山ダムの貯水状況
私はこのところの徳山ダムの「タマラナイ」有り様を眺めていて「(運用のあり方も含め)やっぱり徳山ダムはダメ・ダムだなぁ」と思うのですが(※)、河川管理者の視点では、まるで違って消えるらしい・・・「早速、徳山ダムの渇水対策容量を使う場面が出来て、良かった、良かった」。
※ bkog 哀れ!「観光放流」どころではないカラカラ徳山ダム
少しマニアックになりますが、12月8日の発表文書について幾つか指摘しておきます。
(1) 「近年30年間で2番目の異常渇水」
今年は8月後半から降雨が少ない、というのは事実と感じています。しかし1年の途中の数ヶ月において降雨が少ない、ということは、河川管理者が一般的に「渇水」といっている概念とは、異なります。中部地整発表は、ここを意図的に混同しています。
「異常渇水」とは、一般的に「10分の1渇水を越える渇水」を指します。「10分の1渇水」とは、「近年20年間で少ない方から2番目」という意味です。(当然、どの20年を採用するかのスパンの採り方で異なってくる)。「少ない方から」とは各年の渇水流量を並べて比べます。
渇水流量=1日24時間の単純な平均流量(水位)で、1年のうち355日を下回らない流量
つまり1年が終わって流量データが確定しないと「近年××年間で××番目の渇水」というふうにはいえないはずです。
(2) 「9月の降水量」「8月下旬から11月までのの累加雨量」 … 流量でなく?
中部地整発表は「過去30年間の雨量を見ると、9月の月降水量は最小、8月下旬から11月までのの累加雨量でも2番目に少ない」として「近年30年間で2番目の異常渇水状況」と発表しています。
しかしこうした1年のうちの一時期の、それも(流量ではなく)降水量を取り出して云々するのは、(上述のように)一般的な「渇水」「異常渇水」という概念とは違ったものを述べていることになります。「意図的な情報攪乱だ」と私は思います。
(3) 「流域を平均的に見た」
中部地整発表は「揖斐川の万石地点(大垣市)上流域を平均的に見た場合」としています。私は「渇水」について、いろいろ河川管理者側から説明を受けたときに(こちらから訊きまくるのですが)、「流域平均降雨量」で説明されたことは一度もない、と記憶しています。「流域平均降雨量」(各観測点での降雨データにティーセン係数をかけて算出)は常に洪水との関係で聞かされてきました、河川管理者が基本高水流量を算出するときに、流量確率ではなく降雨確率を採るからです(※)。
※ 河川管理者がデータとして「流域平均降雨量」を蓄積することは否定しません。同時に、「気象」について河川管理者が何か述べているくせに、どんどん観測所を統廃合していることは「問題だ」、と思います。同じ地点での長い期間の記録がとれなくなってしまいます。
(4) 多雨?少雨?
名古屋市上下水道局は、2009年の一日最大給水量が40数年ぶりの数値を下回った(=905.970m3)ことを明らかにし、「7月下旬から8月上旬にかけては顕著な多雨」としています。
1ヶ月とか3ヶ月とかの降水量を取り出して云々すると、今年(2009年)は少雨なのか多雨なのかも分からなくなります。
まして流量に触れずに「異常渇水」云々はヘン。
(5) 流域は本当に渇水なのか?
平六渇水でも大垣の自噴井は涸れませんでした。しかし、噴出する勢いが非常に悪かったのは事実でした。経験的に、揖斐川の流れが細くなる状況が続くときは、自噴井の水の勢いがよくない、という相関を感じています。
しかし、今、”大手いこ井の泉”の自噴井は元気は悪くありません(12月16日撮影)。
(自噴の勢いが悪いときは上の口からは水は出ない)
(6) 揖斐川の万石地点の正常流量が過大なのでは?
あの巨大な徳山ダムがこうもカラカラになってしまっているのは、万石で毎秒20m3の流量を常に満足させるようにダムから放流しているからです。
万石で常に毎秒20m3の流量が本当に必要なのか? 根拠・理由は、私には分かりません(例の「正常流量検討の手引き」で算出したようですが、代表魚種の選定一つをとっても「根拠が分からない」から全体として「分からない」)。
ただ、はっきりしていることは、徳山ダムからの大量の放流による流量確保(平準化)は、揖斐川に良い影響をもたらしてはいない、ということです(でもって「徳山ダムの弾力的運用検討会」なるものを設置する。マッチポンプもいいところ)。
blog 徳山ダムで揖斐川に異変?
(7) 「渇水対策容量」を使いたかった?
徳山ダムの水位がどんどん下がっていることは、シロウトが見ていても分かります。不特定容量を使い切ったことも分かります。発電容量を回して貰っているときには、河川管理者から、特に発表はありませんでした。
今般「渇水対策容量」に手をつけたことを宣伝したかったようです。
<オマケ1>
2009年12月12日 中日新聞朝刊
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木曽川導水路、都市用2・44トンどまり 環境用に転用できず
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009121202000148.html
国土交通省が岐阜県内で計画している徳山ダム(同県揖斐川町)の木曽川水系連絡導水路事業をめぐり、異常渇水時に利用できる都市用水(水道用、工業用)が導水路の供給能力の10分の1程度にとどまることが11日、同省への取材で分かった。専門家からは「住民が本当に水を必要とする異常渇水時に役立たず、巨費を投じて造る意味はない」との指摘が出ている。
(中略)
中部地整の担当者は「実際の運用では、都市用水が不足する事態にならないよう、木曽川上流のダムを総合的に運用するほか、環境用の水を利水に回せないかを検討していく」と話している。
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「環境用の水を利水に回せないかを検討していく」という … ここに12月8日発表のホンネがあるようです。つまり現在は「計画上は存在しないこと」を「計画」に入れ込んでいくための「異常渇水状況」話。
<オマケ2>
12月9日、発表文書に載っている担当者(中部地整河川部 建設専門官)に聞きました。
近藤:「不特定容量が枯渇したのは1ヶ月ちょっと前。発電用を先に使って、渇水対策容量を後回しにした理由は? 別の言い方をすれば、どうせ使わない・使えないという意味では発電と同様の(都市用水の)利水容量を使わずに、渇水対策容量を使うのはなぜですか?」
専門官:「本来は、渇水対策容量が先だろうけど、発電は(事業者がダム直下で)工事中で話がしやすく協力を得やすかったので。」
近藤:「揖斐川分の渇水対策容量は1300万m3しかないけど、これを使い切ったらどうする予定ですか? 木曽川分の渇水対策容量4000万m3を使う?それとも都市用水の7800万m3を使う?」
専門官:「決めていない、そのときになってみないと・・・。多分、木曽川分の渇水対策容量4000万m3のほう・・・」
近藤:「ところで、きょうの新聞の見出し(徳山ダム 放流強化/揖斐川の異常渇水に備え)だと、まるで『徳山ダムの放流量を増やす、渇水対策で(ダム)予備放流をする』かのように読めてしまうけど? ヘンじゃないですか?」
専門官:「見出しまで指定できませんので。」
近藤:「もちろん、新聞社への報道統制を強めろ、などと言っているのではありません。ただこんなにも報道関係者に『ご理解頂いていない』現状は問題ではないですか? ① この状況で『関係住民の意見を反映させる』河川整備計画はできるのでしょうか? ② そちらが作成する資料では、平六渇水の被害状況(河川局長答弁でも「被害データは存在しない」。つまり、公的には「平六渇水(環境)被害」は存在しない)を表すのには、もっぱら新聞記事を使っています。新聞(報道)の『使い方』がご都合主義になっていませんか?」
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木蓮の木にまだ葉っぱが残っています。同時に来春の「芽」も見えます。