徳山ダム湛水誘発地震?? その2 |
◇「ダム湛水が地震を誘発する」-1
大渕絹子参議院議員の委員会質問(抜粋)
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(1) 132-参-環境特別委員会-3号 平成07年02月21日
○大渕絹子君 建設省はダム地震ということについてどういう認識を持っておられるか、聞きたいと思います。
巨大ダムの建設によって地震が起きた例として、アメリカのフーバー・ダム、それから中国の新豊江ダム、インドのコイナ・ダム、ギリシャのクレマスタ・ダムなど大変多くの事例があるわけですけれども、日本でも、昭和五十九年十月五日付の日経新聞ですけれども、科学技術庁の防災センターが調査をして、全国で高さ百メーター以上の大型ダム四十二カ所のうち、ダムによって地震が発生をするというふうに思われる箇所が六カ所あるということを発表しておりますね。そして、ダム建設によって地震が誘発をされるという事実がこういうふうに調査結果として発表されているわけですね。
ダム地震について、建設省の認識はどうですか。
○説明員(青山俊樹君) 一般に、ダムの建設とその貯水によって地震が誘発されるのではないかという御懸念があるということでございますが、これまで幾つかの研究はございますが、物理的な因果関係が明確になっている、明らかにされているというものではないと認識しております。これまで報告されました例は、貯水量が二十億立方メートルを超えるような非常に大きな海外のダムでございまして、日本国内ではそのような大きなダムはございません。ダムの貯水と地震の発生の因果関係が日本においては明確に確認されているものはまだ私どもとしてはないというふうに考えております。 なお、丹生ダムにつきましては、ダムの容量が約一億五千万立方メートルでございまして、大規模な地震がこの貯水によって引き起こされる可能性は極めて小さいというふうに考えております。(近藤注 青山俊樹氏はその後「技監」となり、現在、水資源機構理事長である)
○大渕絹子君 この防災センターの調査をした調査室長さんが言っているんです。「ダムが誘発する地震のメカニズムを、貯水で高い圧力のかかった水が地中に浸透し、岩石の小さな割れ目に水が染み込んで破壊が起こりやすくなることで説明できる」ということを言っています。そしてこの方は、引き続いて「個々の地震とダムの因果関係はまだ言えないが、この結果で調査の必要性は明らかになった」ということも言っています。それから、現存するダムや建設予定地の徹底した地質調査とか地下の岩石にある割れ目がどの程度多いかなどという地質学的な検査も続けていく必要があるというふうに指摘をしているわけですけれども、科学技術庁の方、見えておられますか。
こういう御指摘について、その後科学技術庁は継続をした調査とか研究をやられておりますか。
○説明員(山下弘二君) 御説明申し上げます。
先生今御指摘の新聞記事は、当時、昭和五十二年から六十三年まで、今東北大学理学部の教授をなさっている大竹先生という方が研究員として在籍して、その結果……
○大渕絹子君 聞いたことにだけ答えてください。
○説明員(山下弘二君) その論文を出した以降、当科学技術庁傘下の研究所で継続的な調査研究を行った事実はございません。
○大渕絹子君 科学技術庁としてそういう研究調査を行っておらないのですか、そういうことを聞いたのですけれども。
○説明員(山下弘二君) お答え申し上げます。
科学技術庁として、当時は防災科学技術センターと申しましたが、現在、防災科学技術研究所の研究としてその論文以降特に継続した調査研究は実施しておりません。
(2) 136-参-建設委員会-3号 平成08年(1996年)02月22日
○大渕絹子君 事故の件はこのぐらいにいたしまして、次の丹生ダムの建設についてお伺いをしたいと思います。
琵琶湖総合開発の一環として建設が予定されております滋賀県の北部にあります丹生ダムについて、市民の皆さんから、このダムの建設によってダム誘発地震が起こり、そのダム誘発地震がすぐ近くにあります柳ヶ瀬断層や奥川並断層を刺激し直下型の活断層地震が起こるのではないか。そしてこの活断層地震が起きると、その先に敦賀断層もつながっているわけで、その先にある敦賀湾あるいは若狭湾の原発の立地のところに重大な影響を与えるのではないかという懸念が、もう膨大な資料とともに一年、二年くらい前から私のもとに寄せられております。
私は当初、そこの丹生でダム地震、微動地震が起こったにしても、まさか原発のところまではという考え方を持っていたわけでございます。当初はそんなことがあるだろうかということで疑っていたわけでございますけれども、今大臣のもとにも届けてありますが、送られてきました調査報告書やそれから数々の活断層に対する文献、あるいは古い地震の文献、あるいは今直接に石油やガスの開発に携わっていらっしゃる方の、水あるいは流動体が地震を引き起こすんだということの検証をされる論文等々たくさん読ませていただきまして、もしかしたらこれはあり得ることなのではないかというふうに思いました。
それで、きょうあえて取り上げさせていただいているわけでございますけれども、大臣、率直にこの市民の皆さんが行った「ダム、断層、原発調査報告書」を読まれた御感想をお聞かせいただけますか。
○政府委員(松田芳夫君) 私からちょっと御説明させていただきます。
ダム建設後、ダム湖の貯水によりまして地面の中に水が浸透し地震が誘発されるのではないかというような懸念が一部にございます。このことにつきましては、これまでに幾つかの研究がございますが、物理的な因果関係が明らかにされているものではないものと認識しております。また、これまでに報告された事例では貯水量が約二十億立方メートルを超える非常に巨大な海外のダムでございまして、日本国内ではそのような大きなダムは今のところございませんし、またダムの貯水と地震の発生の因果関係が明確に確認されているものは今までのところ聞いておりません。
なお、丹生ダムにつきましては、貯水量が約一億五千万立方メートル程度であり、大規模な地震が貯水によって引き起こされる可能性はないものと判断しているところでありますが、今後ともこの問題については私どもも十分に関心を持って研究してまいりたいと考えております。
○大渕絹子君 ちょっとそこの認識は違うんじゃないかと思います。
建設省の河川局から届けていただいた資料を見させていただいても、ダムの湛水によって微動地震は起こっているということはもう数々の文献でも紹介されておりますし、皆さんのお願いをしている技術者の立場からという方の文献の中にも実例としてたくさんの事例があるわけで、ダム自身が湛水によって微動地震を起こすことは確実でございます。そして、その微動地震が二・三キロ離れている奥川並断層や、四キロ離れている柳ヶ瀬断層にまで影響を与えるかどうかということがわからないということだけなんであって、ダムによって地震というのは確実に起こることは確かですので、今の御答弁者の認識というのはちょっと違っているというふうに思います。
そしてもう一点は、これはこの報告書が出された後に事実関係がわかってきたことでございますけれども、敦賀の二号発電所の地盤が大変緩い地盤であるということが御報告をされております。岩盤の分類表ではCMになっているということ、しかも花崗岩、これは先ほど朝、自民党の同僚委員の方からの指摘もあったわけですけれども、六甲山の花南岩の山が今回の地震によって風化をされているところはこういうふうにめためたに崩れるわけです。(資料を示す)風化をされていないかない花崗岩については、こういう崩落の仕方をします。そういうことで、花歯岩というのは地質学的に非常に振動には弱い岩盤であるということがわかってまいりました。それで、二号基はそういう花崗岩の岩盤の上にあるという事実が文献によってわかってまいりました。この事実を見て、私は質問をしなきゃいけないなと思ったんです。
ですから、丹生ダムによって引き起こされるかどうかということは、かつて長野県の西部地震が牧尾ダムの湛水によって起こったということを随分と指摘された地震学者がたくさんおられたわけですけれども、その後、その湛水とダム誘発地震についての調査研究はどこの機関においてもやられてこなかったんです、事実。これは、私は環境委員会の質問でとってあるわけですけれども、その研究をされていないことについて市民の皆さんが地震学者、地質学者なども交えて現地に入り幾日もかけて調査研究をした結果、こういう報告書が出てきて、危ないからはっきり安心とわかるまで一時工事を中止して、そして安全確認をした上で行ったらどうですかという警告を発しているわけです。そのことについて私は声を大にしてお訴えをしたい。
今回の北海道の事故もまさに予測しなかったと皆さんは言っておりますけれども、恐らく地域の人たちは大丈夫だろうかというような声を上げていたと思います。それが国会まで届いてこなかったわけでございますけれども、幸い今回のこのことは国会にまで届いてきています。私はぜひ皆さんの適切な御判断でこの調査が続けて行われることを心からお願いをしたい。
あわせて、きょう来ていただいておりますけれどもちょっと時間がなくて答弁していただけませんが、気象庁はここの地域、敦賀断層の地域が地震空白地だということの中で、平成七年度の補正予算で地震予知、探知の予算をとって井戸も二本掘ることが決定をしています。そして、さらにつけ加えれば、丹生ダム建設予定地において建設省でも三本ぐらいの井戸は掘って地震に対する観測をしたいということも言っているわけでございますので、この際、そういう結果が出るまでダム建設の工事は一時中止をして徹底的な調査をしてから行っていただきたい、そのことを強くお願いを申し上げます。大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(中尾栄一君) 丹生ダム建設に当たりましては、安全性の確保は委員の御指摘のとおりに最も重要な課題であるということを考えておりまして、従来から地震を含めあらゆる角度から安全性を確保するための調査、検討を重ねてきたわけでございまして、丹生ダムも含めて今後ともその方針にいささかも変わりはないという考え方に立っておるわけでございます。
また、ダム事業につきましてはさまざまな御意見や御質問に対して誠意を持って説明してまいったところでございますが、今後とも、ダム事業について疑問の声がありますればきちんとそれに説明し理解を求めるとともに、さらに安全性を確認しながら万全の体制で、先ほどの委員の御指摘いただきましたような心を心とし、それを体しながらダム工事の建設を進めていく所存であることを申し上げたいと思います。
○大渕絹子君 ダムができて湛水をして、そして起こってしまってからでは遅いんですよ、大臣。だからこそ、そこの安全の確認ができるまで、その予算があるならば違う方に向けることができるんじゃありませんか、そのダムの建設。今の時期で、少しの間ストップをさせて道路の防災対策に使うこともできるじゃありませんか。平成八年度では五十億も予算がついているということですから、少し一年間ちょっとストップして、研究結果が出るまでその予算を使わないで済むならば違う方に使うこともできるというふうに思いますので、その点は強く重ねて要望しておきます。