もし名古屋市が「撤退意思表明」をしたら-「撤退ルール」問題 その1 |
7月10日に、徳山ダム導水路問題の「副知事・副市長会議」が、突然(というのは、)水資源機構木曽川水系連絡導水路建設所HPに「開催します」が掲載されたのは、10日になってからだたから。9日中に記者クラブに投げ込みをしたことは後に知りましたけど。どうせクローズドだから掲載は後でも良い?毎度のことながら「透明性の高い」ことで・・・)
水資源機構木曽川水系連絡導水路建設所HP内
H21. 7. 10 木曽川水系連絡導水路に係る三県一市副知事・副市長会議
・会議資料
キモは「試算」ですが、さすが官僚さん、目眩ましがたくさん仕込んである。
その「目眩まし」を超えて正しい理解のもとでの試算については「その2」で。
前提として「水資源機構法施行令(俗に「撤退ルール」)」のおさらい。
まず、利水者である名古屋市(費用負担同意などの文書が全部公営企業管理者ではない「名古屋市長 松原武久」になっているのを、開示文書で発見して驚きました。「違法だ」とまでは言いませんが、公営企業の独立採算制との関係からすれば「法の予定するところ」ではない、と思います)は、公文書で「事業から撤退する意思」を事業者(この場合は水資源機構)に届ければ「撤退」は決まります。他の事業参加者の同意や協議は関係ありません。
この辺りについて、ある人に「要約」を送ったのでPDFファイル版で。
「導水路問題-「撤退ルール」の要約
2003年に、水資源機構法施行令(2003.7.24)を作った人々(本省の補佐たち。3つの課が関係)に随分聞きました。
つい先日、そのポストを継いでいる官僚さんが「Nさんはそんなふうには言っていない、と言っている」などと言い出しましたが、言った・言わない論争なればこそ「言わなかった」証明責任を果たしてよね。こちらは細かいメモがあるのだから(どこぞの偽メール事件のような話にはならない。そして、私はウソツキ呼ばわりされても失うものはない)。
2003年には「個人的見解」としながら、こんなことを言っていました。
☆ 水資源機構法施行令(俗に「撤退ルール」)は撤退しやすいルールである。
☆ 撤退者が、青天井のペナルティ的な負担を押しつけられるということにはならないようにした。
これが単純に「個人的見解」にとどまらないことは、当時の報道が物語っています。
◎2003年7月1日/官庁速報
自治体、企業のダム撤退で新ルール=費用分担を明文化、過大投資防止-政府
政府は、ダムの水を上水や工業用水に使う地方自治体、民間企業などがダム事業から撤退する際の費用分担ルールを新たに策定する。撤退する事業者に対し、不要になった過去の投資分を負担させたり、引き続きダム事業に参加する事業者の負担額を抑制したりして、費用分担のルールを明文化。計画時よりも需要が落ち込んだ事業者が撤退しやすい環境を整え、過大な投資を防ぐ。
現在、関係省庁で調整を進めており、早ければ7月中旬の閣議で、水資源機構(現在は水資源開発公団、今年10月に改組)設置法の政令案を決定。同機構の設置・管理ダムを対象にルールを導入する。国土交通省が設置・管理する直轄ダムについても、同様のルールを導入するため、特定多目的ダム法の改正も視野に入れつつ、今後必要な検討を進める。
多くのダムでは、洪水時に備える治水容量に加え、工業や農業、上水道などに使う容量があり、治水部分は治水特別会計が負担。利水部分は自治体や民間企業などの事業者が建設費の一部を支出し、利用料金で賄っている。
ただ、事業計画を作った時に比べ、水需要が落ち込んでも、関係者間で計画変更後の事業費をどう分担するかが決まっておらず、計画を変更しづらかった。そのため、実態に合わない過大な投資が続き、確保したダム容量よりも水の利用量が大幅に下回ったり、水道料金や工業用水の料金が必要以上に高くなったりする可能性があった。
新ルールでは、一部利水者が撤退・縮小し、事業計画が変わっても、残された事業者の負担額が過度に増えないよう配慮。一定の算定方法で算出される金額分だけに超過負担を抑える。一方、撤退する事業者に対しては、残された事業者には必要のない過去の投資額や残務処理に要する経費などの負担を求める。
これまでも水資源開発公団の栗原川ダム(群馬)などが中止に追い込まれているが、工事着工前だったため、費用分担の在り方が問題になることはなかった。(了)
◎[時事通信社]2003-07-02-05:23
ダム事業の撤退で新ルール=費用分担を明文化、過大投資を防止-政府
政府は1日、ダムの水を上水道や工業用水に使う地方自治体・民間企業などがダム事業から撤退する際の費用分担ルールを新たに策定する方針を固めた。工事に着手したダムについて、不要となった過去の投資額を撤退する事業者に負担させる一方、引き続きダム事業に参加する事業者の負担額を抑えるなど、関係者間の費用分担のルールを明文化。計画時よりも需要が落ち込んだ事業者が撤退しやすい環境を整えて過大な投資を防ぎ、近年の公共事業批判に対応する。
まず水資源開発公団のダムで、こうしたルールを導入するため、関係省庁で調整した上で、7月中旬の閣議で政令を決定。国土交通省のダムについても、特定多目的ダム法の改正も視野に入れた検討を進める。
(続く)