もし名古屋市が「撤退意思表明」をしたら-「撤退ルール」問題 その2 |
(承前)
名古屋市が単独で撤退できることは、イロイロ誤魔化しても明白です。国交省河川官僚さん達も否定はしていません。
しかしキモは「ナンボ払って撤退することになるか」ですよね。
「法律の定めに基づいて行う」とどうなるか?
法令に明るい在間正史弁護士に「論理」をもって試算して貰いました。
利水者(流水を水道又は工業用水道の用に供する者)の撤退問題
木曽川水系連絡導水路事業費用負担(表)
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在間正史です。
昨日10日の三県一市副知事副市長会議での資料の撤退後事業費880億円に基づいて、撤退縮小後の費用負担額を、水機構法令の撤退ルールに基づいて、撤退前の負担額計算と同じ分離費用身替妥当支出法で計算しました。結果を添付します。これだと、名古屋市の撤退負担金はゼロに等しい(費用負担だけからいえば、名古屋市は願ったり叶ったりの満足のいく結果)。
結果は、三重は撤退前後で変化なし、岐阜は1000万円の増額、愛知は約110億円の増額となります。
官僚さんは「誤解を与えるように誤魔化しはしますが、嘘はつかない」と思っています。資料では、わざわざ「国、三県の新たな負担が生じないことを前提として試算した場合」とことわったうえ、「負担者が未定」の概算額は111億円となったといっています。「国、三県の新たな負担は生じないので、そのように試算した」と言っていません。官僚さんはそう弁解するでしょう。また、「ちゃんと「国、三県の新たな負担が生じないことを前提として」と説明しており、「名古屋市が111億円を負担する」というのはマスコミ等あなた方の勝手な理解です」と言うでしょう。
撤退ルールでは、残った者に新たな負担を生じさせないということはあり得ず、撤退ルール(正しくは撤退のときの費用負担計算ルール)に従って計算して、その結果によって、残った者の費用負担額が決まります。その結果が添付(PDF表)のものです。大体こんなものでしょう。
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7月10日に、国が、副知事・副市長会議に出した資料は、「国、三県の新たな負担が生じないことを前提として試算した場合」と注釈を入れ、「負担者が未定」の概算額は111億円となったといっています。水機構法施行令30条2項1号ハに基づく撤退する名古屋市の撤退負担金(実際は同号ハ(1)の不要支出額)については、官僚さんは何も明らかにしていません。副知事副市長会議資料の「負担者未定」がそれでないことは官僚さんも分かっています。ウソをついた、とは言われないために「隠し味」的な言い訳を各所に忍ばせています、さすがぁ!!!
水資源機構中部支社副支社長の富岡氏は「水機構法施行令30条2項但し書き」をさかんに口にするようですが、それは本籍である愛知県の代弁者だからです。
「水機構法施行令30条2項但し書き」を徳山ダム導水路事業で持ち出すには、相当な「国交大臣の政治決断(=法律もクソもない横車)」が必要です。
これについての在間弁護士のコメント
「水機構法施行令30条2項但書の適用可能性は無し」-
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名古屋市の撤退負担金を水機構法施行令30条1項、2項本文が規定する分離費用身替り妥当支出法に基づく撤退ルールの適用を排除して算定することは撤退ルールの根幹をなしている「不要支出額」(水機構法施行令18条2項、特ダム法施行令6条の2)の考え方から到底無理です。撤退ルールはそれなりに合理的な計算方法であって、名古屋市撤退負担金は、撤退ルールが適用される典型的な場合です。
これで但書の例外を適用すれば、撤退ルール自体の否定です。官僚さんも、木曽川水系の一施設のために制度全体を否定することはあり得ないでしょう。
「著しく公平を害する」のは名古屋市が徳山ダムから撤退したとき、水を使わないのに撤退負担金として、撤退前の水を使うときの費用負担金と同じ額を支払わなければならないことです。この場合は、30条2項但書を適用すべき場合でしょう。政権交代に期待するのはこの場合です。
なお、万が一、水機構中部支社や中部地整の末端官僚さんが乱心を起こして、30条2項但書を適用して撤退負担金を定めても、水機構法13条2項があり、名古屋市の同項に基づく費用負担の同意が必要であって、名古屋市がその費用負担に同意しなければ、それは撤退負担金になりません。結局、名古屋市が腰砕けにならないことが肝心なのです。
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多分、今、官僚さん達が考えていることは「事業の冷凍保存」でしょう。
いつの日か、「解凍」すればまた蘇るように、大切にしまっておく・・・・。
(この稿 了)
