神田真秋愛知県知事の発言は確信犯か?妄言か? |
9月29日、夜のNHKニュースに以下のようなものがオンエアされました。
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神田知事 導水路継続を要望へ
愛知県の神田知事は、29日の県議会で、名古屋市の河村市長が国に中止を求めた木曽川導水路の建設計画について、前原国交相に対して、事業を継続するよう求める考えを示しました。この中で、神田知事は「政権が代わっても、導水路の必要性は変わるものではなく、徳山ダムと導水路は一体不可分のものだ。導水路事業が中止されれば、愛知県は徳山ダムで得た水を放棄させられるに等しく、その場合は、ダム本体の建設費や維持管理費を負担することに県民の理解は得られない」と述べました。
その上で、神田知事は「愛知県としては、導水路事業が県民の安全安心のために不可欠だということを国や前原大臣に申し入れたい」と述べました。
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神田知事が徳山ダム導水路事業に固執していること自体は「まあそうでしょう」。
だけど「導水路事業が中止されれば、愛知県は徳山ダムで得た水を放棄させられるに等しく、その場合は、ダム本体の建設費や維持管理費を負担することに県民の理解は得られない」というのは、滅茶苦茶な言い分で、とてもではないが「理解は得られない」。
2003年~2004年の事業費増額の際、利水者としては単独意思で撤退できるように、法的整備がなされた(水資源機構法施行令 03.07.24施行)に、愛知県は「徳山ダムの水が要る」としました-そのときに、神田氏はもう愛知県知事だった-。
ダムでの新規利水を確保するということは、ダムで確保した水を取水・導水する専用施設を自力で建設して、なお、独立採算が維持できる、という見通しがあってのことのはずです。
「その見通しは間違いだ。需要は発生せず(不要)、採算が合うはずがない」と私たちは言い続けました。でも(利水者としての)愛知県の名古屋市も、「要る」としてしまったのです(徳山ダム建設事業実施計画変更 04.07.15)。ハンコを押したのは企業庁長だろうけど、神田知事も「知らなかった」わけはありません(都道府県協議の当事者として関与しているし)。
・徳山ダム建設事業に関する事業実施計画変更の概要
・徳山ダム建設事業に関する事業実施計画
もともと愛知県が徳山ダム事業に利水者として「乗った」ときには、渇水対策容量などは存在しませんでした。
名古屋市の返上分(1996年10月に名古屋市は「水利権半分返上」を言い出した)を、1998年に「渇水対策容量」とすることにしてしまいました。が、このときにも「渇水対策という名目の治水費用で、利水者の導水路建設費を助けてやる」などとという国の約束はなかったはずです(あったらおおごと-探してみようか?)。
愛知県は、利水者として自力で導水施設を作ることを前提として徳山ダム建設事業に「乗り続けた」のです。
導水路建設事業費65.5%を国にオンブできなくなったとしても、話は「もともとの原則に戻った」だけ。「愛知県は徳山ダムで得た水を放棄させられるに等し」いというのは、そもそも愛知県が「徳山ダムの新規利水が要る」と言って徳山ダム事業に乗り続けたことが大間違いだった、と自白しているに「等しい」。「理解を得られない」徳山ダム事業に固執し続けた”自業自得”。

これについて、以下のようなコメントが寄せられています。
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10月1日の朝日新聞社会面に出ました。知事発言の内容はNHKのほうがまとまっていて理解しやすい。以下、コメントです。
①「徳山ダムと導水路は一体不可分のものだ」
→逆は真ならず
本導水路は、徳山ダムの水を導水する施設ですから、徳山ダムと一体不可分のものです。しかし、逆に、徳山ダムは、導水するのに、本導水路以外に、目的各別の導水路があるわけですから、本導水路とは一体不可分のものではありません。逆は真ならずです。こんなことは、論理学を持ち出さなくとも、論理の初歩ですから、弁護士であった神田くんが知らないわけはない。誤解を誘導しようという意図的な発言ですね。
②「導水路事業が中止されれ ば、愛知県は徳山ダムで得た水を放棄させられるに等しく」
→愛知県水道単独では導水路は建設できない、するつもりもない
共同事業としての本導水路が中止されても(国交大臣が権限として出来るのは流水正常機能維持目的の中止だけで、新規利水目的は中止権限はない)、愛知県は水道用水のための導水路は建設できるのですから、徳山ダムで得た水を放棄するわけではない。したがって、「放棄するに等しい」と言う以外にないわけで、その前提は、本導水路負担額の186億円では建設事業に参加が出来るが(後記③も参照)、愛知県水道用水単独建設費の571億円(名古屋市撤退後の880億円についての愛知県水道だけの上流施設の身替わり建設費)では導水路の建設ができないということですね。また、するつもりもないということですね。
③「その場合は、ダム本体の建設費や維持管理費を負担することに県民の理解は得られない」
→徳山ダムの水は需要はなく、本導水路は徳山ダムが出来ちゃったから導水路 ダム本体の建設費や維持管理費を負担しないということは、徳山ダムの水はいらないという意思表示。
愛知県水需給想定調査では、徳山ダムの水は、愛知県水道(愛知用水地域)の6年後の2015年の需要に対して2/20規模渇水年の安定供給水源として必要な水源になっていた。したがって、必要なら徳山ダムの水が使えるように導水路を2015年までに建設しなければならない。しかし、徳山ダムの水がいらないということは、その供給の必要がない、つまり、それを必要とする需要がないということ。
それでも、新規利水負担の186億円を負担して本導水路に参加するのは、徳山ダムの水は需要がなくて使用しないが、徳山ダムが出来ちゃったから、その水が使えるように施設整備だけはするということにすぎない。
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♪ 真秋くん、このごろ少~しヘンね。

愛知県が「堀川への導水」を人質にして(名古屋市の撤退を妨害すべく)脅しているのは、何重にもナンセンス。
そもそも愛知県にそんなことを言う権限はありません。河川管理者である国交大臣(具体的には中部地方整備局)が、徳山ダム導水路事業と堀川への導水の「社会実験」をリンクさせた条項など設けているでしょうか?(「ありえない」。これもあったら「密約」騒ぎになる)。
また、私の感覚からすると、人口河川・堀川の水源(名古屋市下水道)と周辺からの汚水の流入を放置して、余所から水をもってきて汚水を伊勢湾に流し出そう(伊勢湾に汚濁を押しつけることになるだけ。「浄化」にならない)、という発想が、およそ「生物多様性COP10」の理念に反していると感じます。
(「『導水路事業から撤退すると、堀川浄化の水が来なくなる』という論を声高に言わせているのは、実は名古屋市上下水道局幹部なのではないか」という噂しきり)
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10月3日、中秋の名月。
