<続>09年10月9日-ダム事業原則凍結-前原大臣コメント |
~ それにしてもまた神田知事発言 ~
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中日新聞2009年10月10日【社説】
ダム・導水路 凍結で十分な再評価を
前原誠司国土交通相が木曽川水系連絡導水路や設楽ダムを含む四十八事業を、事実上凍結する方針を公表した。地元の反応はさまざまだが、個々の事業の冷静な再評価で今後の方針を決めてほしい。
国と水資源機構が行う五十六ダム事業のうち、五事業は工事を見送り、四十三事業では本年度、新たな段階に入らないとし、計四十八事業を事実上、凍結した。思い切った決定といえる。
上矢作(岐阜県)、大戸川(滋賀県)などのダムはすでに中止または凍結の方針が出されている。今回の議論の的は木曽川水系連絡導水路が工事を見送る五事業に、設楽ダム(愛知県)が新たな段階に入らない四十三事業に含まれたことである。
導水路は、徳山ダム(岐阜県揖斐川町)の水をダム下流の揖斐川から木曽川まで地下トンネルで送る。水資源機構が本年度、本体着工を予定していた。目的に名古屋市、愛知県への都市用水供給、木曽川水系の異常渇水時、河川の正常な機能維持をかつての国交省は強調した。
しかし水需要予測の過大などを根拠に、事業費の一部を負担する名古屋市の河村たかし市長が、事業から撤退を表明したのは周知の通りだ。愛知、岐阜、三重三県は事業に執着するが、木曽川水系の水あまりを理由に、学者らの導水路は不要との主張も根強い。
設楽ダムは今年初め、国、県、町が建設に同意したばかり。すでに始まった用地買収交渉や工事用道路の建設は続けられるが、来年度以降は未定のまま。十三日には町長選が告示され、ダム推進と反対双方から立候補が予定されているが、過去に国が示したダムの治水と利水に関するデータへの疑問の声も消えていない。
国交省は個別の事業を精査し、二〇一〇年度予算案をまとめるまでに今後の対応を決める。精査によってなによりも、事業を公正に再評価するのが重要だ。
ダムの必要につき、これまで国交省が出したデータに対する不信はかなり強い。まず国民の前にすべての情報を公開するのが第一だ。精査も国民にわかるように、透明な場で行う必要がある。現在、地方整備局などに設けられている事業評価監視委員会のように、事業者の意向を追認する疑いの強い組織には任せられない。
その上で、ダム湖に水没を予定される住民が生活の基盤を破壊され後戻りできなくなる前に、国は将来の方針を決断すべきだ。
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同日付けの同じ中日新聞の三重県版では以下のような記事が載っている。
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導水路や川上ダムは「必要」 県が従来の考え明示
【写真右】本体工事を前に、準備工事が進められているダム予定地=伊賀市川上で
(前略)野呂昭彦知事は「本県にとって川上ダムや導水路は必要な施設。見直しに当たってはこれまでの経緯や関係者の意見を十二分に踏まえ、慎重に判断してほしい」とするコメントを発表した。
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これはいかにも定型的なコメントで三重県としてどこまで固執しているのか、今ひとつ分からない。導水路に関しては三重県議会が「凍結-中止」方向に傾いている。野呂知事としては、議会の意向を突破してまで強行したいだろうか、疑問である(徳山ダム導水路事業は、三重県とってはひたすら直轄負担金を払わされるだけの事業でしかない)。
さらに、同日付けの共通社会面に以下の記事が載っている。
古田知事は「国交相は(中略)地元の意見も聞きたいと話しているが、まだ実現していない」と言う・・・つまりは「これまで事業に参加してきた(させられてきた)県に挨拶の手順を踏んでいない」ことを問題にしていて、中味にはあまり言及しようとしていない。今後は「東濃・可茂用水がラクになる(29.7億円負担するに値する)事業効果」論もは次第に影をひそめていくだろう(※)。岐阜県の酷い財政事情がこんなバカバカしい論理による事業推進を許さないのだ。(国交省との交渉材料-道路等とのバーター材料-として「必要だ論」をしばらく維持するかもしれないが、本気で強行する気はないだろう)
※ 岐阜県では、異常事態対応として「東濃西部送水幹線事業」をすすめている。
「水ライフラインネットワークを構築することで、より一層の水道の安定供給をはかります。」「緊急時だけでなく、通常時は人口集中地域への送水幹線として利用します。」
相変わらず訳が分からないのは、神田真秋・愛知県知事である。トヨタにオンブダッコの愛知県。一時期の「元気な愛知」は見る影もなく、財政状況が厳しいのは岐阜県や三重県とも似たり寄ったりになってしまっている(ムダなものを作るどころではない、火の車)。だのに、つい先日も「3県知事揃って導水路を止めないように国交相と直談判に行きたい」などと言っていた。他の2県の「空気を読む」こともできていない。
この記事をみての某弁護士の感想:
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今日10月10日の各紙は愛知県知事の神田くんの発言を報じています。大体みな同じ内容です。例えば、中日新聞では「導水路が中止となれば、徳山ダムの水利用は不可能に。(神田愛知県知事は)今後支払うダム建設費の負担金について「水が一滴も使えないのに、税金を支出することに県民は納得しない。国の意思で活用できないなら、払いません」と厳しくけん制した」と報じています。
以前の愛知県議会の答弁と同じ内容です。そのときは、誤解を与えるための意図的な発言と思いましたが、どうも、神田くんはそう思っているようで、これは徳山ダムの水は需要がなく使わないが、出来ちゃったから導水施設ををつくるということをハッキリさせた発言です。
①「水が一滴も使えない」「国の意思で活用できない」
→ 愛知県水道単独では導水路は建設できない、するつもりもない
徳山ダムの水を導水するのに、本導水路以外に、目的各別の導水路があるわけですから、徳山ダムの水は利用不可能になるわけではない(上記記事は間違っています)。共同事業としての本導水路が中止されても(国交大臣が権限として出来るのは流水正常機能維持目的の中止だけで、新規利水目的は中止権限はない)、愛知県は水道用水のための導水路は建設できるのですから、徳山ダムで得た水が一滴も使えないということにはならない。このように言うことの前提は、本導水路負担額の186億円では建設事業に参加が出来るが(後記③も参照)、愛知県水道用水単独建設費の571億円(名古屋市撤退後の880億円についての愛知県水道だけの上流施設の身替わり建設費)では導水路の建設ができないということですね。また、するつもりもないということですね。
②「(ダム建設費の負担金は)払いません」
→ 徳山ダムの水は需要はなく、本導水路は徳山ダムが出来ちゃったから導水路
徳山ダムの建設費負担金を支払わないということは、徳山ダムの水はいらないという意思表示。
愛知県水需給想定調査では、徳山ダムの水は、愛知県水道(愛知用水地域)の今から6年後の2015年の需要に対して2/20規模渇水年の安定供給水源として必要な水源になっていた。したがって、必要なら徳山ダムの水が使えるように導水路を2015年までに建設しなければならない。しかし、徳山ダムの建設費負担金を支払わず徳山ダムの水がいらないということは、その供給の必要がない、つまり、それを必要とする需要がないということ。
それでも、新規利水負担の186億円を負担して本導水路に参加するのは、徳山ダムの水は需要がなくて使用しないが、徳山ダムが出来ちゃったから、その水が使えるように施設整備だけはするということにすぎない。
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徳山ダムを「作られちゃった」私の感想は以下。
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> 「水が一滴も使えないのに、税金を支出することに県民は
> 納得しない。国の意思で活用できないなら、払いません」
2003年~2004年の徳山ダム事業費増額問題のとき。
2003年7月24日施行の「独立行政法人水資源機構法施行令」で、「利水者の単独意思で撤退できる」ことは法令上明らかだった。愛知県は(ハンコを押したのは企業庁長だけど、それは知事の意向の反映)、徳山ダムの水なぞ一滴も必要がない、と分かり切っているのに(長良川河口堰住民訴訟愛知で住民側は、そのことを明らかにしていた)「確保水量を減らすことで金額的負担増を抑える」という姑息なやり方で、徳山ダム事業に乗り続けたのです。
その政治的責任をほおかむりするための意図的な発言?それとも本当に無知?
かつて、梶原拓・岐阜県知事が「徳山ダムさえできれば、揖斐川住民44万人は枕を高くして寝られる」と繰り返しほざいていたのを彷彿とさせます。(梶原拓は元建設官僚-河川とは無縁だけど-。でもって「背景に建設省がある。建設省がそういうのだろうから大嘘ではなかろう」というふうに思われた面がある) 神田さんも「弁護士だから分かっているだろう」と思われている?
愛知県知事の大きな判断ミス(徳山ダム建設事業から撤退しなかったこと)を正当化するための、さらなる「税金を支出することに全国の納税者は納得しない」。
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神田知事の法も道理もないこの手の発言を、何のコメントもなく垂れ流すマスコミも問題だと思います。
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10月10日、平林莊跡