前提事実が変化したけど「公表しない」?!・・・・② |
~ 承前 ~
なぜ「岐阜県/落合(東濃地方・中津川市にある取水口)」の水利権量に拘るのか。
岐阜県は、導水路事業に「乗る」メリットとして、一貫して、「可茂・東濃地域の水道がラクになる(渇水被害を防止できる)」と説明し続けてきたからです。
岐阜県河川課のHPにも 「木曽川水系連絡導水路事業計画について」 の中で、
<岐阜県の事業効果>
・導水路により馬飼頭首工上流に水を補給することで、木曽川上流ダムの貯水量が温存され、可茂・東濃地域では渇水被害が大幅に緩和される。
・渇水時には長良川中流部へ維持流量の供給が出来る。
と記載しています。
長くなりますが、10月27日の長良川市民学習会からの要請事項と、それに基づく岐阜県交渉のメモの中から「可茂・東濃地域での渇水被害が大幅に緩和される」に関係する部分(要請項目1)に関するやりとりを下にを紹介します。 項目も多いので、要請書と回答を交互に並べます(必ずしも順序通りに話が進んだわけではありませんが)
岐阜県は堂薗河川課長以下「導水路」担当のフルメンバーが対応しました。
09.10.27要請書PDFファイル版
要請書文中から
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岐阜県が確保した徳山ダムの新規利水は「大垣地域」を供給先としており、可茂・東濃地域では使えません。ゆえに木曽川水系連絡導水路事業においても、岐阜県は「治水分」の直轄負担金の支払いのみが課せられています。木曽川水系連絡導水路事業実施計画上は「可茂・東濃地域での渇水対策」は全く存在しません。中部地方整備局河川部も「異常渇水時に補給する緊急水は、計画上は、水道水には一滴も使えない」と明言しています。
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◇ 要請書
① 岐阜県が、議会や県民に対して「可茂・東濃地域での渇水被害が大幅に緩和される」という効果があると述べる根拠を説明して下さい。
◇ 回答
① 国交省が提示した「効果」である。平六渇水のようなときには(水道水補給に実際に大きな影響が生じる可能性のある)35%取水制限が大幅に緩和される、と考えられる。
◇ 要請書
② 上記「利水効果」が予定されているとすれば、岐阜県は利水分負担をしなければなりません。しかし事業実施計画のアロケーションでは、岐阜県には利水分負担は全くありません。ここはどういう法的関係(負担と受益)にあるのか説明して下さい。
◇ 回答
② 国が提示したアロケーションを岐阜県の立場で精査して「適切な負担」と考えた。確かに国は「(水道水の)渇水対策分」とは言っていなかった。岐阜県のほうからも、これが利水負担か治水負担か、等は言っていない。
木曽川上流ダム群の温存、不特定容量補給ということも含めて、何らかの意味で渇水に強くなることは事実で、それが利水負担ではないか、という議論があるなら、当県以外の利水関係者も同様。岐阜県のみが「渇水対策は利水負担」というふうにはならない。
◇ 要請書
③ この「効果」が、河川法53条が規定する「異常な渇水」の場合のものというのであれば、平成6年木曽川渇水(以下「平六渇水」という)時のように農業用水との調整が可能です。なぜ30億円も負担する導水路事業によらねばならないのか説明して下さい。
◇ 回答
③ このことはこれまでも知事ともいろいろ話し合ってきている。
農業団体のほうから言い出してくれれば受け取る。しかし現に権利を持っている者に対して、それを差し出せというのは、河川管理者といえども強制できない。
農業用水は、これまでも互譲の精神で、渇水のときには水を譲ってきた。平六渇水のときには自流60%、ダム65%の取水制限をしている。
平六渇水のときに譲ったのだから今後も譲るべき、ということはできない。
09.07.10 副知事・副市長会議でも議論になった。議論の余地はあるが、河川管理者でもない岐阜県知事としていえることは限定されている。
◇ 要請書
④ 取水制限=渇水被害ではありません。可茂・東濃地域で、多額の費用を投じて緩和しなければならない「渇水被害」を示す資料を提示して下さい。
◇ 回答
④ 取水制限=渇水被害ではない、というのはその通りである。ただ15%取水制限でも水圧が下がることでビルの高いところで若干水が出にくくなる、という影響はなくもない。
35%以上の取水制限だと、地域によっては断水のおそれも生じる。
平六渇水の後の調査では、「農林水産業被害、街路樹等の被害として28億円」という数字があるが、個々の農業者が収穫減をすべて報告しているわけではないので、被害報告としてはすべてを網羅しているとはいえない。再度調べ直すことも考えている。
◇ 要請書
⑤ 岐阜県は、岩屋ダム・阿木川ダム・味噌川ダムで確保した水を余らせています(未利用水。許可水利権となっていないもの)。可茂・東濃地域が恒常的に水不足状態であるなら、この水源の「有効利用」が検討されるべきです。どのような検討をされているのか説明して下さい。
◇ 回答
⑤ 未利用水に対する具体的な利用計画はない。
しかし渇水のときには未利用水によって(取水制限が)緩和されていることも事実。もしも未利用水があって、(木曽川水系で)全く渇水問題がおきていないというのであれば、(過剰開発として)責任問題もあるかもしれないが、実際にはそうではない。未利用水があるのに取水制限が起きる-ダム実力が低い-。
一方で未利用水開発者があり、他方、完全利用者があるとすれば、(完全利用者は)いわばフリーライダーとなる。導水路事業には、こうした不公平をなくしていくという側面もある(将来の水系総合運用)。
◇ 要請書
⑥ 岐阜県では、緊急時態対応として「東濃西部送水幹線事業」をすすめています。平六渇水のような異常渇水もまた「緊急時」といえますが、異常渇水対策とこの東濃西部送水幹線事業との関係を説明して下さい。
◇ 回答
⑥ 渇水時に使うこともありうるが、渇水時には(繋げる)両方の河川が渇水状態であると考えられるので、渇水問題の解決にはならない。
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この交渉に同席した富樫幸一・岐阜大教授は以下のようにコメントしました。
富樫コメント
(1)「可茂・東濃地域での渇水被害が大幅に緩和される」というような知事発言は撤回して欲しい。未利用水の問題もあるし、(水道関係)施設稼働率が最大でも2/3にとどまっている、という現実がある。
(2)利水ダムは枯渇するもの。いつも満杯の利水ダムなどというのは「無駄」そのもの。結局は、常に問題になっているのは牧尾ダムの枯渇で、阿木・味噌との3ダム統合運用を実施すれば「問題」(とされること)の多くは解消される。
(3)治水に関する渇水対策(生物環境の被害軽減)と利水に関する渇水対策(断水防止)とが混同されて説明されている。費用負担と併せてきちんと整理すべき。
(4)「河川管理者といえども・・・」という発言があったが、異常渇水時(社会的混乱が生じる可能性に至るような場合)の最後は、国交大臣権限である。
~ この稿続く ~
◇ ◇
熟したよ、ウチの蜜柑。
