徳山ダムで揖斐川に異変? |
~ 流水の正常な機能の維持って何? ~
12月5日、岐阜新聞に以下のような記事が載った。
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2009年12月05日09:02 岐阜新聞
揖斐川に異変?モクズガニ漁獲量が大幅減
揖斐郡揖斐川町の揖斐川で、モクズガニを獲る今年のかにかご漁が終わりを迎えた。今年は漁獲量が大幅に減っており、川漁をしている同町北方の林幹夫さん(75)は「大水がなく、川底のカニの生息地が土砂で埋められたままになっている。来年以降、どうなってしまうのか心配だ」と、川の異変に危機感を募らせている。
モクズガニは全国各地の河川に生息し、身は少ないがカニみそや卵巣が珍味とされている。かにかご漁は、モクズガニが産卵のために海に下る秋から冬にかけての漁で、網で覆った直方体の鉄製のかご内にえさを吊るし、モクズカニが網の中に入ると出られなくなる仕組み。揖斐川では上流の揖斐川町や下流の海津市などで行われており、下流での漁は12月ごろ始まる。
揖斐川町内でモクズガニ漁をしているのは林さんら数人。林さんは例年300匹前後のモクズガニを獲っているが、今年の漁獲量は50匹足らずだった。
不漁の理由について林さんは「昨年9月の西濃豪雨災害による土砂崩れで、カニがすむ川底の石と石の間が土砂で埋まったが、上流の徳山ダムが河川流量を安定させているので、これまでのように大水が土砂を洗い流すことがなくなったためでは」と推測している。
河川流量が一定に保たれることが生物に与える影響について、魚類生態学が専門の岐阜大学地域科学部の向井貴彦准教授(38)は「天候や濁りの影響が生じにくくなり、繁殖行動に悪影響を与えるので流量の緩急が必要だ。流量が自然に近い状態になるよう、徳山ダムの弾力的な運用を期待したい」と指摘している。
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ダムは1度は満水位まで貯め、洪水吐きからの放流を1回は行わないと「完工」にならない。試験湛水-放流である。(ダム堤体が出来てから、何年も満水位まで水を貯められない欠陥ダムが少なからず存在する。そんなひどい「欠陥ダム」を作っても、誰も責任をとるでもなく、余分に係る費用はひたすら血税から補填される。)
徳山ダムは、2008年4月24日から5月5日に試験湛水の最後として試験放流を行った。まさにアユが海から河口へと移動し、川を遡上し始める時期。このときに冷たい雪解け水が大量に流されるのだから、アユにしてみれば、「こんな冷たい川にはのぼれない」。報道によればこの年のアユその他の漁獲量に大きな影響が出たのは間違いないらしい。揖斐川の漁協は、この時期の試験放流には危惧を抱いて、いろいろ言ったらしいが、いわゆる「反対派」ではないので、その声は表にはあまり出なかった。そしてその危惧は的中した・・・のみならず、その異変は試験放流のときだけにとどまらなかったようである。
こうした「問題」に対して、国(中部地整)&水機構(中部支社)は、徳山ダムの弾力的な運用検討会というものを設置した。
H21.7.17 第3回徳山ダムの弾力的な運用検討会
http://homepage3.nifty.com/waterchubu/sub1/sub22.html
☆H21.3.24 第2回徳山ダムの弾力的な運用を考える意見交換会
http://www.water.go.jp/chubu/chubu//dai2danryokukangaeru.html
H21.2.24 第2回徳山ダムの弾力的な運用検討会
・検討会資料
http://homepage3.nifty.com/waterchubu/sub1/sub21.html
・議事要旨
http://www.water.go.jp/chubu/chubu//20090224gijiyousi.pdf
H20.8.27 第1回徳山ダムの弾力的な運用検討会
・検討会資料
http://homepage3.nifty.com/waterchubu/sub1/sub20.html
(議事要旨)
http://homepage3.nifty.com/jwater_chubu_damdat/pdf/080827danryokuteki00gijiyoushi.pdf
(H20.3.25に「第1回徳山ダムの弾力的な運用を考える意見交換会」があったらしいが、「第1回徳山ダムの弾力的な運用検討会」資料の中にそのことが3頁ほどあるだけで、独立したサイトとしてのURLは見つけられていない)
皮肉も含めて、徳山ダムモニタリング部会の資料より「面白い」。
資料で比べると「釣った魚に餌はやらない」やる気の無さ丸出しの徳山ダムモニタリング部会との、落差は歴然。「ダムの弾力的運用に向けて頑張りまっせ」という意欲が伝わってくる・・・・。
し・か・し である。
ダムという巨大な河川横断構造物を作り、流水を止水にしてしまう、という河川環境の大改変を行ったことこそ、「流水の正常な機能の維持」を損なうことではないのだろうか?「ダムは、川のダイナミズムを損なう」「ダム」で一定量の水を流すようなことは河川環境をダメにする」という警告は何十年も前からなされていた。
にも拘わらず「河川流量の少ないときにダムから水渇を補給することは善だ(必要だ)」とダムを造り続けてきた。
ダムの放流の仕方を工夫してダムのない「自然な」流れ方に近づける???? 「流水の正常な機能の維持」ねぇ・・・・。
そろそろ新たなダム建設が出来なくなってきて、”河川技術者お役人”は、今度は「ダムの有効利用」「ダムの弾力的運用」「ダムによる(人為的な)流水の正常な機能の維持」に生きがいと活路を見いだしているかのようである。
面白ついで:
「徳山ダムの弾力的な運用検討会」の議事要旨の中に以下のような文言がある。
「生物環境調査の既存データが数年に1回の水辺の国調データのみであり、予測どころか実態も把握出来ない状況である(第1回)」
「生物と水質は関連づけて調査することが必要である(第3回)」
これは揖斐川のことだけではない。
「生物環境調査は予測どころか実態も把握出来ない状況」なのに、河川環境改善を目的として長良川・木曽川に徳山ダムの水を流す導水路事業に巨費を投じるという。
「生物と水質は関連づけて調査すること」ができていない。だから8月12日の環境レポート(案)について、広く一般の方を対象とする説明会」でも水質についての質問を突っ込まれとき、中部地整の笹森・河川環境課長は「導水路事業の事業目的は水質改善ではありません」(まさにその通り!※)と開き直ったのだろう。
※ 環境レポート(案)で「水質は特に悪化しない」ことが羅列されているが、これが事業目的である「河川環境の改善」とどう関連するのか-しないのか-を質問しているのに。
blog 8.12環境レポート(案)説明会のドタバタ
http://tokuyamad.exblog.jp/11740972/
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牛屋川 晩秋


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