治水ダムは「地元」のお金にならない |
徳山ダムはダム建設計画が持ち上がってからダムの運用までに半世紀が流れました。
この間に社会情勢は変化しました … 「見直し」の機会はありました。
1995年に設置された「徳山ダム建設事業審議委員会」もそうでした。事業費大幅値上げ発表(2003年8月)から、事業実施計画変更(2004年)7月)にいたる時期もそうでした。
が、「問題」になったことへの対応は「要らなくなった水を『治水分』に回す、ダム規模は変えずに建設する」というものでした。やたらに図体のデカイ6億6000万トンの巨大ダム・徳山ダムは、維持管理費も多くかかっています。
★ 平成20年度徳山ダム管理業務費負担額(千円)
総 額 1,102,736
治水分 609,101
水 道 186,719
工 水 110,581
(注)上記以外に発電分。 なお、計数には雑収入や消費税の算入が必要となります。
★平成21年度徳山ダム管理業務費負担額(千円)
総 額 1,355,289
治水分 573,293
水 道 175,545
工 水 104,150
固定資産税 315,000
(注)上記以外に発電分。 なお、計数には雑収入や消費税の算入が必要となります。
水資源機構は、H21年度から徳山ダムの固定資産税を揖斐川町に支払っています。国の直轄ダムだと国有資産等所在市町村交付金です。ダムの「治水分」は、この固定資産税(or国有資産等所在市町村交付金)算定の対象外です。つまり 「治水ダム-ダムの治水分-は、所在市町村への(固定資産税に相当する)交付金の対象にならない」。
水需要の低迷で「治水(環境改善容量などという名目のものも”治水”分)」にシフトした(=費用負担(アロケ)で治水分を多くした、あるいは治水専用とした)ダムが増えています。
ダム起業地の市町村(以下「地元」という)では「ダム完成後の固定資産税(交付金)」をアテにして「推進」を唱える首長も多いですが、治水にシフトしたダムではそういう「メリット」はなくなります(縮小します)。
国交省中部地整河川部に質問をしたことの返信の一部です(08.12.19 受信)
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Q1 治水目的のみのダムは市町村交付金の対象となるのか。
A1 治水のみの目的として造られたダムについては、国有資産等所在市町村交付金(以下「市町村交付金」という。)の対象とはなりません。市町村交付金の対象となるダムは、発電の用に供するダムの固定資産(土地等)、並びに水道又は工業用水道の用に供するダムの固定資産が対象となります。(国有資産等所在市町村交付金法第2条第4項及び5項)
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「資産」の評価基準は、”事業費×アロケ”です。
親切にも【「交納付金法逐条解説」(固定資産税務研究会編)、(財)地方財務協会発行】の必要部分のコピーも送ってくれました。
計画あるいは建設中のダムでは、需要発生の見込みのない都市用水分を縮小しながら全体規模は変えずに治水分を増す「計画見直し」がなされたものが少なくありません。
こうした「計画見直し」は、「地元」にとっては、不利益な見直しになるはずですが、この面からの「地元」のブーイング、というのを寡聞にして聞かない。
きちんと説明されなくて知らないのか、他のこととバーターの取引材料になっているのか、それともひたすら「国には逆らえない」という思考なのか・・・
治水ダムは、下流にとっても(費用対効果が悪すぎて)恩恵をもたらしはしません。ダムの「地元」は、「下流のため」などと物わかりの良いことを言わず「故郷を水に沈めるな」ともっと大声を出して良いはず…「ダムで栄えた村はない」
「コンクリートの土木建設事業だけが産業」という地域づくりに未来がないことは既に証明済み。
上下流の住民が手を携えて川の上流部の地域づくりを行っていく… 未来世代にはそうした枠組みを手渡して行きたいものです。