「新しい河川環境の創出」とは?-長良川河口堰パンフから- |
-1995年の長良川河口堰パンフから-

家の片づけをしていたら、長良川河口堰のご立派なパンフが出てきた。カラー刷りの分厚い紙でできた37頁のパンフ。水資源開発公団の事業費が青天井だった(※)時代を感じさせる。
※ ダム建設事業費を当初の10倍にもできた時代。
発行者は「建設省中部地方建設局木曽川下流工事事務所(現・国土交通省中部地方整備局木曽川下流河川事務所)」「水資源開発公団長良川河口堰管理所(現・(独)水資源機構長良川河口堰管理所)」。
発行年月日はないが、「長良川河口堰調査の概要」と記された部分の最後が「平成7年3月31日 建設大臣に調査委員会より調査結果を報告」となっていることと、長良川河口堰の「効能」が未来形で書かれていることからすれば、1995年の本格運用開始後、そう遅くないうちに発行されたものであろう。

私は当時の長良川河口堰について、新聞報道以上のものは知らない。だからこのパンフP29に述べられていることの(当時の) 「真面目さ」は分からない。だが、長良川河口堰の現状と当時の「河口堰反対運動/裁判」で議論されたことからすると、1995年にこういうことを宣っていた、というのは、行くら何でも事業者側に誠意が足りなかったのではないか、と思ってしまう。
本格運用から15年経った長良川河口堰(ここ数年の年次報告書も含む)とのあまりの落差について、上記の発行者にEメールで問い合わせをしている-表紙写真とp29のPDFファイルを示して-。「パンフ自体を探しているけど、見つからない」そうだ。何とまあ、管理の良いこと!
このp29には「新しい河川環境の創出」とある。
長良川河口堰パンフP29 PDFファイル版
人工河川 :【右岸溢流堤には約250mの人工河川があ、親水性のある広場になっています。このうち、長さ100m、幅5mと2.5mの2つの水路は10月~11月にかけて、水産振興策の一環として利用されます。】
長良川河口堰に注目してきた人が「右岸の背割堤にまで渡っていける?柵があっていけないように思うけど」というので長良川河口堰管理所に聞いてみると、「朝6時~夕方6時までは、徒歩か自転車なら行けます。国道一号線からも同様です」とのこと。「平日はあまり人がいませんが、休日は親子連れなどがそこそこに入っていかれます」とのこと。桑名市の人も含めて「行ってみた」という人に全く出会わない-何とも親水性に優れていること!
「水産振興策」とは、多分「アユの人工ふ化水路」なのだろうが、5月6日の連休明けには届いているはずの質問なのに、現時点(13日夕方。その間に電話で質問の確認もしている)、上記の両者ともに誰も確として回答できない。
渚プラン :【地盤沈下などにより失われた河口域の渚(なぎさ)を、揖斐・長良川のしゅんせつ土砂を利用して、新たに作り出しました。渚では、ヨシが繁茂するとともに、野鳥や魚が集まり、多様で豊かな生態系が保たれます。】
今、実際に行ってみれば、「しゅんせつ土砂を利用して、新たに作り出し」た人工中州は、セイタカアワダチソウとヤナギの群落になっていて、ヨシ原は失われるいっぽう。
この記述は「悪い冗談か」と思う。
大問題なのは、こういうことを述べて「ヨシ原復活」と大看板を掲げて何年かやっていたことを、引き継いでいないこと。
何の反省も教訓もなく、またぞろヨシ原を人工的に復活させるのだそうな。(同じ失敗を繰り返すので、エンドレスに「仕事」が出来る、というわけだ)
中部地整木曽川下流河川事務所HP
木曽三川下流域自然再生検討会
http://www.cbr.mlit.go.jp/kisokaryu/shizensaisei/index.html
人工干潟 :【・・・これにより、アサリ、ハマグリ等の生息地が広がるとともに、鳥類の餌場や休息地にも利用できるようになります】
事実は「そうはなっていない」。
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人間は誤りを犯す。だから誤りを誤りと認め、真摯に向き合って欲しい。特に公金を投じる「公共事業」においては。
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