長良川市民学習会の調査、読売新聞連載「長良川」に |
中部読売新聞に、特集「長良川」が連載されています。(よく取材されて書かれています。以下のURLで過去分が読めます))
http://chubu.yomiuri.co.jp/tokushu/nagaragawa/
6月2日に長良川市民学習会による調査が取り上げられました。
「長良川」 第二部 中流域
(9)ダムと川 水に違いhttp://chubu.yomiuri.co.jp/tokushu/nagaragawa/nagaragawa100602_1.htm
橋から湖面にロープを下ろし、先に取り付けたバケツに水をくんで引き上げる。すかさず水に細長い温度計を入れる。
「12度だな」。5月10日午前8時。市民団体「長良川市民学習会」(岐阜市)のメンバー、粕谷豊樹さん(67)が目盛りを読む。岐阜県揖斐川町、徳山ダム下流
にある西平ダム。同時刻、直線で約30キロ離れた岐阜市古津の千鳥橋では、同会の
武藤仁事務局長(60)が長良川から採水し15度を読み取った。
西平ダムの方が3度低い。二つのサンプルはその足で岐阜大学に運ばれた。水質汚染の指標となる化学的酸素要求量(COD)を比較するためだ。
西平ダム、千鳥橋での採水は昨年1月から冬季を除き、毎月1度同時刻に続けている。水資源機構が計画する木曽川導水路が、川の生態に影響を与えるのでは、と考えて始めた。
西平ダムで取水し、トンネルなどをくぐらせ、木曽川まで全長約44キロと計画される導水路は、途中の長良川では千鳥橋下流で吐き出されると見られる。取水口と吐き出し口の水を比較すれば、揖斐川の水を混ぜることで川の生態に与える影響を突き止められると考えるからだ。
中でも同会は、水温の差に注目している。5月の調査では西平ダムの方が3度低かったが、一昨年8月5日には西平ダム17・2度、長良川24度と6・8度違った。
月ごとにデータの波はあるものの、同会は冷たいダムの水を長良川に流すとアユなどの生息環境が乱れ、鵜飼(うか)いに代表される川の文化が壊されるのではないかという。同会は今後も2地点のデータを集積していく。
1963年、河口堰(かこうぜき)がアユなどに与える影響を研究する調査団が結成された。アユの生態班に所属した信州大学の小山長雄さんの「アユの生態」(中公新書)によると、稚アユの遡上(そじょう)数では木曽三川のうち長良川が圧倒的に多い。小山教授は、長良川960万~2130万匹、木曽川140万~320万匹、揖斐川130万~300万匹という推定値を紹介している。
岐阜大学教育学部の古屋康則准教授(生物学)は、「揖斐川などと違い、本流にダムのない長良川は、山の養分がダムに止められずに川を下るので、エサとなる藻類がよく育つことがアユには分かるから、多いのではないか」と話す。
河口堰の稼働開始は1995年。水資源機構のホームページによると、河口堰には3種類5か所の魚道があり、そのうち左岸の魚道を上るアユの数を調べている。十数万匹という年もあったが、近年は増えており、昨年は約217万匹、一昨年は約269万匹だった。全体数はわからないものの、先の数値を見る限り、最大で8倍の差がある。
(編集委員・近藤泰年)
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