市民による「豊かな海づくり大会」-8 |
~登り落ち漁~
<釣り>の場所のすぐ傍に登り落ち漁の仕掛けがあった。
前日のシンポでも長良川の伝統的漁法である「登り落ち漁」(地元では「どんどろ」と呼ぶらしい)のことが語られ、写真も映された。佃煮にするような小魚(例えばカワヨシノボリ)をこうして獲る。

正直いって、もっと上流でないとこの仕掛けは見られないものだと思いこんでいた。
すぐ翌日に実物を見ることが出来て感激。
川の流れを遡る魚の習性を利用した仕掛けで、小さな魚を獲ることが出来る。上の写真でいえば、仕掛けで作られた流れによって魚は中央右奥の方に誘導され、最後は下の写真の箱に落ちる。

登っていく魚を落とす「登り落ち漁」。どの瀬をどう塞いで誘導するか、最後に箱に落とす仕掛けをどうするか・・・川を知り尽くし、魚の習性を知り尽くして初めて可能な匠の技である。
読売新聞連載 「長良川」にもこの「登り落ち漁」が載っている。
ホーム>中部発>企画・特集>長良川
第一部 源流域 (9)魚と共にある恵み
http://chubu.yomiuri.co.jp/tokushu/nagaragawa/nagaragawa091014_1.htm
6月5日のシンポには、残念ながら欠席された後藤宮子さん。1967年から30年にわたり長良川の魚類を調査してきた。この業績は、長良川の魚類を語るときには、いや、全国的にも淡水魚のことを語るときには、必ず言及される(※)。
※ この膨大資料は、数年前、滋賀県立琵琶湖博物館に収められた。このことは良いことだが、逆にえば、岐阜県には後藤さんの研究成果・調査資料を受け取る公的な機関はなかった、ということである。後藤さんの業績は「長良川河口堰の影響はほとんどない」と結論づけたい人々には「都合が悪い」からであろう。こうした「政治的バイアス」で科学的成果を抹殺しよう、という視野の狭さは、何も良いことは生み出さない。最後は「長良川河口堰建設正当化勢力」自身の首を絞めることになるだろう。
後藤さんは、お連れあいが、登り落ち漁の仕掛け作りの達人だった。宮子さんは毎日、この「箱」に入った魚を分類し、数を数え、サンプルを作り、記録した。これは休むことなく30年間続けた。大水が出れば仕掛けは壊れる。お連れあいは登り落ち漁の仕掛けの修復維持を続けられた。このお連れあいが亡くなられたとき、後藤宮子さんの継続調査も終わった。
岐阜新聞連載「ぎふ海流」は「第3章 断ち切られた川」を後藤さんの記事で結んでいる。
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岐阜新聞連載 ぎふ海流 第3章 断ち切られた川 2010年 3月 1日(月)
川の再生、各地でうねり /求められる「劇的転換」
http://www.gifu-np.co.jp/tokusyu/2010/gifu_kairyu/3/gifu_kairyu3_10.shtml
県内の河川は、戦前までは舟運で山と海とを結び、戦時の食糧難には魚が流域の人々の命をつなぎ、戦後のダム開発では利水と発電が産業振興の礎となった。恩恵を一方的に受け取った結果、川の流れは断ち切られた。

関市の長良川と津保川で1967(昭和42)年から30年にわたり魚類の生態を調査してきた魚類研究者の後藤宮子さん(84)=同市下白金=は、魚を通して川の変化をつぶさに見てきた。
後藤さんは「経済成長期は工場や家庭からの雑排水が川を汚し、護岸や堰(せき)の建設が川の姿を変えた。公害が収まったと思ったら、長良川河口堰が運用を開始し、魚種も漁獲量も減った」と振り返る。郡上市美並町で郡上竿(さお)を作る福手福雄さん(75)は「川から鮎の香りが消えた」と川を見るたび嘆く。
ダムや河川改修が川や生物の多様性を壊したという反省から、政権交代を経て川の再生が各地で叫ばれている。群馬県の八ツ場ダムに象徴される国の公共事業見直しのうねりは県内各地にも及ぶ。
国は昨年12月、揖斐郡揖斐川町の徳山ダムの水を長良川と木曽川に流す木曽川水系連絡導水路事業の凍結継続を決め、新丸山ダム(加茂郡八百津町、可児郡御嵩町)を検証対象とした。さらに県が事業主体となる補助ダムでは、大島ダム(高山市)と内ケ谷ダム(郡上市)、水無瀬生活貯水池(加茂郡川辺町)の検証を県に求めている。
川の再生について、郡上市と岐阜市でサツキマスの産卵観察会を開く郡上市大和町の長良川水系・水を守る会事務局長亀崎敬介さん(41)は「ダム建設が一時的に見直され、川の環境や水質が改善しても、人の意識が変わらなければ意味がない」と語る。自然とのかかわりや暮らしの在り方が山・川・海の循環に違和感なく溶け込むような意識の劇的な転換(パラダイムシフト)が求められている。 (ぎふ海流取材班)
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