丹生ダム 4知事視察に思う-2 |
(承前)
滋賀県「知事」としては「現状把握の一環。(3知事に)予断を持たずに見てもらう」という発言も分からないではない・・・。
でも、すでに5年前に淀川水系流域委員会が「建設を中止すべき」と意見し、淀川水系河川整備計画にも「建設する」とはなっておらず(※)、淀川水系水資源開発基本計画(淀川フルプラン)にも言及されていないのが丹生ダムです。
※ 「現在事業中の丹生ダムについて、ダム型式の最適案を総合的に評価して確定するための調査・検討を行う。」(淀川水系河川整備計画 p79)
淀川水系河川整備計画
http://www.biwakokasen.go.jp/seibi/index.html
淀川フルプラン
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/d_plan/fullplan/fp4ydh.pdf
説明資料等も含め
国土交通省土地・水資源局水資源部
ホーム > 水資源に関する長期計画 > 水資源開発基本計画(フルプラン)
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/d_plan/plan02.html
水資源機構法第13条に基づく現行事業実施計画上の丹生ダムは、すでに「建設の是非に言及する」段階ではなく、とっくに事業を廃止する手続きに入るべきものです。 丹生ダムは、「どうやってきちんと中止するか」について踏み込んで話し合う対象です。
いつまでも「是非に言及せず」「現状を見て」いる間中にも、水資源機構丹生ダム建設所は予算を使います。今年度も3億6000万円の予算が計上されています。
丹生ダムでは利水者はすべて利水からの撤退を表明しています-議会やマスコミや国交省水資源部には。でもって淀川フルプランから「丹生ダム」は消えました。
淀川フルプランに位置づけられていない、ということは、現行事業実施計画は維持できないということ(水資源開発促進法の下に水資源機構がある。水資源機構は利水分なしのダムは建設できない)。
一刻も早く現行の事業実施計画は廃止する=水資源機構事業としての丹生ダム建設事業は中止(廃止)するのがスジってものです。法的スジが通らないまま、よくもここまで引っ張ってきた、と感心してしまいます(※)。
※ 何度でも遭遇する場面だが、日本では行政は法律に則って行われいないらしい-「行政裁量」をどこどこまでも延伸させてしまう。裁判所もその片棒を担ぐ、曰く「行政裁量の範囲内」と。立法府は行政府に嘗められ、司法府は行政府に追随する。どうやら日本国憲法の「三権分立」は行政府(それも内閣総理大臣はコロコロ変わっても困らないのだから、実態は「官僚」と考えるしかない)を「国権の最高機関」としているらしい・・・憲法学説を根本から変えねばならないか。
「治水専用ダムの是非」は、現行「丹生ダム建設事業に関する事業実施計画」の廃止後に、ゼロベースで議論すべき話です。それも、多くの議論を経て淀川水系河川整備計画には「丹生ダムを建設する」旨が記載されていない、という事実を踏まえて。
初めからやり直すとなれば、環境アセス法対象事業となります。
建設計画継続のために現行事業実施計画を「特例的に(事業主体も横滑りさせて)変更」して治水ダムに化けさせるなどという、「法の予定しないところ」(=違法行為)はやめて欲しいものです。
現行事業実施計画上の総事業費約1,100億円のうち昨年度(H21年度)までの進捗率は50.9%(そして、上述のように今年度分でついている予算は3億6000万円)。
「もう540億円も使ってしまったから、治水専用ダムに化けさせる」のがコスト重視?
淀川水系河川整備計画には「丹生ダムを建設する」旨が記載されていないから、できるとしてもあと20年か30年の後。それまで高時川の「治水対策」は何もしない、という引き延ばしをする? 冗談も休み休み言ってほしい・・・・
一刻も早く丹生ダム建設をきっぱりとやめ、必要な「治水対策」を早急に採るべきです。
なお、大阪府(35.43%)、兵庫県(9.20%)、京都府(2.07%)の「治水」分はすべて「異常渇水対策」分だそうです。
河川管理者である近畿地整がどういう説明をしたのか、「よく分からない」(担当者がゴニョゴニョとしか答えない)。ただ「水道用水補給を目的とするものではありません」(※)とは答えます。しかし、どうも上記三府県の担当者は「異常渇水対策=緊急時水道用水補給」だと思いこんでいるらしいです。
※ 「異常渇水」という局面では、いずれにしろ河川法53条の世界だから「協議」次第で河川維持流量を確保する目的のはずの異常渇水対策分を水道水に回す」ことも可能ではある・・・ここにゴマカシ。
河川法53条の「協議」で、総合的に水の使い道の優先順位を決めることができるなら、本当に役に立つかどうかが分からない(何せ「異常」時)「異常渇水対策」を施設対応で行う、というバカな話にはならないはず。
(しつこく言います。「治水」分については全国の一般納税者の税金が使われるのです。淀川水系の特定の利水者の「利水安全度向上」のために、全く関係ない地域の住民の税金が使われるのは法の予定するところ」ではありません。)
というわけで、本日(8月29日)の「四府県知事視察」が、理由も根拠もなくグズグズと水資源機構丹生ダム建設所を生き残らせている(最低でも毎年3.6億円使って!!)状況を終わらせる第一歩になることを心から望んでいます。
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現時点でキャッチしたウェブニュース
☆ NHKオンライン 滋賀 【08月29日 17時35分】
http://www.nhk.or.jp/lnews/otsu/2063563851.html
4府県知事が丹生ダム視察
国が事業の見直しを進めている県北部の丹生ダムについて、滋賀県と下流の3府県の知事が29日現地を視察し、国に対して早急に見直しの結果を出すよう求めることで合意しました。
丹生ダムは、大阪や京都への水の供給などを目的に国が長浜市余呉町に昭和47年に計画した多目的ダムで、現在は見直し対象のダムとして工事がストップしています。視察は滋賀県の嘉田知事が、ダムが本当に必要か議論を深めようと下流の京都・大阪・兵庫の3府県の知事に呼びかけて行われたもので、4人の知事がそろってダムの建設予定地を訪れました。
4人の知事は、担当者からすでに560億円が投資され、90%近くの用地を取得していることや、ダムの完成によって水没する40世帯の移転も終えていることなどについて説明を受けていました。視察のあと、滋賀県の嘉田知事は「国が一日も早く丹生ダムの検証結果を出し、ダムの方向性を決めるべきだという共通認識を持てた」と述べ、国に対して早急に見直しの結果を出すよう求めることで合意したことを明らかにしました。また、大阪府の橋下知事は、ダムの建設に40年近くかかっていることについて「ダムに関わらず行政は時間の観念がないことを痛感した。被害を被るのは住民なのであらためて時間を意識して行政を進めねばならないと感じた」と話していました。
☆ 毎日放送 関西 【08/29 18:19】
http://www.mbs.jp/news/kansaiflash_GE100829154900382535.shtml
■「丹生ダム」予定地を4知事が視察~滋賀・長浜市
国の見直し対象にもなっている滋賀県丹生ダムの建設予定地を近畿の4府県の知事が視察し、ダムの必要性について意見を交わしました。
滋賀県長浜市の丹生ダム建設予定地には計画の凍結や見直しを訴える地元、滋賀県の嘉田知事を始め大阪、京都、兵庫の4府県の知事が視察に訪れました。
独立行政法人「水資源機構」が建設を進める丹生ダムは、1972年に計画され、周辺住民の立ち退きや整備などを完了していましたが、当初、利水と治水の両方を目指していた計画が治水目的のみに変わるなどして事業が中断し、去年、国が見直しを検討する対象になりました。
「時間の観念が行政にないと痛感した。時間という物を入れずにどこかで出来るだろう」「一番被害を被ってしまうのは住民」(橋下徹・大阪府知事)
丹生ダム流域の知事が一緒に視察に訪れたのは今回が初めてで、国の検証結果が出次第、府県を超えた議論を進めていくことで一致しました。
☆ 京都新聞【 2010年08月29日 22時48分 】
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20100829000095
4知事、丹生ダム予定地視察「国は計画明示を」印刷用画面を開く
滋賀、京都、大阪、兵庫の4府県知事が29日、滋賀県長浜市の丹生(にう)ダム建設予定地などを視察した。4知事は利水目的のなくなったダム事業の必要性を判断するため「国が(ダム形式などの)事業計画を早期に出すべきだ」との認識で一致した。
一行はダム建設予定地や、国が計画見直しを始めたことに伴って工事が中断している付け替え県道を見て回った。予定地では、ダム建設に反対する嘉田由紀子滋賀県知事が「近畿最大のブナ原生林があり、貴重な植物が残っている」と環境面の問題も指摘した。
終了後の会見で、4知事は「(計画見直しのための)事業凍結から7年たっても明確な方針が出ていない」(井戸敏三兵庫県知事)と国を批判した。そのうえで、山田啓二京都府知事は「首長も見直しに意見が言え、決定できるルールが必要だ」と指摘、橋下徹大阪府知事はダム中止を見据え「国が約束したからじゃなく、道路の建設目的から考え直すべき」と関連工事の縮小を求めた。
そのほか、4府県の水源の琵琶湖を維持する森林保全は、橋下知事が「大阪もお金を出すべきだが、財布を一つにして森林にも社会インフラにも効率よく財源配分することが必要」と持論の道州制による実現を主張した。嘉田知事は「関西全体での受益と負担を分かりやすく示しながら、関西広域連合などの政治の形の議論が今から始まる」と、今後の流域連携に期待を示した。
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どこかピントがずれている。
「国の検証結果が出次第」なんて、まさに「時間」の被害を被る住民&納税者・水道ユーザーのことを考えていない、と私は思う。
(大阪府や自らがやるべきこと=「事業者である水資源機構理事長に、利水撤退意思を公文書で通知する」をやっていない。自らが「やることを」やらない」でいて国の所為にするのは、「地域主権」の考え方と矛盾するのでは?)
「政治的配慮」でぼやかしているのか?それとも・・・・?