続・9月18日 中部弁護士会連合会主催シンポジウム |
われらと生き物の未来Ⅱ -生物多様性環境訴訟の現状と課題-

会場の正面(演壇の後)に貼ってあった背ビラでは「主催:愛知県弁護士会 共催:日本弁護士連合会・中部弁護士会連合会」。でも配布されたこの日の資料の表紙は右の通りで「中部弁護士会連合会主催」のように見えます。
もともと「第1回」にあたるのが、昨年度、中部弁護士会連合会主催で行われ、その「続き」の意味があるらしい。
正直、私たち一般市民からすれば「弁護士会主催」で一括り。
参加者はおよそ100名超。
パネラーとして参加した在間弁護士から、「導水路はいらない!愛知の会」のスタッフMLに投稿されたメールの一部を紹介します。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
弁護士としても特殊分野(環境問題)で、環境問題としても特殊分野(法分野)でしたので、参加者数を心配していたのですが、100名を超える参加を頂きました。参加者の内訳は、様子から(参加者名簿と作成していません)、環境訴訟の弁護士、司法修習生・法科大学院生・卒業者、水関係市民運動の三者に分かれました。特に、水関係の市民運動の方の参加が目立ちました。これも、皆様の参加と宣伝・広報のおかげです。他の委員から感謝されました。ありがとうございます。
また、この問題で苦労している弁護士からも、まとまった資料と議論があり役に立ったと好評です。
シンポの準備に先立ち設楽ダム訴訟の控訴理由書を書いており、その際、「著しく合理性を欠くと断ずることはできない」という決まり文句を打ち破る論理を最高裁判例に基づいて整理したところでした。そこでまとめた内容が、畠山さんの資料の内容と同じだったので、改めて考えを整理でき、確信を持った次第です。
設楽ダム訴訟の控訴理由書は
設楽ダムの建設中止を求める会のHP http://no-dam.net/
設楽ダム・控訴第1準備書面(控訴理由書) http://no-dam.net/100915soshoNo1.pdf
をご覧ください。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
◇ ◇
<事例報告>
設楽ダム 在間 正史(愛知県弁護士会)
静岡空港 渡辺 正臣(静岡県弁護士会)
泡瀬干潟 御子柴 慎(岐阜県弁護士会)
<基調講演>
行政裁量に対する司法統制のあり方
- 現状の問題点と解決の方向性 -
畠山 武道(早稲田大学法務研究科)
立法等の現状に関する報告 … 越智 敏裕(上智大学準教授、弁護士)
◇ ◇
在間弁護士が発言に使ったパワポをPDFファイル化したものを載せます。
☆ 冒頭の直近の「環境裁判」の事例発表

9.18中弁連シンポ 設楽ダム報告スライドPDFファイル版
☆ パネルディスカッション内発表

9.18中弁連シンポ 河口堰報告スライドPDFファイル版
◇ ◇
内容は、なかなか濃密でした。
私は普段こういう言い回しは使わないですが、「勉強になった」。
「弁護士としても特殊分野(環境問題)で、環境問題としても特殊分野(法分野)」とはいうものの、「お上」相手の訴訟では必ず逢着せざるを得ない共通問題が多く、いわゆる「環境裁判」の当事者ではなくても示唆されるものは大きかったと思います。
長良川河口堰~導水路に至る一連の裁判を(何十年にもわたって)注視し、支えてきたある人の感想(19日にうちにあるMLに投稿されたもの):
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Tです。
今日の中部弁護士会主催のシンポジウム「生物多様性環境訴訟の現状と課題」は,はじめは難しそうだなと思っていましたが,4時間以上にもかかわらず最後まで引きつけられて聞きました。在間さんの報告は簡潔で!大変わかりやすかった!!です。(在間さんが最後に言われた「今回のシンポの準備をすることで僕自身,深化(進化)できた」というコメントを共感して伺いました。)
静岡空港訴訟,泡瀬干潟訴訟,その他全国のさまざまな裁判の報告を聞いて,原告側が苦労している共通点や裁判の壁が何なのか,はっきりと大きく見えてきた感じがしました。上関原発を描いた映画「ミツバチの羽音と地球の回転」で紹介されていたスエーデンの環境法典や環境裁判所の報告や,「環境公益訴訟」という考え方も目から鱗でした。
でもいずれにしても判例を変えていくのは一つ一つの裁判をする中で,弁護士,原告,支援者の地道な努力しかないのだとも思いました。愛知の訴訟も,設楽判決にめげないで,希望を持ってやっていきましょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◇ ◇
強いて難を言えば:
(1) このシンポの企画段階から関わっていたわけではないからなのだろうが(あえてオタクな議論をしていることを忘れたのか)、事例報告・パネラーとしての発言の中に「裁判所は被告・行政側の主張をコピペする」「訴訟は運動とリンクしなければならない」「原告達は本当に頑張っている」というような、このシンポ参加者にはとっては当たり前すぎて言わずもがなのことを述べることで、せっかくある高度な地平に上り詰めた議論をストンと落っことしてしまう(拡散させてしまう)場面がみられたこと。
限られた時間で濃厚な議論をしようという企画であり、全体としてはその方向で求心していただけに、「惜しい」。
(2) 環境影響評価法(環境アセス法)による環境影響評価が存在することを前提にした議論が多かったが(「現行法の限界と法改正のあり方」とか「(現行法の範囲内であることはとりあえず前提として)環境アセスの結果をどう行政裁量に反映させる主張を組み立てるか」とか)、環境アセスを踏まえて基本計画ができた(大きなダム、訴訟になったダム)は設楽ダムが初めてのはずである。
このことはパネラーに間で共有されていたのか、ちょっと不安だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
徳山ダムは「環境アセス法制定前に事業化されているから対象外」。
木曽川水系連絡導水路は「環境アセス法施行令のリストに、導水路事業というのが載っていないから対象外」。
後者のことについては環境アセス法改正案が議論されているときのパブコメで、「SEA(戦略的アセス)」「ゼロ・オプション」のこととともに、大分強調しましたが、今、店晒しになっている環境アセス法改正法案にはどう反映されている(or 反映されていない)のでしょう?
◇ ◇
9月19日、設楽ダムの建設中止愛知県民会議設立集会後のデモ。
名古屋駅前。

◇ ◇
参照
設楽ダムの建設中止を求める会
http://no-dam.net/
中弁連シンポチラシPDFファイル版
100903中日記事PDFファイル版