徳山ダムの所為? 揖斐川で要注意外来生物コカナダモが大繁殖 |
11月5日付け中日新聞西濃版に、下の記事が載った。
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外来コカナダモ駆除 アユ生育阻害、地元中学生ら作業
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20101105/CK2010110502000120.html

アユの生息に悪影響を与える外来種コカナダモの駆除作業が4日、揖斐川町岡島の揖斐川で繰り広げられた。揖斐川では上流の徳山ダムが完成した2008年ごろからコカナダモが急に増え始め、漁業関係者が危機感を募らせていた。
コカナダモは北米原産の沈水植物で、アユのエサとなる水ごけを覆ってしまう。揖斐川中部漁協によると昨年は特に繁殖量が多く、アユの漁獲量は他地域と比べ低迷。今年も状況は悪化しており、サイズの小さいアユが目立つ。
この日の駆除作業は、川の水量が減る用水取水ゲートの点検に合わせて実施。漁協組合員や地元中学生、県、町の職員など約100人が川に入り、約4時間かけて一面に広がるコカナダモを引き抜いた。
揖斐川中部漁協の石原潤一郎組合長(54)は、コカナダモの大繁殖について「温暖化や富栄養化など要因はいろいろ考えられるが、ダム稼働で水量が一定になり、範囲が一気に広がった可能性もある」と話した。
同漁協のアユ漁獲量はダム完成前の2007年度が24トンだったのに対し、本格稼働後は08年度が12トン、09年度が10・8トンと半分に落ち込んでいる。 (岡本太)
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環境省は、外来生物法でコカナダモを要注意外来生物に指定している。
なかなか厄介な、というか、物騒な外来生物のようだ。
結論的にいうと人海戦術で駆除する以外ない … それでは抜本的対策にならないことは明らかだ。
環境省>自然環境・生物多様性
http://www.env.go.jp/nature/index.html#intro
外来生物法HOME >基本情報 >要注意外来生物リスト
http://www.env.go.jp/nature/intro/index.html
>植物 一覧 >詳細
http://www.env.go.jp/nature/intro/1outline/caution/detail_sho.html
コカナダモ(Elodea nuttallii)に関する情報http://www.env.go.jp/nature/intro/1outline/caution/detail_sho.html#2
●原産地と分布
北アメリカ原産、ヨーロッパ、東アジアに分布する。
●定着実績
戦前に植物生理学の実験用に導入されたと言われるが明らかではない。1961年琵琶湖の北湖で野生化が確認された。尾瀬沼などで異常繁殖した。北海道~鹿児島県で分布が確認されている。
●評価の理由
各地の湖沼に侵入し、クロモ等の在来の水生植物と競合し駆逐している。
輸入、流通、販売が行われていないので、規制による効果は小さい。既に広範囲に蔓延しているため指定の緊急性は低い。
●被害の実態・被害のおそれ
生態系に係る被害
日本ではカナダモ類の植物が在来種のクロモを追い出している(文献5)。
琵琶湖では、コカナダモとオオカナダモの侵入により、在来種の現存量が大幅に減少したことが報告されている(文献7、10)。
日光国立公園内で、尾瀬沼ではコカナダモの繁茂が在来種の分布縮小をもたらすなどの影響を及ぼしている(文献11、11、15)。
群生するために水路の水流を阻害して問題となることが指摘されている(文献14)。
●被害をもたらす要因
(1)生物学的要因
環境への適応性
・ 温帯に分布する。耐寒性があり、在来種が枯衰する冬期にそのまま越冬し、在来種の発芽前
に生育を開始できる。
・ 湖沼、河川、池、溝、水路に生育する。
・ 日当たりの良い、流水~停滞水域、塩基性水域、浅水を好む。
・ 富栄養~貧栄養水系に生育できるので、湧水のあるような清水域への侵入も目立つ。
種子生産と分散能力
・ 開花期は5~10月。雌雄異株。
・ 日本では雄株のみで、種子生産は確認されていない。
栄養体からの再生能力
・ 栄養繁殖が旺盛で、殖芽や茎葉切片で繁殖する。密集した集団を形成することができるので、
在来水草とは主として光を巡って競合する。
その他
・ アレロパシー活性を持つ。
(2)社会的要因
日本への侵入経路は不明だが、琵琶湖のアユ苗と共に日本各地に広まったと考えられている(文献4)。
現在、観賞用としては殆ど流通していない。国内産でまかなえるので海外からの輸入は殆ど無い。
●特徴ならびに近縁種、類似種について
トチカガミ科の沈水性の多年草で、長さは1m以上になることもある。
コカナダモ属は世界で5種が知られる。日本に自生種はない。本種以外の野生化の報告は今のところない。海外では、カナダモE.canadensisが外来種として問題になっている。
在来種のクロモHydrilla verticillataや、外来種のオオカナダモEgeria densaと類似しているが、輪生する葉の長さや数、鋸歯の有無で区別する。
●その他の関連情報
(省略)
●注意事項
既に各地の湖沼等で野生化しており、在来種との競合・駆逐等のおそれがあるため、積極的な防除または分布拡大の抑制策の検討が望まれる。
●主な参考文献
(省略)
◇ ◇
☆ 大阪府 環境農林水産総合研究所 水生生物センター
http://www.epcc.pref.osaka.jp/afr/fish/tenji/mizukusa/mizukusa/kanbetu2.html
外来種図鑑コカナダモのページ
http://www.epcc.pref.osaka.jp/afr/fish/tenji/gairai/gairai/kokanada.html
(前略)
花期は5~9月で、水上に白い花を咲かせる。外来生物法の要注意外来生物に指定されている。耐寒性があり、在来種が枯衰する冬期にそのまま越冬し、在来種の発芽前に生育を開始できる。種子生産は確認されていない。栄養繁殖が旺盛で、殖芽や茎葉切片で繁殖する。(後略)
☆ 琵琶湖博物館 外来生物情報 コカナダモ
http://www.lbm.go.jp/emuseum/zukan/gairai/data/kokanadamo.html

(略)
<特徴と話題>
沈水植物であるために通常は目立たないが、琵琶湖では富栄養化が進むにつれて急速に増加し、島状の塊になったり、流れ藻となって漂い、湖岸に打ち上げて腐るため、悪臭がして話題になることが多い。
全長1メートルを超え、茎の上部では分枝する。葉は三輪生で、葉身は長さ5-15ミリ、幅1-2.5ミリ程度、細かい鋸葉がある。花は5月から9月ごろに親株からはなれて水上に白い花を咲かせる。雌雄別株であるが、日本には雄株だけしか入っていない。
近似種とはオオカナダモは葉が4-5輪生、姿のよく似たマツモは葉ガ5-7輪生である点で、区別できる。またオオカナダモは全体にコカナダモに比べて大きいことでも区別できる。
個体を直接に取り去ることしか駆除の方法はない。かつてはクロモなどの水草も田畑の肥料として活用されていたため、積極的に藻刈りがおこなわれていたが、現在ではそういう利用がないために、対策としての水草の刈り取りがされている。 (略)
☆ 植物園へようこそ!
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/BotanicalGarden-F.html
コカナダモ
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/kokanadamo.html

コカナダモ(小カナダ藻) トチカガミ科 Last modified: Oct 01, 2007
学名:Elodea nattallii
原産地:北アメリカ
アメリカから実験用に輸入されて逸出帰化した植物。低温に耐え越冬し,在来種よりも早く生育を始めるので生活圏が広まりつつある。雌雄異株で日本には雄株だけが帰化しているが雌株が入ってくると大変なことになるかもしれない。環境省が指定している要注意外来生物の一種。
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中日新聞のこの記事によれば、コカナダモの大繁殖は徳山ダムの本格運用が始まった2008年頃かららしい。そしてコカナダモが繁殖すると、藻(水ゴケ)が生育できなくなり、アユはエサである藻(水ゴケ)が食べられない…。かくして、どうやら、徳山ダムこそがアユの生育を阻害していると推察される。
どのダム・ダム関連事業にも「流水の正常な機能の維持」というのが目的に入っている。だが土木技術者-河川管理者-の「流水の正常な機能の維持」という概念は、××m3/秒の水という量的概念でしかないように思える。質的概念は、数値化できる範囲での「水質」以上のことは理解を超えるらしい。
生態系は複雑系であり、「まだ分からないことのほうが遥かに多い」ことを認めることから出発する以外にないが、工学系の教育を身につけた人ほど、「まだ分からないことのほうが遥かに多い」ことが認めがたいようだ。
川と向き合って暮らしている普通の流域住民は、小難しい論文にはできなくとも、その地域での生き物のつながりをよく知っている。複雑系を、そして「分からないことが多い」ことをも理解している。
河川法第1条に「河川環境の整備・保全」の文言を入れたからには、せめて河川法の所管省に環境省も加えることくらいすればいい … 言っても詮無いことなのだろうけど。
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写真が豊富で美しかったのがこのサイト。
☆Gen-yu's Files
水面に浮かぶ花(コカナダモ: Elodea nuttallii )
http://bios.sakura.ne.jp/gf/2008/elodea.html

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11月9日補充。
岡島橋付近は国の直轄区間である。
コカナダモは湖沼などで大繁殖することでも分かるように、流れの速いところでは繁殖しない。
岡島頭首工があるために、このあたりは流速が減じる区間である。
県管理区間(川口橋から上流)は峡谷部に入る。流速があるためか、コカナダモの大繁殖は見られない、と岐阜県揖斐土木事務所河川砂防課の人は言っていた。