今川 2010.11.21「小さな命」救出作戦 |
「ギンブナの会」の須田事務局長の精力的な発信が功を奏して、岐阜県美濃土木事務所が動き、21日(日)午前の「『小さな命』救出作戦」となった。
◇ ◇
岐阜県の報道資料発表(※)では「午前9時に今川橋と保戸島橋の中間(=の堤防の中段に車がおける)に集合」となっていたが、私たちが行ったときには、すでに車はいっぱいで人影はない・・・つまりすでに「作戦」は開始していた。
今川橋の下はすでに多くの人がいた。この後にも駆け付ける人がたくさんいて、最終的には参加者は100名近かったと思う。
※ 岐阜県トップ >> 県政の運営> > 広聴・広報 >> イベント・お知らせ> > 報道発表資料
今川における魚類および水生生物保護活動について
http://www.pref.gifu.lg.jp/kensei-unei/kocho-koho/event-calendar/gyoji/kasen/imagawa.html
後に県美濃土木事務所の副所長に聞いたところ、彼らが到着する前に、地元の人達が始めていたそうだ。慌てて業者に「水抜き」を指示したらしく、救出するべき魚まで吸い上げて(=死なせて)しまって、それに気づいた須田さんは、「こういうことにならないように配慮するのは当たり前のはず。やり方が分からないのであれば(こちらに)訊いてからやって欲しい」と強く言っておられた。
私がモタモタ歩いて現場に近づいたときには、すでに多くの「命」が掬い上げられていた。
「大物」はナマズ・・・小さな魚を補食してしまうので「別扱い」。底性生物も。
◇ ◇
岐阜県博物館学芸員の千藤さんが、向井・岐阜大准教授のアシストを受けながら、掬った水生生物の説明。
メモった生物名を記す。
私の水生生物の知識は、せいぜい河川管理者と同程度しかない(実物やその生息環境と生物名が全く一致しない)。間違いがあったらコメンナサイ。
オイカワ、カワムツ、ニゴイ、ギンブナ、コウライモロコ、カマツカ、スナヤツメ、シマドジョウ、ギギ(国内移入種)、アカザ(環境相RDB・ 絶滅危惧Ⅱ類)、ブルーギル(特定外来生物/成仏して頂いた)、アビラハヤ、タナモロコ、カワヨシノボリ、タナゴ、ナマズ、スジエビ、カワニナ、コオニヤンマ、オオヤマトンボ
これらを水槽に入れて長良川本流に運ぶ。
◇ ◇
放流場所は、地元の漁協の方の意見で、千疋大橋の下の川原とした。
千疋大橋の橋脚に水面の反射が映っていた … 光の反射の反射、そしてまた水面に反射。
放流地点の下流に「せぶり漁」の仕掛けがあることもあって、表面は止水のよう。でも流れている、水は澄んでいる。
こうやって涸れた川から生き物を運搬したからといって、それが本質的・根本的な「環境改善」であるはずはない。
しかし、多額の税金を使って、子ども達に養殖アユを大量に放流させる(それしか「ない」)「豊かな海づくり」 よりは、ナンボかましであろう。
ナマズ達はすぐには姿を消さなかった・・・急に場所を変えられて戸惑ったのか、それとも周りにご馳走(小さな魚)があるからなのか。
◇ ◇
また今川橋近くに戻ってタモで生き物を掬う。
水たまりの水を随分減らした(橋脚の色の違いで分かる)。
かなりの生き物は移動させた。そしてここまで減らすと、元々の川の伏流水が流れ込んで来る。
ここで「作戦」終了。残った「小さな命」は伏流水と光を浴びて繁殖すえる植物プランクトンを土台に何とか生き抜いて、そして次に水が来るときまで永らえるてくれるだろう・・・そう信じたい。
◇ ◇
今川橋下流の保戸島橋のもっと下流も涸れている。この状況はなかなか変わりそうもない。
「『小さな命』をこれこれ救出しました」美談で「ハッピーエンド」ではない。
が、参加した子ども達は、声を揃えて「楽しかった」と言っていた。子ども達の親達も嬉しそうだった。
「川というものがあり(そこにはさまざまな変化があり)、その場所には『命』がある」ということに直接触れた経験は決して無駄にはならない、と私は思う。
「人間には想像力ってものがあるじゃないか」とある人は言った。そう、人間の想像力を否定して、「ナマの経験が無ければ分からないのだ」と言い切ってしまったら、「人間は我利我利亡者でしかありえない」というシニシズムに陥るしかなくなる。
しかし、想像力が培われるには小さなものであっても何らかの体験の土台が要る。今の日本社会では大人が「自然体験」という機会を作らねばならにようだ … いやこの子ども達の親の子ども時代に、体験の機会を奪ったのかもしれない、他ならぬ私たちの世代が。
「過ちは繰り返しません」と言えるその日まで。