「『ダム派』学者の理論武装」に反撃を |
-後向き河川工学者のバックラッシュ-
いきなり表題と縁の無さそうな写真で失礼。12月3日午後3時15分くらい、大垣。
無縁なようで無縁でもない。
「異常気象への備え」をもってダムを作れ、導水路を作れ、という学者先生が少なからず居られる。「想定外の大規模な洪水(渇水)に備えて」「定量的に測れる施設建設で対応する」というのは論理矛盾ではないだろうか? この手の議論をする人々に共通しているのは、「見たいものしか見ない」ことだ。”治水”は社会資本整備の一項目であり、当然にも公金を投入する。そして「川」をいじくるのだから、何らかの意味で河川環境に負荷を与える。
「想定外の大規模な洪水(渇水)に備えて」「定量的に測れる施設建設で対応する」論者は、社会的コストの一部だけを見、河川環境についても一部を切り取って論じる。
そして自分が唱えてきた議論に現実を合わせようとする。非常に悪く言えば、「自分の説に行政を合わせようとする… 何百億円もの公金を「自分の説に合わせて」使うことになれば、そりゃ気持ち良いでしょうよ!
今般、この手の「あぁぁ…(悪い意味で)学者さん…」の意向が今回の「内ヶ谷ダムの検証」に反映しそうな勢いだ。
この日、北陸、関東、東北、北海道では記録的な豪雨が襲い、突風が吹いた(少なからぬ被害があった)。
大垣でも、天候の変化が目まぐるしかった。昨日から降り続いた雨がやんで、小春日和の日が射したのが、午前11時頃。俄にかき曇って強い風雨となったのが午後1時30分頃。どうにか雨が小ぶりになって薄日が射した(雨は降ったままではあるが)のが午後2時少し前。そして午後3時を少し回った頃のこの虹。小雨だが雨はやんでいない。
この虹が「異常気象」の表象なのかは分からないが、とりあえずの今日(12月3日)の「荒れた天気であったその夕方の風景」として、印象的だ。
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11月30日、国交省河川局 は、例の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会」がの「中間とりまとめ(案)」に関する意見募集を行った、そのときに出された意見を公開した。
国土交通省ホーム >> 政策・仕事 >> 河川トップ >>
http://www.mlit.go.jp/river/kasen/index.html
今後の治水のあり方について 中間取りまとめ(案)に関する意見募集等の結果(11月30日)
「意見募集」等に頂いたご意見について (7/16~8/15 意見募集結果) (2010/11/30)
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2010e050b4323762e0fa6fb0b6f7fba953e4c041fff88.html
「出されたご意見を参考にして」と、すでに「有識者会議」による「中間とりまとめ」は9月27日にを出されている。そして、翌9月28日に、「中間とりまとめ」を「基準/評価軸」としてダムを検証せよとのお達し(要請?)が、事業主体に出された。
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2010ec1f63f9c983ab13a6429fd7a51b3313c66ace2c7.html
この2010.9.27の「有識者会議」に、「意見」は切り刻まれて「表」の中に押し込まれた。
今後の治水対策のあり方に関する有識者会議
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/index.html
第12回配付資料
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2010e0eeded740844a5f1cdef1eb0a44d653c9c9f7d65.html
「資料2 意見募集の結果について(pdf,553.0KB) 」
私自身の意見がどう取り扱われたのかも、さっぱり分からない。
意見には意見を出す主体の立場があり、文脈もある。意見を出した主体も分からず前後の文脈も繋がらないように切り刻まれて整理された「ご意見/表」が、有識者会議による「中間とりまとめ(案)」微修正 → 「中間とりまとめ」決定に、どんなふうにに反映されたのか(されなかったのか)、さっぱり分からない。そしてその「中間取りまとめ」が、今般の検証・検討の「基準(再評価実施要領細目)」とされた。相変わらずのブラックボックス行政(透明性がない!)である。
そして、検討対象事業とされたダム・ダム関連事業を擁する道府県ではさっそく「検討」「検証」が始まっている。すでに「やっぱりダムで行く」との結論を出したところもある。
そうなってからの「意見募集等の結果」発表。
コトが済んでから、あるいは意味が減殺されてからでも、公表しないより公表したほうがマシ、ということか。
No403以後が、道府県や地方整備局、水資源機構の意見である。
(岐阜県意見= No418)
ちなみに2010.11.25の「内ヶ谷ダム第1回検討の場」での発言では、岐阜県の意見は大いに採用されたそうである。一体どういう基準で、何がどうなった???
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「第1回内ヶ谷ダム検討の場」の資料
岐阜県トップ > 県土づくり > 道路・河川・砂防 > 河川
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/
第1回内ヶ谷ダム検討の場の資料について
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/anshin/dam-jigyo/uchigatani-kento.html・ 参考資料「県施工ダムの評価軸のあり方について」平成22年6月 岐阜県事業評価監視委員会(県施工ダム検証に伴う作業部会)。
・ 参考資料「県施工ダムの評価軸のあり方について」平成22年6月 岐阜県事業評価監視委員会(県施工ダム検証に伴う作業部会)(参考資料)
があっ、分かりにくいので、前のをⅠ、後のをⅡと呼ぶことにする。セットのものだから主張内容は同趣旨だ。
「岐阜県意見」はこの「県施工ダム~」に基づいて出されている。
つまりこの「県施工ダムの評価軸のあり方について」と「岐阜県意見= No418」と、2010.11.25の「内ヶ谷ダム第1回検討の場」での安田孝志委員(岐阜大教授/「県施工ダム検証に伴う作業部会」委員)が強調した発言を辿ると、意とするところが浮かび上がって来る。
ひとことで言えば「『ダムに頼らない治水』なんて方向が気に入らない、やはりダムこそ最良だという結論にしたい」という「ダム派/バックラッシュ勢力の理論武装」ということらしい。
彼らが強調し、自らの土俵に引きずり込もうとするのはおよそ以下のようなことだ。
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☆ ダム 「ダム設置箇所より下流の河川に広く効果がみられる。」(Ⅰ 4-1)
→ 「その場」の被害軽減を目標とする手段より「崇高だ」と言いたい?
☆ 堤防整備 「万一破堤した場合は甚大な被害が発生する」(Ⅰ 4-1)
→ 堤防の補強については触れないように努力しているらしい。
Ⅱ 1-6「破堤しづらい堤防」とあるがが、「景観が良くない」とかケチをつけている。「案としてはありうる △」という扱い。つまり「案としてはありうるが実効性がなく無意味」と言いたいらしい。
☆ 「定量的な評価」の強調
→ まさに「定量治水」全面展開。他の方策は「定量的な評価ができない」と貶める。
☆ ⑨ 宅地の嵩上げ、ピロティ建築等 ⑩土地利用規制は「法整備が不十分であることから困難である」(Ⅱ 1-10)
→ 水害訴訟を支援してきた者からするとまさに腸の煮えくりかえる思い。
20年以上前からこのことは言われ、2000年河川審中間答申では、いわば「目玉」施策だった・・・法整備ができなかったのは一体誰の所為?
☆ 森林の保水機能は無視する(Ⅰ 8-2)
→ 土俵をすり替えて(もしかすると土俵が理解できていない??)「困難だ」「不可能だ」と、議論することそのものを排除している。徳山ダム事業審議委のときも「流域の土地利用を見ると森林が約70%というのは変化していない」と言っていたっけ。森林面積は見ても育ってきた木は見ていない、「森をみて木を見ず」か?
「専門家」の看板を掲げるなら、森林の専門家からちゃんと学んでからモノを言って欲しいものだ。
☆ 「評価軸に『治水対策効果の対象範囲』を加える」「評価軸『安全度(被害軽減効果』を拡大する」(岐阜県意見= No418)
→ 現状ではB/Cが1.1とギリギリなもので、「B」を膨れさせるための意見。岐阜市を「水害防除」の対象区域とすれば「B」は非常に大きくなるから。
岐阜市の千鳥橋地点で5cmの「効果」が何なのさ!!!(測定誤差の範疇だ)
☆「評価軸『実現性』に地域住民・関係自治体を加える」(岐阜県意見= No418)
→ 関係自治体首長が推進派だから。また地域有力者を「ダム推進派」にできるから。
☆ 「評価軸『実現性』に効果発現の確実性を加える」(岐阜県意見= No418)
→ ダム以外の方策は(例えば堤防強化は)「全延長で完成しなければ効果はゼロ」という評価をするらしい。「ダムであれば、ダム完成後すぐに効果が発現できる」という話に導く。(利水の場合は「ダムは完成に長期間を費やすから、今は需要が見えなくても”長期的・先行的な観点から”ダムを作っておくのだ」とのことだったけど。二重基準というかご都合主義というか)
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「『ダムに頼らない治水』なんて方向が気に入らない、やはりダムこそ最良だという結論にしたい」という「ダム派/バックラッシュ勢力の理論武装」に対して、皆様、とりあえずパブコメでの反撃をお願いしたい。
岐阜県トップ > 県土づくり > 道路・河川・砂防 > 河川 >
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/
内ヶ谷ダム建設事業の検証に係るご意見の募集について
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/anshin/dam-jigyo/1kai-kensyo-iken.html
「何の意見募集をしているのかよく分からない。内ヶ谷ダムの『ご利益』は未だ説明されていないし?」と言ったら、「比較検討するための案を絞り込むためのパブコメなので、およそこの地域に関係ない、というのでなければ、どんなご意見でも。一般論で良いです」とのこと。
個別の「内ヶ谷ダム」を知らなくても良い、ということ(シツコク。沿川住民にも「内ヶ谷ダム」は説明されていないのだから、「内ヶ谷ダムについて知ってから物を言え」だったら、誰も何も言えないことになる。「パブコメにかけた」というアリバイをアリバイたらしめるためにも、そんなことはいえない)。
「ダム派/バックラッシュ勢力の理論武装」との格闘(最後の闘い?)という意味で、「天王山」になるかもしれない、と感じている。
今こそ治水観を、真に「流域に暮らす民にとって良い川づくり」へと転換できるかどうかの分岐点。
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この虹は希望を示しているか?