「ご利益」も「要望」も後出しジャンケン ~ 内ヶ谷ダム ~ |
最初に断っておくが、以下述べていることは、決して「数字/定量」でモノを言いたい、ということではない。
従来の「基本高水位-計画高水位=洪水調節施設」論(=「定量治水」?)は、もう廃棄されるべき(止揚されるべき)だと私は考えている。
洪水も渇水も、自然現象を相手にしていること。
「ダム集水域に計画通りに雨が降れば、数十センチだか十数センチだか水位が下がることになるはず」などという、神頼み的(バクチ的?)治水では怖くてたまらない。
「ダムに頼る治水」は、「ダム集水域以外の場所に豪雨があったら、『想定外』だから破堤してもしょうがない」「ダムにカネをとられて脆弱な堤防は放っておくのも仕方がない」ということと、常にセットなのだから。
「数字/定量」でモノを言いたい、ということではない、その上で:
岐阜県が「最優先で検討象」とした内ヶ谷ダム。
岐阜県河川課に何度も何度も「ご利益」(洪水対策効果)を尋ねているが、要領を得ない。意図的にはぐらかしているというより・・・つまりは以下のような具合だから、胸を張って「はい、こんなに洪水防御に役立ちます」と言いにくいのではないか、と一種同情を覚える。
しかし個人的にはともかく、かくも酷いダム計画をさっさとリストラするのも「河川管理者の裁量の範囲内」ではないのだろうか?(どこどこまでも延伸し拡張されている「行政裁量」!!!!」)
茶番的2010.11.25「第1回 内ヶ谷ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」。
この翌26日から、岐阜県は「ご意見募集中」である。
内ヶ谷ダム建設事業の検証に係るご意見の募集について
- 26の「洪水対策案」と13の「河川に必要な水の確保(流水の正常な機能の維持)の対策案」の長良川中流域に対する適用性 -
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/anshin/dam-jigyo/1kai-kensyo-iken.html
どういう種類の意見を求めているのか、がよく分からない。聞くと「一般論でも結構です」。
じゃ、「(どこにでも適用できる)治水総論」で行くか?
◇ ◇
「第1回 内ヶ谷ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」 資料
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/anshin/dam-jigyo/uchigatani-kento.html
資料1 10p 「ダムによる洪水調節」
ここに載っている水位に関して、地点を特定して貰った。
① 亀尾島川合流後(105.1km) 「効果」=約74cm
② 郡上市美並町下田付近(92.3km) 「効果」=約30cm
③ 美濃市新美濃橋付近(75.31km) 「効果」=約13cm
④ 関市千疋大橋付近(64.58km) 「効果」=約10cm
⑤ 岐阜市千鳥橋付近(57.8km) 「効果」=約5cm
<⑥ 直轄区間との境(56.2km) 「効果」=0cm >
①、②も③~⑤も1/100規模の洪水を前提としていることは共通だ。
下流の③~⑤は「計画河道」による計算で、HWL(計画高水位)との比較を算出している。直轄区間との境では「ダムあり」でも「ダムなし」でもHWLとの差は0cmで、「直轄区間には内ヶ谷ダムによる水位低減効果はない」ことが、計算の前提となっているということのようだ。
そして③~⑤は、すべて「ダムなし」でHWLをクリアしている。
つまり「計画河道」が完成すれば、(従来の「基本高水位-計画高水位=洪水調節施設」論でいっても)「不要なダム」だ、と彼らの「計算」が述べているようだ。
同時に①と②は「現況河道」前提のようだが、情報公開請求で開示されたバックデータらしきものが今一つ「???」である(わざわざ説明を求めてアポをとって出向いたが、「議員さんに呼ばれて」30分ほどで消えられてしまって、結局説明されていない。時間がとれても説明不能なのではないか、という感触があるが)。
◇ ◇
聞き捨てならないのは、未だに説明されていないことの言い訳なのか居直りなのか、「もっと下流(岐阜市中心部)を包含するようにダムの効果の計算をし直す」と言っていることだ。これは例の事業評価監視委の「学者先生」の発言と符合する。もともとの計画上の「ご利益/効果」もまともに説明されないまま、後出しジャンケンで(「学者先生」のご指導の下、計算の前提まで変えて)、ダムの「効果」の水膨れをはかる・・・そんなのありか?!
こうなると「学者先生の趣味」は、納税者・国民を害する危険な悪趣味の領域だ。形式的な民主主義プロセスすら無視されている。たまたま河川管理者に(これまでの慣習的延長で)委員を委嘱された立場を利用して、自説に合わせるために「再計算」だけでも何千万円もかかるような(そして客観的に無意味としか思えない)ことをやり、「何が何でもダム」にもっていこうとする。これは酷い。
この手の曲学阿世の「学者先生」がデカイ面をするのも、政治職公務員(首長、議員)がアホすぎるからか?(今は、官僚・役人バッシングすると票が集まるようだが、バッシングしている首長や議員は、必要な学習をしているか?中には全く中味のない「人気取りバッシング」も少なくないと感じる。その手のバッシングには私は同調しない。その限りにおいて、私は行政職公務員-官僚?役人?-の味方である。行政職公務員の側の「あんたに【だけ】は味方なんかされたくないね」という声も大いに聞こえるような気もするが。)
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業務時間終了まで、結構シツコク上記のようなことを聴き取っていた。
夕刊を取りに行くと依頼していた「内ヶ谷ダムの要望」のコピーが届いていた(ウチは今、18時以後でないと郵便が着かない。”郵政民営化”で大いに不便を感じている)。
内ヶ谷治水ダム流域連携流域会議「要望書」
今年の11月4日付け!!!!
「内ヶ谷ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」を設置すると決まってから、その主たる構成メンバーがこの「要望書」を出したわけだ。
これを茶番と言わずして・・・。
皮肉を込めて、私が情報公開請求をした時点(10月末)では存在しなかったのだから開示文書になかったのは「正しい」わけだ・・・
あの「検討の場」での発言をみても、この面々は「内ヶ谷ダムのご利益」もまともに説明されておらず、まともに理解していない。
「ダムというのは、何だか知らないけど有り難いものみたいだから、とにかく建設促進と早期完成を要望する」
徳山ダム審のときも(それ以後も)ずっとこうだった・・・
あのねぇ、岐阜県の寒い寒い財政状況はご存じでしょう?
ダム本体工事に手をつけたら、工事完成までそこに集中的にお金を注ぎ込まねばならない(コスト削減は厳しく要求されている。「機械のリース料」というレベルでも、「ゆっくり工事を進める」ことはできない。「始めたら集中的にやるしかない」のがダム本体工事~。
そうなると地域地域のいろいろな(河川に関する)要望はみんな吹っ飛んで、漏水箇所は放置され、低い堤防も放置され、古い排水機場も設備更新されず・・・・下手すれば、動かない閘門が修理できずに危険を招くようなことにもなりかねない。
それほど賢くなくても、この事情は分かるはず。
なのに「建設促進・早期完成」要望を出すことが、霞が関のお覚えを目出度くして、手厚い予算をつけて頂くことに繋がると、未だに信じてやまないらしい・・・・
少なくともこの15年間は、「(クリーンかダーティかなど関係なく)財布の事情からして、『要望・陳情』でどんどん予算をつけられるような状態ではない」という河川局からのメッセージは出され続けている。
(諄いが、「全部がクリーンだ」と言っているのでもなく「河川局はダムを作りたがっていない」と言っているのではない。15年間ヘンな付き合いをしてきて-自分の思考回路は骨の髄までカスミガセキアタマなんだなぁ、と何度も感じさせられ-、つくづく思うのは、「ダム派」VS「脱ダム派」と切り分けられるほど、官僚組織【も】単純な構造にはなっていない、ということ)。
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美しい内ヶ谷を(長良川の一つの重要な源流域を)ダムに沈めてはならない、ということも、もちろん重要だ。
しかし、ある意味、高邁な(?)環境問題以前に「先立つものの使い道の優先順位を真面目に考える」・・・これは政治職公務員の一義的な責務なはずだ。
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