長良川河口堰ゲート開放とは似てもって非なる「開門 倍増」 |
12月19日の中日新聞朝刊トップに以下の記事が出ました。
☆ 中日新聞2010年12月19日 09時07分
長良川河口堰開門、来年度から倍増へ
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2010121990090337.html
国土交通省と水資源機構は長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)上流の水質保全のため、ゲートを上げて一時的に放流量を増やす「フラッシュ操作」の回数を来年度から倍増する方針を固めた。夏場に酸素が欠乏する底層部分に新鮮な水を流し、魚や貝類など底生生物が生存しやすい環境づくりを目指す。
諫早湾干拓事業訴訟で菅直人首相が上告を断念し、国が排水門の開門調査に着手する方針を決めたことで、河口堰でも試験開放を求める声が岐阜県の漁師や環境団体の間で高まっている。環境改善に向けた取り組みが注目を集めそうだ。
堰の上流部では夏の渇水期に水が滞留し、水温の高い表層と低い底層に分離。上流から流れてくる酸素を含んだ新しい水が表層にとどまり、底層の水中では溶存酸素量(DO)が下がる。DOが低いと底を泳ぐ魚やカニ、貝類などの底生生物は呼吸ができなくなる。
このため、堰の管理所はDOが基準値(1リットル当たり6ミリグラム)未満になると、ゲートの一部を川底から70~80センチ引き上げ、ゲート下から水を一気に流すフラッシュ操作で水をかくはんしている。
操作は2000年から昨年まで、4~9月に年平均で約40回実施。操作直後、500メートル上流の伊勢大橋ではDOが最大4ミリグラム、8キロ上流の長良川大橋では5ミリグラム改善したという。
来年度はフラッシュ操作の実施基準を「DOが1リットル当たり7ミリグラム未満」に緩和し、回数を増やす。引き下げは明確な基準で操作を始めた00年以降初めて。操作は年間80回程度の見通しで、DOの改善に効果的な放流方法も検証する。
堰の上流部では運用が始まった1995年に、水質悪化の象徴といわれる藻類のアオコが発生。水の浄化作用があるヨシ原も9割が消滅し、環境団体から危惧の声が上がっている。(中日新聞)
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「諫早湾開門」の流れを見て、国交省・水資源機構がぶちあげた、ということでしょう。
これは朗報なのでしょうか?
流域住民(漁民を含む)のゲート開放要求を無視し続けることができなくなった、「という意味では前進なのかもしれません。
が、本質的には「すり替え」「ごまかし」「下手すればより悪化」です。
このゲート操作方法を変えるのどうの、という話は今に始まったことではありません。
11月22日の岐阜県主催の「長良川河口堰県民調査団」でも、水資源機構長良川河口堰管理所は、「堰上流部のDO改善のためにアンダーフローの回数を増やすということで今関係機関と調整中です」と言っていました。
河口堰上流伊勢大橋付近でのDO改善の効果はあるのかもしれません。(「アンダーフローをしてもその場所でのDO改善の効果がない」との証明は難しい)。
しかし「だから何なの?」です。
私たちは、そして100万人の長良川流域住民が求めいるのは、「伊勢大橋付近のDO改善」に原曲する話ではありません。
私たちが、100万人の長良川流域住民が求めいるのは求めているのは「ゲート操作規定を変える」ことではなく、「(喩え試験的にでも)ゲートを全面開放して、長良川河口部に汽水域を復活させろ」ということです。
潮の干満が反映される状態、水棲生物が自由に海と川を行き来できる状態に戻せ!!
アンダーフロー回数を増やすことでは、回遊魚の往来にも寄与しないし、喪われたヨシ原を再生することにも繋がりません。
長良川市民学習会の武藤仁さんが複数のMLに投稿した情報(19日13時現在)を引用します。
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みなさま
長良川市民学習会の武藤です。
本日の中日新聞トップ記事「河口堰開門 倍増へ」の開門はインチキです。
私たちが求める開門ではありません。ゲートの底側を開くアンダーフローの回数を増やし上流の淡水を流すもので、一滴たりとも潮水を堰上流にも遡上させるものではありません。
汽水域を復活させるものではありませんのでアユ、サツキマスの回遊魚には役立ちません。引き続き上流側の水位は高いままなので、9割消滅したヨシ原を回復することはできません。また、粕谷先生らの河口堰ヘドロ堆積説によれば、アンダーフローの回数増は、ゲート下流側にヘドロを堆積させる循環水流を強めることになります。
この記事をめぐって、私が感じたこの間の「おかしな」動き。
① 河村市長と大村愛知県知事候補が水機構に対し本日の河口堰視察を予定していた。
② 昨夜、河村市長側から長良川市民学習会代表の粕谷先生に本日視察案内の依頼があった。
③ 市民による「豊かな海づくり大会」実行委員会が国交省中部地方整備局に対して9月17日に提出した「河口堰のゲート開放に向けた公開質問状」について、返答を先延ばししていた当局側から、突然12月16日事務局である私に「12月20日に返答する」との電話が入る。
さらに、「おかしな」こと
① 本日、粕谷先生が機構、河村、大村の前で河口堰下流の底泥を採取するといつものようにヘドロが採取されたが、なんとその中にヤマトシジミが発見された!????(今までの観察ではありえないこと)
② そして本日、その近くでは赤須賀漁協のシジミ漁の漁船がたくさん出ていて(どういうこと?)、粕谷先生もびっくり。
③ 1か月ほど前、長良川市民学習会の仲間から「最近、河口堰の上下流側で漁民がシジミ漁をやってるよ」との情報。シジミはいないはずなのに?おかしな話を思い出しました。
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今のところまた聞きですが、本日粕谷志郎さんが掬った河口堰下流側のヘドロは相変わらずひどいそうです。なのになぜかきょうはシジミがいたとのことです・・・ヘン。
4月にも10月にも行ってヘドロ採取をした場所は、とてもではないが酸素を必要とする生物が生息できる状態ではありませんでした(酸化還元電位 マイナス300mVとかマイナス400mVとか)。
4月25日 長良川河口堰ヘドロ観察会 [2010-04-26]
http://tokuyamad.exblog.jp/13542159/
10月19日「長良川河口堰で失われた生態を見る会」-1[2010-10-24]
http://tokuyamad.exblog.jp/14847168/
10月19日「長良川河口堰で失われた生態を見る会」-2[2010-10-25]
http://tokuyamad.exblog.jp/14855596/
そして、なぜかきょうはシジミ漁船がたくさん出漁していたそうな・・・・
長良川は河口堰のすぐ下流で揖斐川に合流してから伊勢湾に注ぎます。 揖斐川ではシジミが生きていますから、河口堰のずっと下流で揖斐川の水が意味を持つ場所では漁ができても絶対におかしい、ということはありません。
しかし、大村秀章さん(愛知県知事選に立候補予定)と河村たかしさんが打ちそろって長良川河口堰を見に行く(マスコミがたくさん来る)その日に、ねぇ・・・
9月17日付けの長良川河口堰ゲート開放に関する公開質問・意見書に対する「回答」も超がつくほどヘンです。
「12月20日に回答する」と16日に連絡してくる・・・一体どういうこと?
(回答がまともな回答になっていないことはきょうの事態でほぼ分かった)。
100917公開質問・意見書 本文
http://www.tokuyamadam-chushi.net/umizukuri/100917koukai1.pdf
100917公開質問・意見書 資料
http://www.tokuyamadam-chushi.net/umizukuri/100917koukai2.pdf
長良川河口堰ゲート開放に向けた公開質問・意見書提出 [2010-09-21]
http://tokuyamad.exblog.jp/14637873/
2月6日に愛知県知事選の投開票があることは決まっています。名古屋市議会のリコール住民投票もこの非でしょう。そして河村たかし名古屋市長は「辞任して再度立候補する」と言っているので、同じ日に名古屋市長選もある可能性が高いです。
愛知県や名古屋市のこうした政治事情と、諫早湾干拓事業ゲート開放という事態に対する国交省のシフトのように感じています。
12月22日に「第1回 木曽川水系連絡導水路事業の関係地方公共団体からなる検討の場(幹事会)」が設定されています。
中部地整報道発表12月17日
木曽川水系連絡導水路事業の検証に係る検討について~「第1回 木曽川水系連絡導水路事業の関係地方公共団体からなる検討の場(幹事会)」の開催~
http://www.cbr.mlit.go.jp/kisya/2010/1223.html
この幹事会の構成メンバーである名古屋市副市長は、前の名古屋市上下水道局長。
徳山ダム事業費増額も、この導水路事業も、事務方トップとして積極的に推進しました。特に「摩訶不思議な上流分割案」で長良川河口堰中流部取水に布、石を置こうとした「主力メンバー/確信犯」であると聞いています。
「選挙」があり、トップである首長の意思が不明確なうちに、「行政の継続性」で既成事実を固めるってかい?
長良川河口堰ゲート開放、導水路事業の「検討」。
設楽ダムの「検討」。
長良川上・中流部(指定区間)の洪水対策-内ヶ谷ダムの「検討」。
どうやら、私たちはかなり複雑な方程式を解かねばならないようです。
でもこれが解ければ、一気に河川行政の流れを変えることもできるのかもしれません。
たかだか15年の「負けっぱなし」では、まだくじけたりはしていませんから。
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11月22日の長良川河口堰。