導水路事業も「検討の場」 |
12月22日午後に
「第1回 木曽川水系連絡導水路事業の関係地方公共団体からなる検討の場 幹事会」が開催された。
午前中には新丸山ダムの「検討の場」も開催さている。
2010.12.23中日新聞岐阜県版記事
12月22日「検討の場 幹事会」の資料は水資源機構中部支社のHPにも、
http://www.water.go.jp/chubu/chubu/kensho/@01_101222/index.htm
国土交通省中部地方整備整備局河川部にも
http://www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/dam_kentou/kisogawa.htm
載っているが、問い合わせ先は
水資源機構中部支社 総務課 電話番号 052-231-7541
である。
しかし説明役はカンペキに国土交通省中部地方整備整備局河川部だった。
資料の中身について水資源機構中部支社に聞いても「分かるはずない(回答する権限がない)」のに、それでも問い合わせ先が水資源機構中部支社となっているのは、会場費や事務費、もし出席者に謝金などが出る場合にはその費用も、水資源機構の「事業費」から支出されるからである。
徳山ダム建設事業審議委員会(徳山ダム審)の第1回会議があったのは、ちょうど15年前の1995年12月20日。この徳山ダム審も全面的に建設省中部地建河川部が仕切っていたが、費用は水資源開発公団の「徳山ダム建設事業費」から出されていた。
いろいろな意味でデジャヴでありすぎて、ついつい会場の写真を撮るのを忘れてしまった。
この「検討の場」はいろいろな意味で「想定内」でありすぎて、興奮のようなものはなかった。いくらか書き出すと以下のようなこと。
◇ ◇
<岐阜県>
(1) 「徳山村の犠牲」
「466世帯、1500人の方々にダムを受け入れて貰った。この方々の犠牲があって徳山ダムは作られた。この方々の気持ちからすれば、徳山ダムの水を有効に使ってほしい。早く導水路を建設してほしい」
私たちに徳山村の方々の代弁をする資格がない以上に、岐阜県のお役人に徳山村の方々の気持ちを代弁する資格なんてない!
「山林公有地化」が進まないのも、徳山村の方々が、岐阜県及び水機構・国交省に対して根底的な不信感もっているからではないか!!!
そして岐阜県は「愛知県や名古屋市は、早く徳山ダムの開発水を使うべきだ」と言えた義理か?
岐阜県こそ、「水の使い先」を行方不明にさせている張本人そのもの。
ホントに必要なら、他県と相談しなければならない長大な導水路事業などなしで、供給予定地(大垣地域!)で使うことができるはずなのに。
岐阜県が「大垣地域に必要だ」として(大垣地域の水道事業者ときちんと相談もせずに)確保した1.2m3/Sの水道水と1.4m3/Sの工業用水を使う当ては微塵もない。全くもって「要らない水」だから、取水・導水・浄水施設計画の一片だになく、一般会計から償還している(異常事態!)。
もしかすると、河川課の一般会計から利水償還をしているので、「岐阜県は徳山ダムの利水者ではない、払っているのは治水のお金」だと勘違いしているのか????
もし「払っているのは治水のお金」としてごまかすつもりなら、1/3の厚労省補助と30%の経産省補助は「詐取」になってしまう。
県土整備部長(この人はずっと河川畑で来た人。当然徳山ダムの経緯は知っている)が、こんな無責任な(馬鹿げた)発言ができてしまうのは、一体誰の所為なのだろう?
(2)「中・東濃地域の利水安全度向上」
上記のように、岐阜県の計画では徳山ダムの水は「大垣地域」に供給するとなっていて、今回の木曽川水系連絡導水路事業には利水者としては参加していない。
木曽川水系連絡導水路事業の「異常渇水時の緊急水補給」はあくまでも河川環境の改善のためであって「『計画上は』一滴たりとも水道水になることはない」(=中部地整河川部)のである。
「東濃・可茂用水の利水安全度が向上する」と岐阜県議会には説明している。聞けば、訳の分からない(こじつけに近い)理屈-河川課長が「確かにわかりにくい」と認めるようなもの-。
ところが、岐阜県の議会への説明はその理屈もなくて、まるで木曽川水系連絡導水路事業の目的・効果に「東濃・可茂用水の利水安全度が向上する」とあるかのようだ。
そして中部地整河川部はそれをあえて否定はしない。「…・水系総合運用ができれば渇水時の取水制限は大幅に減る」。
「計画上はない」が「~たら、~れば」の幾つもの条件が満たされれば平六渇水のような異常渇水時にも暖水を回避できる、というのだ。
「~たら、~れば」の世界なら、「木曽川の利水・治水の新しいルール作り」のほうがよほど現実的かつ合理的である。
「計画上は一滴も水道水になることはない」異常渇水対策に890億円×65.5%もの巨費を投じて生態系攪乱(大破壊)を行うことになるハード対応するのではなく、「木曽川の水をできるだけ公平に分け合う」ルール作りを急ぐべきだ。
◇ ◇
<愛知県>
「徳山ダムが出来ちゃったからには」の全面展開。大まじめに「できちゃった導水路」論を強調している。
「徳山ダムの水を使うことを前提に徳山ダム事業に参加した」… はいはい、その通り。「徳山ダム事業と導水路事業は一体のものだ」 … それは愛知県さんのご主張。
2003年~2004年にかけての徳山ダム事業費大幅増額のときに、私たちはあえてリスクを冒して問いました。「徳山ダムの水を木曽川まで引く導水路を建設しない限り、利水者としての愛知県・名古屋市は一滴の水も使えないし、異常渇水時の木曽川の環境改善なるものにも使えない。その事業の目処もないままに徳山ダム建設事業を進めても良いのか?」と。
「徳山ダムに係る導水路事業」については白紙のまま、つまり別事業としたまま、愛知県も徳山ダム事業費増額に乗ったのではありませんか!
そのときにはすでに「利水者単独意思での利水からの撤退」についてのルール(水資源機構法施行令)はできていたのですからね。愛知県は「騙されてしまった善意の利水者」ではない。
「仮に導水路事業が中止となったら、徳山ダム事業費は返還して貰えるのか?」
これには、傍聴席から失笑が漏れた。
まさに「だから言ったじゃないの、2003年に!」。
「導水路は速やかに完成させてほしい。徳山ダムが完成し、その水を使うための導水路が必要だ、とうのは『予断』ではなく『与件』だ」。ナルホド、既成事実は即ち「与件」。
徳山ダム審の”見直し”は「徳山村が廃村になり、全戸が移転した」という与件の下で行われ、徳山ダム事業費増額のときは「本体(堤体)盛り立てが始まった」という与件の下で行わた。
既成事実を「与件」と言うなら、およそすべてのダム計画は「(作る方向での)与件」が存在する。
「徳山ダムが完成したのに、その水を使うための導水路はつくらないなんてことはありえないはずだ。徳山ダムは全く無意味なダムになってしまう」と息巻く愛知県に対して、中部地整河川部(我らがしごいて育てたS氏)はツルっとおっしゃった。
「徳山ダムは、揖斐川の洪水調節及び流水の正常な機能の維持という形で、すでにその機能と効果を発現しています。また、発電所も建設中でございます。徳山ダムはそれ自体として無意味ということはありません。この導水路事業は徳山ダム本体とは一応別事業でございます。」
弥富に住んでいるというある市の副市長さん曰く「私の周囲の住民は、とにかく水が来ないのは困る。断水が回避されるなら、どんなに水道料が上がっても良いと言っている」
「どんなに上がっても」などと考えているはずがない。たとえば「1m3あたり2000円の水道料金にします」などという議案が議会で通るはずがないでしょうに。
しかも異常渇水対策(『計画上は』一滴も水道水になることはない)は税金でっせ。
◇ ◇
<三重県>
「平六渇水のときにはシジミが多く死んで水産業に被害が出たから、導水路を作って異常渇水時の緊急水を確保してほしい」
平六渇水のときにシジミが大量死したことと、木曽川大堰の流量との科学的因果関係は全く証明されていない。三重県のシジミの専門家の方がおっしゃっていましたよ-「河川整備基本方針の資料に載っている木曽川大堰の流量とシジミの生息に何か関係があるかのようなこのグラフには何の科学的根拠もない」と。
◇ ◇
<名古屋市>
市長が何を言おうが聞いていない名古屋市上下水道局だが、さすがに名古屋市長選を控えて慎重なモノイイ。
石田芳弘さんも「導水路は要らない」という持論なのだから、どちらが当選しても『名古屋市は導水路を推進する』とはいえない。
「検討の場 幹事会」資料2のP24とP25は「意味深」である。
◇ ◇
大垣駅前通りに柿の実がなっている。「大垣」は「大柿」に由来するとも言われている。