長良川河口堰フラッシュ操作と「塩害」論/スリカエ?? |
きょう3月15日(火)、 中部地方ダム等管理フォローアップ委員会「第1回長良川河口堰の更なる弾力的な運用に関するモニタリング部会」 が開催された。
水資源機構中部支社HP>2011.03.08 「長良川河口堰の更なる弾力的運用に関するモニタリング部会」部会設置と第1回部会の開催について(記者発表)
http://www.water.go.jp/chubu/chubu/20110308%20nagara%20danryoku%20.pdf
きょうの資料は、明日15日には、水資源機構中部支社HPに載るはず。
http://www.water.go.jp/chubu/chubu/index.html
昨年8月の 中部地方ダム等管理フォローアップ委員会(H22年度第1回)から、ずっと「アンダーフローのフラッシュ操作回数を増やす/基準となるDO値を6から7.5に上げる」話をしていた。岐阜県には以前から岐阜県設置の「長良川河口堰調査検討会」なるものがあったが、河口堰のある三重県にはない・・・・で、3月2日に「長良川河口堰の更なる弾力的な運用に関する意見交換」なるものを開催した(事務局:中部地整&水資源機構中部支社)。
学識者や流域の皆様方のご意見をお聴きして(あるいは要望にお応えして)「 長良川の河川環境の保全を目的としてアンダーフローのフラッシュ操作回数を増やす」ということにしたかったらしいのだが、「それは素晴らしい、大いにやって欲しい」という意見はほとんど聞かれない。
”流域の住民のご意見”は、たとえば「汽水域を復活させて欲しい」とか「せめてアユの遡上・降下時期にゲートを上げて欲しい」とか、逆に「塩水遡上が心配だから洪水時以外はゲートを上げるな」といったもので、アンダーフローのフラッシュ操作回数を増やして欲しい、というようなものではない。
学識者からは「堰上流のDO値(溶存酸素量)を上げることが河川環境、特に生物環境改善とどう結びつくのか?それをどのように見て行こうとするのかが明らかでない」「フラッシュ操作の前後比較で数値が良くなったとしても、またすぐに数値は戻ってしまう。平均値が改善されるから良い、ということか?」「堰下流への影響については、もっと詳細にシミュレーションをし、かつデータをとる地点もきめ細かくして欲しい」とか、疑問や注文が出された。
・・・・・つまりは、何のために何のためにアンダーフローのフラッシュ操作回数を増やすのか、は「来年度からアンダーフローのフラッシュ操作回数を増やします」と公表してから半年経つ今でも明らかでもなく、説得的でもないのだ。
ではなぜ、かくも大々的に鳴り物入りでこんなことをやるのか?
ずばり「長良川河口堰の開門要求をかわすため(=議論のスリカエ)」と私は感じている。
このフラッシュ操作のキモは「塩水は絶対に堰上流に入れない」ことにあるようだ。
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長良川河口堰はもともと水資源開発施設である。水需要の伸びがなくなった1980年代に入って、まだ着工できなかった・・・だから全国に名を馳せた「難産」事業となってしまった。
「洪水を安全に流下させるためには浚渫が必要だ。浚渫すると塩水が上流まで遡上し煙害が起こる可能性がある。だから塩水を止めるための堰が要る」というややこしい河口堰治水論は、後付け屁理屈の類である。
河口堰本格運用から15年。浚渫箇所の河床はほとんど元の高さになってしまった。だが2004年洪水では、8000m3/Sが流下した。建設時の理屈では流下しきれない(※)はずの量なのに。
※ 1976年の4山洪水の4山目の、最も高い粗度係数を使って計算したかららしい-伝聞-
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「長良川河口堰のゲートは上げられない、塩水を遡上させてはならないから」と国交省&水資源機構は言う。
淡水化することで取水している都市用水の「代替」は全く心配ない。そもそも不要な水源施設なのだから。水源施設としての「長良川河口堰は要らない」。
ここは富樫幸一さんの論文が詳しい。
長良川河口堰をめぐる利水構造の実態とゲートの開放
(勝手にリンク。PDFファイルhttp://133.66.107.159/jichiken2010-ktogashi.pdf)。
「問題」があるとしたら、愛知県・名古屋市・三重県が水の使用権のために払ってしまった(あるいは償還中の)お金を負担した者がどう考えるか、ということだけだ。
警告付きの間違った投資に投資した・・・・それを「返せ」とか言ってもしょうがない。「これ以上の損を発生させないためにスッパリ諦める(不良債権として処理する)」しかないだろう。
3月2日の「長良川河口堰の更なる弾力的な運用に関する意見交換」資料
長良川河口堰の上流に塩水が侵入したことによる影響額の試算http://www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/dam_followup/pdf/nagaragawa_ikenkoukan02...pdf
を見ると、「影響額=約2700億円」はもっぱら都市用水だけの話だ。上述のように、都市用水のためなら「長良川河口堰は要らない」。この「試算」は前提がおかしい、話にならない。
河口堰建設のときに大問題として論争になっていたのは、農業における塩害(水田耕作障害)だったはずだ。これを蒸し返して主張するのかと思ったけど????
資料の”問い合わせ先”に、「都市用水のことだけを問題にして農業についてはひとこともふれていないのは、農業に『塩害』について、そちらには問題意識はすでに存在ない、という理解で良いのですね?私の理解が違っていたらご連絡下さい」と念押ししておいた(※ → 追記)。
河口堰建設に伴って、長良川下流両岸の水田にはあれこれとかなりの対策を施したと聴く(やたらに高価な「対策」だったそうだ、「芸者接待」付きの・・・)。どうやらその対策のおかげで、もう農地の塩害は問題にならない、ということのようだ。
しかし、下流域の首長は今でも「農業の塩害が心配だ(からゲートを上げるな)」と言う。
これも国交省&水資源機構による議論のスリカエなのだろう。
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城下町大垣は、交通の要衝でもあった。
「江戸道/京みち」とある路標(石造り)は、近くにいくつも見られる。
これは船町の公園(「奥の細道むすびの地」)のもの。
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※ 3月16日追記。
17時30分すぎに水資源機構中部支社総務からケイタイに電話があった。
(1)「長良川河口堰の上流に塩水が侵入したことによる影響額の試算」は3月2日の配付資料にはなかった。「冒頭挨拶」で「約2700億円」という数字を口にし、マスコミ等から説明を求められたので、翌日か翌々日にアップした。「挨拶」時点までに、内部的には存在していた資料だ。
(2)農業の塩害について全く考えていないわけではない。が、今は影響額を示すような資料はない。