沙流川水害訴訟 札幌地裁判決 |
4月28日、札幌地方裁判所は、2003年8月の沙流川支流の水害に関して河川管理者・国(国土交通省北海道開発局)の責任を認め、原告住民に約3200万円を支払うよう命じました。
例の「大東水害訴訟最高裁判決」以来、ごく例外的な場合を除いて、水害訴訟はことごとく住民が敗訴しています。これは河川管理者に賠償責任を認めた珍しい判決です。
「開建(=北海道開発局室蘭開発建設部)は、水が本流から支流に逆流する現象で洪水が起きる恐れがあったにもかかわらず、富川地区の支流と本流を隔てる水門を開けたまま担当の職員を避難させた」
くだんの水門(コンカン川樋門)。
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☆ 中日新聞(共同)2011年4月28日 13時32分
台風水害で国に3千万円賠償命令 札幌地裁
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011042801000625.html
2003年8月の台風10号で北海道日高町の沙流川支流があふれ、家屋が浸水した周辺住民らが、河川を管理する国に計約9千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁(橋詰均裁判長)は28日、計約3100万円を支払うよう命じた。
満水に近づいたダムの水を放流した際に、下流に位置する支流の水門を閉めなかったことが適切だったかどうかが争点。
住民側は「放流した水が支流に逆流し、あふれることが予想できたのに閉門を怠った」と主張。国側は「予想は困難。支流の水位も上昇しており、閉門せず操作員を避難させた判断は合理的」とし、請求棄却を求めた。
台風10号は03年8月9日から10日にかけて北海道東部を通過し、国土交通省北海道開発局は10日未明、大雨で水位が上がった沙流川上流の二風谷ダムから放流。数時間後に支流があふれ、付近の家屋などが浸水した。
☆ 北海道新聞ウェブ(04/28 15:20)
沙流川水害で3千200万円賠償命令 開建の過失認定 札幌地裁判決http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/289181.html
2003年の台風10号による豪雨で、日高管内日高町の沙流川下流の富川地区が洪水被害を受けたのは、室蘭開建の河川管理に過失があったためだとして、同地区の牧場経営者ら住民8人と1法人が国に総額約9300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、札幌地裁であった。橋詰均裁判長は「開建が判断を誤らなければ洪水被害の拡大を防げた」として、計約3200万円の支払いを命じた。
判決によると、室蘭開建は03年8月10日未明、台風10号の豪雨で沙流川上流の二風谷ダムが満水に近づいたためダムの水を放出し、これにより沙流川が増水した。開建は、水が本流から支流に逆流する現象で洪水が起きる恐れがあったにもかかわらず、富川地区の支流と本流を隔てる水門を開けたまま担当の職員を避難させた。
このため、支流の氾濫が拡大して富川地区の約55ヘクタールが冠水し、床上浸水や繁殖用の競走馬が負傷するなどの被害が出た。
☆ NHK(北海道)ニュース 04月28日 18時30分
門別地区水害 国に賠償命令
http://www.nhk.or.jp/lnews/sapporo/7003099201.html
平成15年の台風の際、日高町門別地区で川がはん濫して被害が出たのは、水門を閉めなかったためだとして、住民が国に賠償を求めていた裁判で、札幌地方裁判所は「水門を閉めれば浸水は防げた」として、国に3000万円余りの支払いを命じました。
日高町門別地区は、平成15年8月、台風10号の大雨で沙流川の支流が氾濫して住宅10棟が床上まで浸水し、牧場や畑55ヘクタールが水につかりました。
付近の住民10人が、上流のダムで大量に放水したのに、沙流川と支流の間にある水門を閉めなかったため、支流が氾濫したとして、水門を管理する国に対し、およそ1億円の賠償を求めていました。28日の判決で札幌地裁の橋詰均裁判長は「作業員の避難が早すぎた。もう少しとどまらせて水門を閉めさせれば浸水は防げた」として、原告10人のうち9人の被害で国の判断ミスがあったとして、あわせて3190万円を支払うよう命じました。
判決のあとの会見で、原告の1人、矢野勇さん(63)は「おかげさまで勝つことができました。これから雨が降っても安心して暮らせるよう、きちんと管理してほしいと」と話していました。
北海道開発局は「主張が認められず残念だ。判決を検討して控訴するかどうかを決めたい」というコメントを出しました。
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国交省、それも北海道開発局のことだから控訴するんだろうなぁ・・・。
開建(=北海道開発局室蘭開発建設部)が、富川地区の支流と本流を隔てる水門を開けたまま、しかも鍵をかけて動かせない(閉められない)ようにしたまま、担当の職員に避難の命令を出した、という事実は明らかで、変えようもないのだけど。
昨年10月のこの地区での見聞録といくつかのサイトのリンクは以下に。
弊ブログ
北海道ダメ・ダム見学珍道中-9 [2010-10-31]
-沙流川を下って-
http://tokuyamad.exblog.jp/14892678/
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【4月29日 補足】
☆ 毎日新聞 2011年4月29日
沙流川水害、国に3190万円賠償命令 札幌地裁「水門閉じず被害拡大」
http://mainichi.jp/hokkaido/news/20110429hog00m040004000c.html
(写真)判決後の会見で「雨が降っても安心して家にいられるようにしてほしい」と安全対策を訴える原告団代表の矢野さん(左)
03年の台風10号による豪雨災害で、北海道門別町(現日高町)富川地区の住民らが国に約9000万円の損害賠償を求めた沙流川(さるがわ)水害訴訟で、札幌地裁は28日、北海道開発局職員が水門を閉じていれば被害拡大を防げたとして、国に計約3190万円の支払いを命じた。橋詰均裁判長は「水門を閉じずに職員を退避させたのは誤りだった」と指摘した。
03年8月10日未明、道開発局が沙流川上流にある二風谷(にぶたに)ダムが大雨で決壊しそうになったため、ダムの水を放流。その結果、沙流川下流の支流で逆流が起き、富川地区の55ヘクタールが冠水。床上浸水などの被害をもたらした。原告側は「支流の3カ所の堤防にある水門を閉じないままダムを放水したのが被害の原因」と主張していた。
判決は、水門の操作員が住民への避難勧告より約50分早く退避していた点について「先に退避させるだけの理由はなかった」と指摘。「逆流は予見できなかった」とする国側の主張は「放水で確実に水位が上がることが分かっており、予測可能だった」と退けた。
一方、水門を閉めていても浸水は起こっていたとして、賠償額は逆流で被害が拡大した分だけを認め、原告1人の請求は退けた。
二風谷ダムは計画当初、工業用水供給が目的だったが、後に洪水調整を中心とした多目的ダムとして着工され、94年に完成。建設に伴ってアイヌの聖地が水没し「アイヌ文化への配慮を怠ったダム建設は違法」との札幌地裁判決(97年3月)が確定している。
田中文雄弁護団長は「国の判断を違法と明言した素晴らしい判決だ」と評価。道開発局の高松泰局長は「主張が認められず残念。判決全文を検討して控訴するか決定したい」とコメントを出した。【金子淳】
◇二風谷ダム
平取町の沙流川上流にある多目的ダムで、堤高31・5メートル、総貯水量3150万トン。用地の地権者だったアイヌ民族初の参院議員、萱野茂氏(06年に死去)らが用地収用裁決の取り消しを求めて起こした訴訟で、札幌地裁はダム建設の違法性を認めたが、既に完成していたため使用は継続された。約20キロ上流にある支流では平取ダムの建設計画があるが、民主党政権が凍結を表明し、事業の必要性の検証が始まっている。
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