「検証」対象事業と今年度予算(1) |
何のかんのといってもとにかく予算がつかなければ事業は進まない。ダメ事業を止めるには「カネ」を絞ることは大事。
木曽川水系連絡導水路事業は2009年度に末に「凍結」となったが、それは「本体工事予算は(前からの積み残しも)執行しない、新たに本体工事予算はつけない」ということであって、予算がゼロになったわけではない。2010年度には5億円。今年度(2011年度)は3億5000万円ついている。
「ぼったくりバーだ」という批判を受けて、2010年度から、「業務取扱費」については、関係都道府県から直轄負担金(*)を徴収していない。
* 国の河川事業(治水分)について、関係都道府県が国から賦課されるもの。河川法第60条を法的根拠とする。利水分の負担とは法的根拠や負担割合が異なる。
参照 弊ブログ
導水路事業「業務取扱費」 ~ 2億2200万円 ~ [2011-04-18 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/15835623/
◇ ◇
で、「検証」対象事業のうち直轄事業25と水資源機構事業5について今年度当初予算がどうなっているかを調べてみた。
エクセル入力はできていないので、一覧表はまだ作成できていない。
調べていて気づいたことをいくつか。
◆ 「検証結果を待つのみ」の事業でも、毎年何億円も使われていく
木曽川水系連絡導水路事業が一つの典型だが、ほとんどは「検証結果が出るまでは予算はつく」。
「予断無く検証する」という一方、かの「要領細目」では、「コストの評価に当たり、実施中の事業については、残事業費を基本とする」としている(「要領細目」p14)。
ダム事業の検証に係る検討に関する再評価実施要領細目(PDF 406 KB)
http://www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/dam_kentou/pdf/dam_kentou_saimoku.pdf
「再検証」している間にも事業費は使われ、残事業費は減っていくというわけだ。こんなのは「予断なく比較する」ことになるだろうか?ハナから「ダム事業の残事業費のほうが安いですよ」というための茶番になっていないか?
(それでもダム事業費が結構高いのもある。「やってはいけない事業」である。こういう事業がこれまで生き残ってきたということは、今回の「再検証」の法令上の根拠である「行政機関が行う政策の評価に関する法律」の趣旨がこれまで活かされていない、事実上のザル方であったことの証明みたいなもの)
◆ 「業務取扱費」が費消される 用地買収などの段階に入っていない事業-ほとんど何もやっていない事業-でも、「業務取扱費(**)」がおよそ1.5億円~3億円程度ついている。
**業務取扱費:事業を実施するために必要となる現場事務所等の人件費、事務費等
つまり「計画が存在する限り、役所費用=人件費や事務費は使われ続ける」というわけである。
私は「人事院勧告制度を押しつぶして公務員の給料の一律カット」などということには大反対だ。1980年代の「国労潰し」の結果は、労働基本権の骨抜き、低賃金の使い捨て労働者の激増であるj。つまりより弱い立場の労働者に痛みを強いることになってしまっている。
しかし、どう考えてムダな事業に予算をつけ続けること-「役所(役人)の、役所(役人)による、役所(役人)のための予算」は即刻やめて欲しい。(このことについては「闘う労働組合」であるはずの全建労も真剣に考えて欲しい、そうでないと組合員を守れない)
◆ もう「やる気がない」事業も検証対象?? さっさと正式中止に
他方、小数ながらもう何年も「予算ゼロ」の事業もある。
例えば中部地整(天竜川水系三峰川)戸草ダム。
ダム事業の名前は残っているが、ここ何年も予算はゼロなのだそうだ。
天竜川水系河川整備計画策定(2009年7月策定)の際、
天竜川水系河川整備計画(原案)
http://www.cbr.mlit.go.jp/hamamatsu/kasen_seibi/pdf/genan.pdfに(河川管理者が)「戸草ダム」を入れなかったら、
第6回天竜川流域委員会(平成20年7月11日開催)
http://www.cbr.mlit.go.jp/hamamatsu/kasen_seibi/top/20080711.html
で文句が出て、修正して
第7回天竜川流域委員会(平成20年7月25日開催)
http://www.cbr.mlit.go.jp/hamamatsu/kasen_seibi/top/20080725.htmlで
「 なお、戸草ダムについては、今後の社会経済情勢等の変化に合わせ、建設実施時期を検討する。」という文言を入れることにしたのだそうだ。
「名前だけ入れる、今後20年~30年の間には着手しそうもない」ダム名を入れることは(ダム利権を期待する向きにさえ)有害無益でしかない。
天竜川流域委員会は、「ダム名が入らないと文句が出、とりあえず『戸草ダム』という名称が入ればおとなしくなる」というレベルの流域委員会だった、ということらしい。
中部地整管内のあちこちの流域委員会の委員長を務めたかの名古屋大学大学院のT教授もこの流域委員会のメンバーだったのだけど(***)
*** このT先生は淀川水系流域委員会を指して「どこぞの要領の悪い流域委員会」と口にするほどに「はっきりモノを言う人」なのだから、この天竜川流域委員会の「原案→案」の低レベルの議論には、はっきりと「名前だけ入れても無意味。むしろダム頼みが払拭できなくて有害」と言っても良かったはず。・・・これだから”学識経験者というのは・・・
天竜川水系河川整備計画(案) 3-5
http://www.cbr.mlit.go.jp/hamamatsu/kasen_seibi/pdf/keikaku_an.pdf
天竜川水系河川整備計画 3-5
http://www.cbr.mlit.go.jp/hamamatsu/kasen_seibi/pdf/0908tenryuseibi-1-keikaku.pdf
ちなみに「バイブル」「不動の詳細マニュアル」になってしまっている「要領細目」でも、p33「第5 その他」で
「2 社会情勢の変化等により、検証主体自らが検証対象ダムを中止する方向性で考えている場合には、検証に要する時間、費用等を軽減する観点から、利水者等の関係者との合意形成状況に応じて、中止の方向性及びそのような考えに至った理由を明らかにした上で、必ずしも本細目で示す詳細な検討によらずとも、従来からの手法等によって検討を行うことができる。」
としている。
天竜川水系河川整備計画では、戸草ダムは「定量的に」位置づけられてはいない。(ホントに河川整備計画全文の中で上記の「 なお、戸草ダムについては、今後の社会経済情勢等の変化に合わせ、建設実施時期を検討する。」という文言があるだけ。)
こんなダムまで「検証対象」にして「中止となったダムもあります」と数を稼ぎたいのかな?
「(中止の)数を稼ぐ」レベルでも良いから、さっさと正式中止にして欲しい、こういう名ばかり建設予定ダムが幾つもある限り、「ダムに頼らない-真に流域住民を守る-治水」への転換が遅れるばかりだから。
◇ ◇
