愛知県 長良川河口堰検証第1回PT会議と公開ヒアリングの開催 |
6月8日、長良川河口堰検証第1回プロジェクトチーム会議PT&公開ヒアリングが開催された。
☆ 長良川河口堰検証プロジェクトチーム メンバー
小島敏郎 青山学院大学国際政治経済学部教授 愛知県政策顧問
蔵治光一郎 東京大学愛知演習林長・准教授
辻本哲郎 名古屋大学大学院工学研究科教授
松尾直規 中部大学工学部長
村上哲生 名古屋女子大学家政学部教授
☆ 6月8日のヒアリング対象者
竹村公太郎 (財)リバーフロント整備センター理事長
富樫幸一 岐阜大学地域科学部教授
田中豊穂 中京大学体育学部教授
当日、傍聴席はほぼ一杯だった。配布された資料はまだHPにアップされていないようである。(検索しても出てこない)
ヒアリング前に挨拶する大村秀章愛知県知事。右隣は河村たかし名古屋市長。
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報道から
★ 中日新聞(愛知県版)2011年6月9日
長良川河口堰の開門検証 有識者会議初会合、費用対効果を重視
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20110609/CK2011060902000103.html
【写真】長良川河口堰の開門をめぐる公開ヒアリングに出席し意見を聞く(手前右から)大村知事と河村名古屋市長=県庁で
長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)の開門をめぐり、愛知県独自の検証作業が始まった。8日、初会合を開いた有識者会議は9月をめどに報告書をまとめる予定だ。県は水道用や工業用で最大の利水権を持つだけに、議論の行方によっては、国の判断にも大きな影響を及ぼすとみられる。
河口堰は治水と利水の機能があり、県に関係するのは利水。水量は最大で毎秒22・5立方メートルの能力を持つが、水余りの県内で水が使われているのは水道水用の同2・86立方メートルだけ。県の工業用水と名古屋市の水道用水は取水口や導水路もなく、1995年の本格運用開始後、一滴も使われていない。
一方で、県は最大の利水権を持つとして、3県1市のうち、治水分を負担する岐阜県に次ぐ467億円の建設費を負担している。運用開始後も維持管理費を毎年払い続け、水資源機構によると、これまでに61億円を支出。2011年度も2億8000万円の予算を計上した。
環境派の市民団体などからは環境面だけでなく「水を使っていないのに巨額な税金を払い続けることはおかしい」として、堰の運用に反対する意見が出ている。県の有識者会議も開門時の生態系への影響にとどまらず、治水効果の変化や資金負担が利水に見合うかどうかなども検証する考え。
県が利水を返上した場合、資金計画の枠組みが崩れるだけに、他の自治体への影響は必至。運用が困難になり、国や水資源機構に開門を求める圧力が強まるのは確実だ。
大村秀章知事は「愛知は最大の利害関係者で、これまでの費用対効果を検証する。水も利用されておらず、運用の在り方を議論していく」と話した。会議に出席した河村たかし名古屋市長は「開門時の課題を挙げ、その対策があるならば開門の調査をすべきだ」と述べた。
公開ヒアリングでは、元国土交通省河川局長の竹村公太郎さんが河口堰の運用を維持する立場で、中京大の田中豊穂教授(衛生学)と岐阜大の富樫幸一教授(地理学)がゲート開放を促す立場でそれぞれ意見を述べた。 (藤沢有哉)
【長良川河口堰】 河口から5.4キロ地点の三重県桑名市に水資源開発公団(現・水資源機構)が1493億円かけて建設。1995年7月6日に全ゲートを閉め、本格運用を始めた。治水と塩害防止、利水が目的。
★ 毎日新聞 2011年6月9日
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前打ち記事に以下のようなものがあった。
★ 読売新聞(2011年6月6日)
長良川河口堰 運用16年 「大村流」開門が一石 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/110606_1.htm
<国や他の自治体 冷ややか 8日公開ヒアリング>
長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)のゲートの全開に意欲を見せ、開門に伴う影響調査を公約に掲げていた愛知県の大村秀章知事が、県独自の検証を打ち出したことで、河口堰の運用開始から16年を経て、事業のあり方が改めて問われることになった。8日には県の検証チームが初会合を開き、専門家による公開ヒアリングも行われるが、事業にかかわる国や他の自治体の反応は冷ややかだ。
「約1500億円の総事業費のうち、500億円近くを負担する愛知は、最大のステークホルダー(利害関係者)。課題や論点を整理して、河口堰のより良い運用を目指す」。大村知事は先月30日の定例記者会見で、検証の意義を強調した。
ダムを持たない長良川で洪水対策と、水道用水・工業用水を供給する役割を担う河口堰は、「環境破壊」などとの批判が渦巻く中、1995年に運用が始まった。
管理主体の水資源機構は、シジミ、サツキマスなどの水生生物の生息環境や、水質を調べて結果を公表するなど、環境の維持・改善に向けた取り組みを続けている。今年4月からは、水質の状況などに応じてよりきめ細かくゲート操作を行う「更なる弾力的な運用」も始まったが、河口堰の水が一部しか使われていない状況に、無駄な事業の「典型」とも言われ続けている。
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長良川河口堰をめぐる主な経過
1968年10月 木曽川水系水資源開発基本計画を決定
76年9月 台風17号により岐阜県安八町で破堤(安八水害)
78年9月 岐阜県知事が着工に同意
88年2月 流域の全漁協が着工に同意
3月 堰本体工事に着手
90年12月 北川石松・環境庁長官(当時)が建設に疑義を唱える
95年7月 全ゲートの運用を開始
98年4月 愛知県の知多半島、三重県中勢地域への取水開始
2011年4月 更なる弾力的な運用を開始
6月 愛知県による独自の検証作業がスタート
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検証は、大村知事が河村たかし名古屋市長とともに2月の知事選・市長選で共同公約に掲げた「開門調査」に向けた第一歩で、ゲートを全開にする可能性を探る。検証チームは今後、推進、反対派の双方が意見を述べる公開ヒアリングなどを通して検討、年度内にも報告書をまとめる方針だ。
こうした愛知県の動きに、建設反対を長年訴え、運用開始後は開門を強く求めてきた「長良川河口堰建設に反対する会」の高木久司代表は、「水余りのうえ、上流は堰のためにヘドロがたまって洪水対策になっていない」と話し、「これまでも様々な検討が行われたが、結局、事業を後押ししただけ。ようやくきちんとした議論ができる」と、今後の展開に期待を寄せている。
しかし、愛知県議会の一部からは、「河口堰を使わないのであれば、堤防をかさ上げするなど、新たな洪水対策も必要で、事業見直しは簡単な話じゃない。知事と名古屋市長によるパフォーマンスだ」と早くも批判の声が上がる。
河口堰のある三重県の土地・資源室も、「もし開門すれば、海水が上流に遡り、水が使えなくなる。淡水化にも時間がかかる」と危惧。岐阜県河川課は「大村知事の公約にあること以外、愛知からは何の説明も受けていない」と困惑し、当面、静観する構えを見せている。
また、国土交通省中部地方整備局は今年3月、ゲートを全開にすれば、堰上流の水に海水が混ざるため、水道水などに使えなくなり、この影響による被害は1か月当たり約2700億円に上るという試算を初めて発表。同整備局河川部の担当者は、「仮に愛知県が何かを主張しても、事業に関わる他自治体との合意が得られなければ、何も変わらない」と知事の手法に疑問を投げかけている。
【長良川河口堰】
河口から5.4キロ上流に設置した可動堰で、総事業費は1493億円。総延長は661メートル(可動部は555メートル)。洪水対策で川底を掘り下げた際、塩水がより上流に遡るのを食い止める役割を担ったほか、淡水化した上流の水は愛知、三重県と名古屋市が水道・工業用水に利用(最大で毎秒22.5トン)できるが、現在、取水しているのは水道用水として愛知が毎秒約2.9トン、三重が同0.7トンにとどまっている。