諫早湾関門調査、ゲートを全開すると1077億円必要?!? |
いささか旧聞だが、10日、農水省は国営諫早湾干拓事業(諫干)の潮受け堤防排水門の開門調査を5年間にわたり実施した場合の環境影響評価の中間報告を公表した。
ゲートを全開して行う調査だと1077億円を要する、というのである。皮肉っぽくいえば、どこかを同じ広さで干拓できるくらいの巨額な費用である。俄には信じがたい。
裁判所に命じられ、国も受け入れたはずの開門調査をサボタージュするため、とりわけゲートが不要になるような方向の調査をしないためにはじき出された数字ではあるまいか。
8日に行われた愛知県設置の「長良川河口堰検証PT」を意識して、 長良川河口堰開門調査を牽制する(とりわけ汽水域の復活jに繋がる調査を「させない」)という”国の意思”を感じてしまうのは考え過ぎか?
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★ 毎日新聞 2011年6月10日 東京夕刊
諫早湾干拓事業:開門の対策工事費、最大1077億円 環境アセス中間報告
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110610dde001010037000c.html
農林水産省は10日、長崎県の国営諫早湾干拓事業(諫干)の長期開門調査に向けた環境影響評価(アセスメント)の中間報告を公表した。潮受け堤防の二つの排水門を(1)当初から全開(2)段階的に開き、最後は全開(3)部分的な開門--と想定し、さらに(3)を二つに分けた計4方法を検討した。それぞれについて対策工事費を付記したのが特徴で、概算総額を1077億~82億円と見積もった。今後、関係県からの意見聴取などを経た上で修正し、11年度中に正式な評価をまとめる。
農水省は、調整池の水位や流速を制限する(3)を軸に開門に向けた地元協議を行う意向とみられるが、開門推進派から(3)は開門効果が十分でないとして反発が予想される。
(3)について農水省は▽水位をマイナス0・5~同1・2メートルで管理する「(3)-1」▽マイナス1~同1・2メートルとする「(3)-2」に分けて検討。(2)は、「(3)-2」→「(3)-1」の段階を経て全開する。
対策工事費は(1)と(2)がともに1077億円と巨額で、排水門周辺の海底がえぐられるのを防ぐため石を敷く工事費(395億円)が大きい。(3)-1は239億円、(3)-2は82億円と算出した。
いずれの方法でも調整池が塩水化し、農業用に代替水源の確保が必要だが、短期間で工事が可能などとして、深さ300メートルの深井戸を掘って地下水を利用する案を採用した。
漁業への影響は、いずれの方法でも諫早湾内で泥土の堆積(たいせき)などによって、アサリ漁、カキ養殖に影響が出る可能性を指摘した。
一方、自然環境への影響については、潮位、潮流、水質などについて方法ごとに記述。潮位はいずれの方法でも諫早湾、有明海ではほとんど変化が見られないとした。
開門調査を巡っては、3年以内の実施を命じた福岡高裁判決(10年12月)が確定したが、長崎県や干拓地の入植者らが反発し、開門差し止め訴訟に発展している。【佐藤浩】
◇開門訴訟弁護団「巨大過ぎる」
開門訴訟原告弁護団の堀良一弁護士は「段階的な開門方法の対策工事費を1077億円としたのは、巨大に見積もり過ぎで、あきれる。司法判断を受け、開門の義務を負っているのに本気で開門しようという気持ちがあるのだろうか」と批判した。【柳瀬成一郎】
★ 読売新聞 (2011年6月10日11時58分 )
諫早湾の排水門開門、対策費に最大1077億円
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110610-OYT1T00499.htm
長崎県の国営諫早湾干拓事業を巡り、農林水産省は10日、潮受け堤防排水門の開門調査を5年間にわたり実施した場合の環境影響評価の中間報告を公表した。
4種類の開門方法を検証し、いずれのパターンでも干拓地での農業に悪影響が出るとして、対策費用をそれぞれ1077億~82億円と推定した。同省はこの結果をもとに地元自治体と協議し、8月までに開門方法を決めたいとしている。
影響評価は開門方法を〈1〉全開〈2〉段階的に開門して最終的に全開〈3〉開閉の繰り返しなどで海水の流出入量を年50億トンに設定〈4〉開閉の繰り返しなどで流出入量を年10億トンに設定――としてそれぞれ実施。
この結果、いずれのパターンでも、海水が淡水の調整池に流入するため農業用水の利用が困難になると予想され、さらに〈1〉と〈2〉では、調整池から諫早湾内に泥が流出して漁業に悪影響がでるとみられることも分かった。
★ 朝日新聞 2011年6月10日9時46分
諫早開門の事前対策費、最大1千億円 国がアセス素案
http://www.asahi.com/national/update/0610/SEB201106100002.html

【写真】潮受け堤防で仕切られた諫早湾。手前は北部排水門。右上は中央干拓地=5月24日、長崎県諫早市、本社ヘリから、福岡亜純撮影
農林水産省は10日、国営諫早湾干拓事業(長崎県)で長期の開門調査をした場合の環境影響評価(アセスメント)の素案を発表した。湾を閉め切った調整池の水門を全面的に開ければ大量の海水が入れ替わるが、水害や農漁業被害を防ぐ事前対策費は1077億円にのぼる。一方、潮流や水位変動を一定範囲に制限する開門なら対策費は最低82億円で済むものの、海水交換などの効果は限定的なものになる、としている。
国は開門に強く反対して態度を硬化させている長崎県や干拓地農業者らにこれらの対策を示し、説得を進める考えだ。
アセス素案で国が示した開け方は(1)当初から水門を全面的に開ける「全開門」(2)調整池の水位の変動幅を70センチ以内、潮流の速さを毎秒1.6メートル以内に収める「制限開門1」(3)変動幅を20センチ以内、毎秒1メートル以内に収める「制限開門2」――の3通り。さらに、制限開門2、同1を経て最終的に「全開門」に至る「段階開門」も加え、それぞれの影響予測と対策を示した。
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★ 西日本新聞 2011年6月10日 14:18
開門対策82億-1077億円 諫干アセス素案
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/246480
国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防排水門開門問題で、農林水産省は10日、開門調査のための環境影響評価(アセスメント)の結果素案を発表した。検討した3通りの開門方法のいずれでも、アサリの不漁や農地への潮風被害などの悪影響を及ぼす可能性があると指摘。対策には最低で82億円、最大で1077億円かかるとし、調整池に代わる農業用水には比較的安価で短期間に設置できる地下水の利用を提案した。
開門調査実施の期限は2013年12月。農水省は素案を関係者と協議する上での「たたき台」と位置づけており、今後、開門調査に反対している長崎県や営農者との協議を本格化する。8月末の12年度予算概算要求までに対策の中身を詰めたい意向だが、関係者との調整は難航しそうだ。
農水省は当初、農業用水について、河川水と下水処理水の併用案を検討していたが、費用が「百数十億円以上」(同省)かかるため断念。数カ月内に15億円で整備可能な地下水の利用を提起した。調整池周辺に井戸を掘り地下約300メートルから取水することで、地盤沈下をある程度回避できると判断した。
開門方法は(1)最初から排水門を全開(全開門)(2)段階的に排水門を開け、最終的に全開(段階的開門)(3)排水門を操作し調整池の水位変動を抑制(制限開門)-の3通りで、制限開門については、調整池の水位変動幅を70センチと20センチの2種類で想定した。いずれでも諫早湾で濁りが生じ、カキの養殖に影響が出る可能性があるとしたほか、潮流の一部に改善がみられるものの、有明海全体の環境変化には否定的な見解を示した。
特に全開門では潮流が最大で毎秒4-5メートルになり、諫早湾内で漁獲効率が低下。このため、排水門周辺で海底の泥を浚渫(しゅんせつ)し捨て石を設置する工事(395億円)や洪水時に調整池に面した干拓地などから水をくみ出す排水ポンプの設置(478億円)が必要と判断。段階的開門も最終的に全開するため同じ対策が必要で、いずれも1077億円かかると試算した。
制限開門は、排水ポンプの設置が少なくて済み、水位変動幅70センチの場合で対策費239億円にとどまると指摘。水位変動幅が02年の短期開門調査と同じ20センチであれば、農地への塩害の可能性は小さく、家屋の浸水被害も増えないとして、対策費を82億円と見積もった。
★ 長崎新聞 2011年6月11日
諫干アセス中間報告 開門対策1077億円~82億円
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20110611/01.shtml
国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門開門問題で、農林水産省は10日、長期開門調査をした場合に防災や営農などにどう影響するかを予測・評価し、その対策をまとめた環境影響評価(アセスメント)の中間報告を公表した。開門方法別に事業費を1077億円~82億円と試算。潮流や水質などほとんどの評価項目で開門による環境変化の範囲は諫早湾内などに限られ、有明海全体に及ぶものはなかった。
今後は県などに説明し、あらためて開門に理解を求める方針だが、営農者らの強い反発が予想される。
開門方法は、方法書に沿って(1)当初から全開(2)3段階に分けて開く。調整池への海水流入量を徐々に増やし、最終的に全開(3)開閉操作し、調整池の水位や流速を制限して開く-の3ケースを示した上で、2002年の短期開門調査と同じ方法として(3)をさらに制限したケースを追加した。
(1)は島原半島に沿う潮流が速くなるとともに、排水門近くの流れも速くなるため、洗掘(せんくつ=海底が削られる)で海が濁るのを防ぐ護床工を設けなければならず、1077億円に上ると見積もり、(2)も同額とした。(3)は潮流の変化が諫早湾内にとどまる程度で、護床工が必要なく、239億円と積算。(3)をさらに制限したケースは、洪水対策の排水ポンプも不要になるため82億円で済むと見込んだ。
農業をめぐっては、開門で塩水化する調整池の代替水源には地下水を提案。工期が短く、工事費も安価だとして深さ約300メートルの井戸を6地区に新設・改修する。地盤沈下や周辺井戸への影響は、深く掘ることで回避、抑制できるとした。いずれの開門方法でも塩害や潮風害の可能性に触れた。
鹿野道彦農相は、閣議後の会見で「相当しっかりと調査した」と強調。最大1077億円とした費用について「開門方法で対策に違いが出る」と述べ、早ければ8月の概算要求に関係経費を盛り込む考えを示した。
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ついで:
★ 西日本新聞 2011年6月12日 00:11
諫干開門アセス素案 長崎県知事が拒否
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/246693
長崎県諫早市の諫早湾干拓潮受け堤防の開門に伴う環境影響評価(アセスメント)の素案公表を受けて、同県の中村法道知事は11日、県庁で記者会見し「地元は被害に遭うが有明海再生にはつながらない。これでは今後も開門に向けた協議には一切応じられない」と、あらためて開門拒否の姿勢を示した。 (以下略)
★ 長崎新聞 2011年6月12日
「協議応じない」諫干アセス中間報告受け知事会見
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20110612/01.shtml
国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門調査に対する農林水産省の環境影響評価(アセスメント)の中間報告発表を受け、中村法道知事は11日、県庁で会見。「有明海全体に対するプラス効果は一切期待できないとの結果で、何のために開門するのか」と国への不信感をあらわにした。 (以下略)
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国と地元の対立、漁民と農民のように見せかけて、内実はそうではない。
長良川河口堰開門に向けての動きが、あたかも地元の漁民・農民と環境団体の対立であるかのように描き出されないことを祈る。
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6月11日「さよなら原発パレード・ぎふ」。参加者約500人。
