「やらせ」説明会と内ヶ谷ダム |
玄海原発再開に関して国が主催する説明会につき、九州電力が「やらせ」指示メールを出していたことから、経産省は各電力会社に調査を指示した。指示文書(下の参考資料(1)「平成23・07・14資庁第2号」)を見ると、「やらせ」など不適切なことをやらかすのは(国ではなく)電力会社だ、という姿勢である。ところが調査結果の報告期限の29日、中部電力は調査結果を記者会見で公表し、「反撃」に出た。
原子力安全・保安院から「やらせ」依頼があった、中部電力は拒否した(「当社のコンプライアンスが機能した」)という。
◆ 中部電力 プレスリリース 2011年7月29日
国主催のシンポジウムにおける特定の意見表明要請の有無に関する調査結果について(経済産業省資源エネルギー庁からの指示に対する報告)
http://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/3162324_6926.html
資料(PDFファイル)
【添付書類】 地域住民からの意見聴取のために国が主催したシンポジウム等での特定の意見表明を要請した事実の有無に関する調査結果について[PDF:286KB]
http://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/__icsFiles/afieldfile/2011/07/29/07291.pdf
【参考資料】(1)地域住民からの意見聴取のために国が主催したシンポジウム等での特定の意見表明を要請した事実の有無に関する調査について(平成23・07・14資庁第2号)[PDF:283KB]
http://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/__icsFiles/afieldfile/2011/07/29/07292.pdf
【参考資料】(2)プルサーマルシンポジウムの概要[PDF:133KB]
http://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/__icsFiles/afieldfile/2011/07/29/07293.pdf
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保安院が「やらせ」を依頼したのは、中部電力だけではなかった。四国電力は依頼を受けて、「質問草案」まで作ったそうだ。
一連の報道の中に、以下のようなものがあった。
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時事ドットコム 2011/07/29-20:56
アンケート8割「必要性理解」=質疑は反対一色-「やらせ」問題http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2011072901093
国が開いた浜岡原発(静岡県御前崎市)と伊方原発(愛媛県伊方町)のプルサーマル計画に関するシンポジウムで、原子力安全・保安院が質問などの「やらせ」を指示した問題で、アンケートに答えた参加者の約8割が計画の必要性や安全性について「理解する」としていたことが、29日分かった。両方で反対派のパネリストを務めた舘野淳・元中央大教授は「会場の雰囲気とずれがある。質問にも違和感を覚えた」としている。
2007年の御前崎市のシンポジウムには、保安院の要請で中部電力や関連会社から動員された150人以上を含む524人が参加。このうち357人がアンケートに応じ、計画の必要性について36.7%が「理解できた」と回答。「だいたい理解」「少しは理解」を含めると81.0%に達し、安全性についても同様に計77.9%が「理解する」とした。
一方で、会場からの質疑応答では、計画に反対か慎重な立場からの質問が集中。質疑は会場を六つに分け、司会者が指名して行われたが、10人余りの質問者は「プルサーマル原発の隣に住めるか」などと、いずれも批判的な意見だった。
06年の伊方町のシンポジウムでは、四国電力が要請した10人が質問に立ち、アンケートでは必要性、安全性とも回答者の8割以上が「理解できた」としていた。
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これを見て、4月に岐阜県が主催して行った「内ヶ谷ダム住民説明会」(「内ヶ谷ダム建設事業の検証に係る意見募集に伴う説明会」)のことを思い出した。
告知期間は短く、地元でもほとんど関心を持たれていない事柄なのに、会場はいっぱい。郡上市の会場では、形態電話で「まんだ家におるんか、まあはじまる。来いと言われとったがや、来なあかんて」と知り合いを呼び出すのを聞いてしまった。どこかが”動員”をかけたには違いない。
会場でマイクをとった参加者からの意見や質問は、関市・郡上市の両方を通じてたった1件を除き、内ヶ谷ダムに批判的か懐疑的なものばかり。
他方、会場では「アンケートに記入して、席においてお帰り下さい」という半ば強制的なアンケート回収があった。発言しない参加者に「手厚い配慮」である。
6月の岐阜県議会の議案説明会での「内ヶ谷ダム住民説明会ではどんな意見が出たのか?」という質問に対し、D河川課長は「マイクを使っての発言は、確かに反対意見が多かったが、(反対意見を言うのは)遠いところから来ている人ばかり(※)。アンケート結果では、地元の郡上、関の人は賛成が多数」と答えたそうだ。
この「アンケート結果」のありようは上記の記事にそっくりではないか?
※ 本当に「遠いところから来ている人ばかり」と言ったとしたらウソツキと言わねばならない。懐疑的あるいは批判的意見を述べた中に、それぞれの開催地元(4月7日=関市、4月21日=郡上市)の住民が(複数)いた。主催者側も知っている人たちであり、名前も言ったのだから気づかないはずはない。D河川課長は「~ばかり」と言ったのではなく「~も多かった」と言ったのだと解釈しておこう。
弊ブログ
•内ヶ谷ダム「説明会」第2回~平成39年完成!?!~ [2011-04-22 23:50 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/15856331/
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1996年6月、徳山ダム建設事業審議委員会主催の公聴会が行われた。大垣会場は多数の公述人があり、大部分は「早くダムを造れ」であった。その「早くダムを造れ」公述の多くが似た構成であった。「明治29年の大洪水」で始まる。
後に、徳山ダム建設事業審議委員会で、大垣市長が事務方の中部地建に対し、「公聴会ではダム建設促進を要望する意見が多かった。数をきちんと記録してほしい」と執拗に迫った。公聴会の動員やシナリオ書きの黒幕が表に顔をさらした、というべきだろう。なんせ1996年、当時の大垣市長は「市政に反対する者には市の施設は貸せない」と宣ったくらいだ。
•憲法!1996年大垣市スイトピアセンター使用出許可取消処分の執行停止申立事件
[2009-01-16 17:17 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/10144308/
「動員」「やらせ」は少しも恥じることがないどころか、たくさん動員し、たくさん「やらせ」ができたら大手柄と思っていた・・・マスコミも「そんなことは当たり前」と考えて記事にもしなかった、その残滓はいくらでも転がっている。
ともあれ、原子力ムラの一体構造に少しばかり綻びが出た、マスコミは「官民挙げての『やらせ』は許し難い」と大きな声で言うようになった、というのは、311以来の大きな災厄の中の「わずかな良い面」なのかもしれない。
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大垣駅前通り、「大手いこ井の泉」
ユーチューブにあるのを発見。
大垣市「名水・大手いこ井の泉」
http://www.youtube.com/watch?v=RCS3VEX1QO8