長良川河口堰中流部取水のウラ約束は活きている? |
愛知県の長良川河口堰検証作業。
8月2日の第2回専門委員会
http://www.pref.aichi.jp/0000043450.html
リソースパーソンとして出席した水資源機構中部支社副社長の富岡誠司氏の冒頭の発言には、傍聴者一同「おや?」と感じた。
「愛知県と水資源機構(水資源開発公団)は、ずっと手を携えて一緒にやってきた」。私には「愛知県は(水資源問題では)水資源機構と一蓮托生だからね、忘れるなよ!」と言っているように聞こえた。
愛知県からし出向中の富岡氏が、古巣の守旧派(?)にエールを送ったのか、それとも恫喝をしたのか・・・それとも単なる挨拶にすぎない???
◇ ◇
「私には~聞こえた」には、それなりの背景がある。
木曽川水系連絡導水路「上流分割案」(=現行案)。どう考えても必然性のない長良川への導水には愛知県・名古屋市の”積年の悲願”である、長良川河口堰の中流部取水が存在する。河口堰直上流ではなく、もっと上流、二十数キロ付近で取水すれば、既設の浄水場にも近くて便利、という話である。しかし、こんなところから取水すれば長良川に与える環境負荷は計り知れない。1993年には国(建設省中部地建)は「河口堰直上流からの取水」と押し切った。しかし愛知県と名古屋市は納得していない。
何度もこの問題は蒸し返された。 (→ 「やりとり」文書 下にリンク&貼り付け)
参照:導水路「下流施設」がシブトク残る本当のわけ-(1)[ 2009-05-15 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/11066442/
2007年3月16日、密室の「徳山ダムに係る導水路検討会」の第5回幹事会で、いったんは長良川河口堰中流部取水が前提の「上流分割案/最終案」が提示された。
http://dousui.org/kanji/03.pdf

上流分割案のメリットとして「長良川河口堰の利水導水の具体化が可能となる」と謳っている(上のページの前ページ)。
その後、相当にすったもんだがあり、「最終案」はかなり修正される。しかし以下のような「確認事項」は活きていると考えるべきなのだろう。
2007年8月2日 第11回幹事会資料
http://dousui.org/kanji/11.pdf

これは、情報公開請求では「案」として出てきたが、公表資料にはない。不透明な限りである。
長良川市民学習会>>資料保管庫
徳山ダムに係る導水路検討会/幹事会資料
http://dousui.org/kanji/index.html
この膨大な「幹事会資料」は、中部地整が隠そうとしたのを、情報公開請求の繰り返しと国会議員による質問主意書の挟み撃ちでこじ開けたものである。
中部地整に「隠せ」と言われてモタモタしているうちに置いてきぼりをくった岐阜県とのドタバタは以下に。この記事に資料をリンクしているのだが、話が錯綜して分かりにくくなっている。
•不透明すぎる!木曽川水系連絡導水路-上流分割案-の「合意」[ 2008-11-25 14:25 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/9751449/
•続・不透明すぎる!木曽川水系連絡導水路-上流分割案-の「合意」 [ 2008-11-25 23:44 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/9756112/
いずれにしても、隠し事にまみれた不透明性をなくさない限り、河川行政は信頼されない。
◇ ◇

導水路「上流分割案」と長良川河口堰中流部取水ウラ約束については、拙著「徳山ダム導水路はいらない」(風媒社)のp129~p144で結構詳しく書いている。
どんな<やりとり>文書だったか。
中部地整に開示請求した<長良川河口堰取水位置に関する、国と愛知県名古屋市とのやりとり>文書
◎ 08.11.26請求 08.12.25開示決定
開示文書名 長良川河口堰関係公文書綴り
(請求文書名:長良川河口ぜきからの取水施設の位置に関する申し合わせ等のわかる文書、ただし長良川河口ぜき建設事業開始から2004年までのもの )
開示文書PDFファイル
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota5/081126kaijishusuiichi.pdf
開示文書の書き起こしとコメント。
Ⅰ.1987年
三重県が長良川河口堰の工業用水分を「返上」し、愛知県と名古屋市が「尻を拭いた」時期の取り交わされた文書。(A~E)
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A 1987.4.20
名古屋市長 → 建設省中部地方建設局長
62プ第11号
昭和62年4月20日
長良川河口堰に係る覚え書き及び了解事項の締結について(照会)
1.三重工業用水から愛知県地域に変更する4立方メートル/秒程度のうち、本市に変更する水量は0.1立方メートル/秒を限度とすること。
2. 本市に変更する水量の水源は岩屋ダムとすること。
3.本市に変更する水量の用途は工業用水に限定されないこと。
4.かねてより要望している取水地点の変更に関し、長良川河口堰の取水については朝日取水口から、また朝日取水口からの取水については犬山取水口からの取水に変更できるよう貴局の責任において措置されたい。
B 1987.4.20
建設省中部地方建設局長 → 名古屋市長
建部河調第33号
昭和62年4月20日
長良川河口堰に係る覚え書き及び了解事項の締結について(回答会)
昭和62年4月20日付け62プ第11号で照会のあった標記について・・・
1.了解する。
2.今後、貴市の要望に沿うようにしたい。
3.関係行政機関等の調整のうえ、貴意に沿うようにしたい。
4.関係行政機関等の調整が必要となるが、流況変化に対する問題が解決されれば、取水地点の変更が可能となるように措置したい。
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C 1987.4.24
愛知県知事 → 建設省中部地方建設局長
62水対第27号
昭和62年4月24日
長良川河口堰に係る覚え書き及び了解事項の締結について(要請)
(前略)下記事項のご了解をいただくようお願い申し上げます。
1.木曽川水系で開発される三重工業用水のうち、愛知県地域に変更する用水(以下「転用用水」という)」の本県分については、用途を工業用水に限定されないこと。
2. 転用用水のうち本県分の取水については、犬山取水口と馬飼頭首工の間で、本県の希望する位置とすること。
3.転用用水の水価については、当県の事情を十分に配慮されたいこと。
D 1987.4.24
建設省中部地方建設局長 → 愛知県知事
建部河調第34号
昭和62年4月24日
長良川河口堰に係る覚え書き及び了解事項の締結について(回答)
(62水対第27号への回答)
1.1については、関係行政機関等の調整の上、貴意に沿うようにする。
2.取水位置については、関係機関等の調整の上、貴意に沿うように措置する。
3.貴意の水価についてのご要望は、十分認識しております。
E 1987.4.24
愛知県企画部長 → 建設省中地方建設局河川部長
62水対第31号
昭和62年4月24日
長良川河口堰で開発される都市用水の取水施設等について(要望)
(前略)取水地点は出来るだけ上流とすることを昭和46年12月16日付け46水第2号にて要望しているところでありますが、・・・・転用問題の解決にあたり、本県の取水導水計画を検討する必要がありますので・・・ご回答くださるようお願い申し上げます。
記
長良川河口堰で開発される愛知県都市用水(木曽川導水事業に係る水源2.0m3/Sを含む)及び木曽川水系で開発される三重県の工業用水のうち、愛知県地域に変更される用水については、本県の希望する位置で長良川河口堰建設事業のしゅん工時に水利用ができるよう、導水施設の事業化を図られたい。
☆ 1987.4.24
建設省中部地方建設局河川部長 → 愛知県企画部長
建部河調第38号
昭和62年4月24日
長良川河口堰で開発される都市用水の取水施設等について(回答)
(前略) 昭和62年4月24日付け62水対第31号にて要望のあった長良川河口堰で開発される都市用水の取水施設等については、河川管理に支障のない範囲で要望の趣旨を尊重し、貴県をはじめ関係機関と十分協議していく所存であります。
Ⅱ.1993年
愛知県の長良川河口堰からの取水-導水が(僅かな分であっても)具体化した頃に愛知県と建設省中部地方建設局との間で取り交わされた文書。 F~G
F 1993.8.2
愛知県企画部長 → 建設省中地方建設局河川部長
5水対第45号
平成5年8月2日
長良川河口堰に係る開発水の取水地点について(照会)
平素は・・・
さて、このたび貴職を始め関係機関のご配慮により、長良導水事業が実施に向け水資源公団法の手続に入ることになりました。
長良川河口堰に係る開発水の取水地点につきましては、河口堰の事業実施方針回答時の要望、或いは昭和62年に整理された三重県転用工水の受け入れの再の中部地方建設局長及び貴職への照会等、かねてから本県での有効利用できる上流での取水を要望し、本県の意向を尊重し対処する旨のご回答を頂いているところであります。
しかしながら長良導水事業につきましては、本県の意向にかかわらず河口堰直上流での取水計画とされております。
こうしたことから、長良導水事業実施に当たり下記事項について貴意を伺いたいので回答くださるようお願い致します。
また貴職におかれましては、長良導水事業が河口堰と不離一体の事業であること、三重県工水転用時の調整経緯を踏まえ、本事業の円滑な推進につきまして関係者の調整、ご指導等につきまして特段のご配慮をいただきますよう併せお願いいたします。
記
○ 今回の長良導水事業の取水位置が河口堰直上流となった理由。
○ 長良川河口堰に係る開発水の内、長良導水分を除く本県分の取水位置についての対応方針。
G 1993.8.3
建設省中部地方建設局河川部長 → 愛知県企画部長
建部河調第59号
平成5年8月3日
長良川河口堰に係る開発水の取水地点について(回答)
平成5年8月2日付け5水対第45号で照会のありました件について、下記の通り回答致します。
なお、長良導水事業については河口堰と不離一体の事業であることから、事業の円滑な推進のため河川管理者として適切に対処してまいりますので、貴県におかれましてもご協力をお願い致します、
記
1.今回の長良導水事業の取水位置が河口堰直上流となった理由
現時点において、河川管理面等から詳細な検討を行った結果、堰直上流での取水は止むを得ないものと判断されますので了解願います。
2.長良川河口堰に係る開発水の内、長良導水分を除く貴県分の取水位置について
現時点において、上記理由により堰直上流おいて取水して頂くことを考えております。
但し、今後、河口堰完成後における河川管理面の状況を踏まえ、木曽川水系における水利用の合理的再編成の検討など三重県工水転用時の調整経緯を尊重し、貴県の要望に沿うよう関係行政機関との調整を図って参ります。
Ⅲ.2004年
徳山ダム事業費大幅増額に伴う徳山ダム建設事業実施計画の変更の際に取り交わされたもの … 「徳山ダム事業」の協議に長良川河口堰取水位置の話が絡まっていることに注目! H~I
H. 2004.7.8
国土交通省中部地方整備局河川部長 & 愛知県企画振興部長(平成16年7月8日)
確認事項
国土交通省中部地方整備局(以下、整備局という。)と愛知県は、徳山ダム建設事業実施計画の変更協議に当り、下記事項を確認する。
記
1. 愛知県が近年2/20の水道用水安定供給のために確保する長良川河口堰転用水5.46立方メートル/秒及び徳山ダム開発水2.3立方メートル/秒について、硬質的な運用と水系内でも広域的な利用ができるよう、関係機関・県市の検討・調整を進め、導水施設の完成に合わせて水利使用が開始できるように努めるものとする。
2.愛知県は、記1の長良川河口堰転用水のうち4.52立方メートル/秒を尾張西部上水場で利用する予定であり、そのために長良川からの取水地点及び導水ルートの計画案を早期に作成する。
整備局は、今後具体的な案が出てきた段階で協議を進めるものとする。
3.今後の水資源関係事業の推進に当たっては、事業費及び事業内容が一定の変更要件に街頭する場合には、早い段階から節目節目で適宜費用負担者へ説明し、適切に事業費変更を行うこと。
I. 2004.7.8
国土交通省中部地方整備局河川部長 & 名古屋市上下水道局長(平成16年7月8日)
確認事項
国土交通省中部地方整備局(以下、整備局という。)と名古屋市は、徳山ダム建設事業実施計画変更協議に当り、下記事項を確認する。
記
1.整備局は、今回の木曽川水系における水資源開発基本計画の改定作業での水資源分科会ならびに同木曽川部会での議論を踏まえ、木曽川水系の水資源安定供給確保および有効利用に努めるものとする。
2.整備局は、名古屋市が徳山ダムおよび長良川河口堰で開発した水の木曽川への導水について、名古屋市の既存の取水・導水施設が有効に利用できるよう協力するとともに、導水施設の完成に合わせて水利使用が開始できるように協力するものとする。
◇ ◇
上記2007年8月2日「幹事会」資料p6
長良川河口堰と導水路は「一連の」問題なのだ。

怖い、怖い・・・・。