続・長良川河口堰検証 専門委報告書(9月21日) |
9月22日の新聞記事の続き
★ 中日新聞 (愛知)県内版
県専門委、開門調査“ゴーサイン” 岐阜、三重の反発必至
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20110922/CK2011092202000102.html
写真右= 開門調査の実施に向けた報告書がまとめられた長良川河口堰=三重県桑名市で
長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)の開門調査の可否を検証する愛知県の専門委員会が21日、ゴーサインを出す報告書をまとめた。背景には、わずかしか使わない水のために巨額の負担が続く愛知県や名古屋市の「水余り」の現状がある。だが、こうした目線は「都市部のエゴ」とも映りかねず、開門の実現に必要な岐阜、三重両県の同意取り付けは困難が予想される。
河口堰建設では、毎秒22・5トンの取水が可能になった。だが、企業の節水対策などが進み、16年たっても実際の取水量は、そのわずか16%。名古屋市の水道用水や県の工業用水にはまだ1滴も使われていない。
建設費1493億円のうち、愛知県は3県1市で最も多い383億円を負担。年間の維持管理費10億円のうち3億円も担う。大村秀章知事は9月の定例会見で「金利分を含めると、愛知県と名古屋市で事業費の半分を負担している。より良い運用に向けた最適の解があるはずだ」と訴えた。
■塩害への影響
堰を運営する水資源機構や国が、開門を拒む理由は「塩害」への懸念だった。治水目的で上流の河床突起部をしゅんせつし、塩水が遡上(そじょう)するのを防ぐために設けたのが河口堰。「開門すれば河口から30キロ上流まで塩水が遡上し、田畑や用水に塩害が出る」と主張した。
だが、報告書は「塩水がどこまで遡上するかは不明」と指摘。開門調査の期間中は、堰の上流で塩分濃度を観測し、基準を超えれば閉門などの操作を行うとしている。
こうした方針に岐阜、三重両県知事は反対を表明。堰の上流域で米や大豆を栽培する岐阜県海津市の農業受託会社「福江営農」の後藤昌宏社長(51)も「塩害があった場合、誰が補償してくれるのか」と心配する。
開門調査の実現には、建設費を負担した岐阜、三重両県や、水利権者らの同意が不可欠だ。今後、新たな協議の場をつくるように大村知事が働きかけていくことになる。
今回の専門委は、当初から人選が開門推進派に偏り、21日の会議後には傍聴者から「開門の結論ありきではないか」「議論が尽くされていない」と批判が相次いだ。今後の協議の場も、同様に強引な手法で進めれば、開門への理解は得られないだろう。
■見通しの甘さ
公開ヒアリングに招かれた赤須賀漁業協同組合(三重県桑名市)の秋田清音組合長は「河口堰が公益でないというのなら、しゅんせつした砂を戻してほしい」と憤った。一時は裁判を起こして河口堰建設に反対したが「公益のため」の大義の前に、苦渋の決断で着工に同意。その信義を否定される事態に、都市部目線の施策に翻弄(ほんろう)され続ける怒りをぶつけた。
批判されるべきなのは建設当時の見通しの甘さだが、こうした歴史を重く受け止め、塩害の懸念を払拭(ふっしょく)しない限り、関係者の同意は得られない。報告書作成を実現性のないパフォーマンスに終わらせないためには、環境改善も含めた「流域全体の利益」を説く丁寧な議論が必要になる。 (島崎諭生)
★ 読売新聞
3つの面で報じました。
(1面)
(38面)
(34面-1)
(34面-2)
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