野宿者と河川敷-2004年のこと- |
きょう(14日)、あるMLに「江東区による竪川河川敷公園での野宿者強制排除に対する抗議声明に賛同を」というメールが転送投稿された。
山谷労働者福祉会館HP
http://www.jca.apc.org/nojukusha/san-ya/
悔しい思いだ。
河川の畔、河川敷は市民の憩いの空間だ、だから野宿者(ホームレス)は邪魔だ、出て行け・・・・為政者(行政側)のこうした行動を許してしまっている、いや後押しまでしてしまっている「市民意識/周辺住民の声」というものが、残念ながら存在する。
2004年8月4日、土岐川庄内川流域委員会の傍聴に行った。
徳山ダムの湛水が始まったら、とりかかるであろう木曽川水系河川整備計画策定を、中部地方整備局はどういうふうに進めるであろうか、という問題意識での「偵察傍聴」である。
ここで「審議事項ではありませんが、ご報告します」として庄内川河川事務所から配布された市民向けパンフレットの案(ほぼゲラ刷り段階)をみて驚愕した。
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「ホームレスの不法占拠への対策を行うこと」
「都市河川である土岐川庄内川の河川敷などでは、ホームレスがたくさん生活しています。洪水時には大変危険であるとともに、持ち込まれた荷物が流水の阻害にもなります。また自然環境にも悪影響を与えたり、人に近づきにくいイメージを与え、川を訪れたり利用することを阻害している面があり、その対策が必要になっています。ホームレスによる不法占拠を未然に防ぐため、放置車両や不法投棄ゴミへの対策や、人の目が届きやすいような高水敷の管理を推進していくことも重要です。」
「また、不法投棄への対策を図り、美しく親しみやすい河川敷を維持することは、ホームレスの抑制や大雨で降った水を安全に流すことにもつながります。」
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野宿者(ホームレス)は不法投棄のゴミと一緒か!?
驚いたのはこれらの記述だけではない。
中部地整管内では最も”開かれた”流域委員会と言われた土岐川庄内川流域委員会の委員の誰一人として、こうした記述を問題にしないことに恐れ入った(パンフレットの他の部分に対しては「意見」が出たのに)。
こんなものが行政側から市民向けに配布されれば、差別と偏見が助長され、強制排除の世論作りとなってしまう(当時、「愛知万博」に向けて、名古屋市内の公園からの野宿者追い出しが行われていた)。
会場にいた顔見知りの庄内川河川事務所のH副所長に、「こんなものを配ってタダで済むと思うな。国交省も所管している『ホームレス自立支援法』の第一条を読み直して、首を洗って待っていろ」とスゴんで(?)しまった。
H副所長は、はじめポカンとしていて、しばらくしてから曰く「市民の要望です」。
すぐに笹島連絡会に資料を送った。
この後のことは、笹島診療所の藤井克彦さんが、季刊「シェルタレス」冬号(2004年末か2005年初め)に載せている。
その原稿については「使って良い」とのことなので、ここにPDFファイルでアップする。
河川整備における野宿者施策について(藤井)
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河川整備における野宿者施策について
-「土岐川庄内川河川整備上の課題」が修正される-
藤井克彦(笹島診療所)
はじめに
河川敷の野宿者
河川行政と流域委員会
庄内川水系河川整備計画の場合
笹島連絡会からの申し入れ内容
河川事務所との話し合い
振り返りと今後
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庄内河川事務所は、話し合いに応じ、何とか記述を変えた。
だがそれで河川管理者の体質が変わったとまではいえない。
話し合いが決着した後、中部地整河川部のY流域調整官は、相変わらず「市民の皆さんの要望です」と宣った。
その件での中部地整とやりとりしたメール。
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04.12.14
Q 庄内川河川事務所の「ホームレス」言及問題につき、まだ河川部全体に問題意識が共有されていないように思いますが如何?
回答
日頃より国土交通行政にご協力頂きありがとうございます。
近藤様からいただきましたご質問についてお答えします。
ご指摘の件につきましては、過日(11/10)、近藤様からYに連絡指摘頂いた後、河川部内各課はもとより河川系の各事務所に対して周知したところです。中部地方整備局河川部としても「ホームレスに対する人権侵害」はあってはならないことであることを、共通認識として確認させて頂きます。
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しかし、この後の2006年に中部地整管内の矢作川の支川乙川の河川敷で、野宿者(女性)が襲撃され、殺害されている。行政はこうした殺人事件を防げなかった。
そして今また河川敷からの野宿者強制排除が「市民の要望」という名の下に行われようとしている。
悔しい。
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