熊野川台風12号水害調査行(6) 相野谷川その2 |
(承前)
日足~相賀~那智川~鮒田水門と、土地勘のない私たちをハイスピードで案内して下さったのは、若き新宮市議会議員の並河哲次さん。
並河さんは、紀宝町議会議員のエノケン(榎本健治)さんと3時半に鮒田水門の傍の小さな公園で待ち合わせる手配をして下さいました。ご自身は、水害後には紀宝町(熊野川左岸)のほうはあまり行かれていないそうで。
3時半ジャストにエノケンさんと合流することができました。
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相野谷川の水防災対策特定河川事業の諸計画は「TP9.40m」で作られています(鮒田、高岡、大里の3輪中堤天端高)。
台風12号水害では、この高さを軽く突破し、実に13.8mの高さまで水が来たとのことです。(鮒田水門地点痕跡水位)

熊野川本川の水を相野谷川に遡らせないために設けた鮒田水門ですが、9月3日の20時頃に排水ポンプが浸水で停止してしまいました。20時35分には「熊野川本川水位と支流相野谷川水位が同一となったため、鮒田水門ゲート全開」と、近畿地整の速報にあります。最高水位となったのは、4日午前3時頃です。ゲート全開からも水位は刻々と上がっていったわけです。住民の方々の恐怖と不安はいかばかりだったでしょう。
浸水した排水機場。豊岡河川国道事務所からの応援車が停まっていました。(大型ポンプ車が停まっている高さがTP10.0mと聞きました。 白い布のようなものは排水のためのホース)

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下の写真は、鮒田水門から下流を見たところ。河口にほど近いことが分かります。

この地点でTP13.8mの高さで洪水が流れた、というのは、低平な濃尾平野で暮らす私には想像がつきません。(揖斐川では、河口から27.0kmの「今尾」で計画高水位がTP7.97m、40.6kmの「万石」で12.09m)
「滝のように海に流れた?そんなことってあり?」と疑問をもちました。河川工学の権威の方のおっしゃるには「熊野川の(特に河口部の)特性だから。ありうる現象」とのことで、戻ってからすぐに調べて下さいました。
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国交省のデータベースによりますと、9月4日02:00の水位がピークのようで、TP換算で次のようになっていました。
あけぼの外 0.10km左岸 TP 2.52m
成川 2.35km左岸 TP 9.72m
相賀 10.6 km右岸 TP23.85m
相野谷川合流点の鮒田水門は河口から3.00kmですので、あけぼのより15m高いとしても水面勾配は1/200のオーダーです。
水理学的にいえば、この区間の河床勾配は緩勾配で、流れは常流です。水面形はM2です。
結論として、「あり得る」ということです。
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勉強になるぅ
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今、復旧に関する話し合いが地元で行われているようですが、お話によると、河川管理者は「9.4mと13.8mとの差の4.4mの分、相野谷川合流点より下流の本川河床を浚渫する」と言っているとか。
そんなオバカなことはやめて欲しい。
長良川河口堰検証で明らかに示されたところです、河口部の河床の浚渫は水位低下に役立たない、治水効果は極めて小さい、と。
愛知県 長良川河口堰検証
「報告:専門委員会報告書 (専門委員会共同座長 今本博健)」
http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000046/46652/111121houkoku_senmoniinnkai_imamoto_resume_.pdf
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