内ヶ谷ダム環境調査資料開示への異議申立て→ほぼ通りました |
☆ 岐阜新聞 2012年03月07日09:52
猛禽類名、公開に転換 環境調査資料で県「保護に有益」
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20120307/201203070952_16447.shtml
☆ 朝日新聞 岐阜版 2012.3.7
☆ 中日新聞 2012.3.7
☆ 毎日新聞 2012年3月7日 地方版
内ケ谷ダム:環境調査報告書、非開示分を公開 建設で県 /岐阜
http://mainichi.jp/area/gifu/news/20120307ddlk21010026000c.html
県は6日、郡上市の内ケ谷ダム建設に伴う環境調査報告書の情報公開請求で、これまで非公開としていた約500ページ分を公開したことを明らかにした。請求者が異議を申し立てたため専門家の意見を聞いて検討。公開しても猛禽(もうきん)類の営巣木は特定されず、問題ないと判断した。
調査報告書は、県の委託で09年3月までに作られた。動物、植物、鳥類、魚類に関する調査で、33冊2241ページ。情報公開請求が10年9月にあり、県は情報公開条例が非公開と定める「乱獲、盗掘につながる情報」に当たるとして1390ページ分の一部を非公開とした。
県が再検討したところ、猛禽類は行動範囲が広く、種類を公表しても営巣木が特定される恐れは少なく、専門家から「住民意識を高め、みんなで見守る方が保護には有意義」との指摘を受けたという。鳥類以外は非公開のままとした。県は「安全を期して非公開としたが、アドバイスを受け修正した」と説明している。【山盛均】
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まずは昨年の「内ヶ谷ダム環境資料真っ黒塗り」のお話のおさらい。
弊ブログ(2011年2月)
•内ヶ谷にはイヌワシがいる?!?![ 2011-02-02 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/15439506/
•続・内ヶ谷にはイヌワシがいる?!?![ 2011-02-03 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/15443050/
•続・続・内ヶ谷にはイヌワシがいる?!?![ 2011-02-04 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/15451760/
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内ヶ谷ダム環境資料 異議申立書(2011.2.22)
PDFファイル
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota4/20110222igi.pdf
キモは以下の部分
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Ⅱ 希少種保護の観点から
2.希少種保護の考え方の方向
急速に種の絶滅が進行する中での国際世論の高まりをうけ、1990年代には、日本においても「種の保存法」など一連の希少種保護に関する法律が充実してきた。その中で、私(異議申立人)は2つのアプローチに遭遇している。
(ア)情報秘匿による保護
密猟者などに情報が漏洩するおそれがある、として、専門家以外には情報を出さない、という立場。
ある立場の専門家からすると「市民一般なんて全くもって保護に役立たない。『居る』という情報を出せば密猟者に渡るだけだ。『日本野鳥の会』?? あんなアマチュア連中に情報を渡すわけにはいかない。」のだそうだ(1994年秋、金糞岳山頂付近にて。イヌワシをほぼ水平位置に目視しながらの会話)。
(イ)生態系保全への意識喚起による保護
その希少種が存在する(希少になってしまった環境変化を含めて)生態系全体を、住民全体の意識を高めることで保全し、もって希少種を保護しようとする立場。
希少種保護とは、単にその種を生き延びさせるかどうかの問題ではない(「その種」だけの問題であれば、外界から遮断された研究室内で保全すれば良いことになってしまう)。生物多様性の保全、その種が存在する生態系全体の保全の問題である。
ゆえに私(異議申立人)は、後者(イ)の立場を支持してきた。
2010年に名古屋で生物多様性COP10が開催された。締結国政府代表のみならず、国内・国外のNGOが多数参加した。市民参加は、生物多様性条約の基本的趣旨に基づいている。つまり生物多様性条約は(イ)の立場に立っている。また2008年に成立した生物多様性基本法も、(イ)の立場に立っている。
希少種の情報を過度に秘匿するのではなく、可能な限り公開して、地域住民全体の力で保全していこうというのが、世界の流れである。
3.徳山ダムでの事例
おそらく、全国的にみても、最も多くのお金を投入して大型猛禽類調査が行われた場所が、岐阜県内にある。徳山ダム集水域である。2005年度まで10年間に7億6000万円をかけてこの地域のワシタカ類(主にイヌワシ・クマタカ)を調査した。調査の「量」については国内有数であろう。
1999年9月、水資源開発公団徳山ダム建設所は本文177ページ、資料52ページにわたる「徳山ダム周辺の自然環境」という冊子を刊行した。このp99でクマタカにつき「調査区域内には広い範囲に周年分布し、繁殖が確認されています」と記し、イヌワシにつき「調査区域内には広い範囲に周年分布し、繁殖していると考えられます」と記されている(その後の調査でイヌワシの繁殖が確認されている)。
さらに1999年12月は、水資源開発公団は、NACS-Jの協力と助言の下、「徳山ダム周辺の希少猛禽類とその保全」と題する大部の資料を公表した。
ここではイヌワシ・クマタカのペア名とおよその行動圏とが公になっている。その後の徳山ダムでの環境関係の調査とその検討においては、ここで用いられたペア名を用いている。(たとえば「イヌワシDつがい」。これでおよその行動圏は頭に浮かべられる。)
専門家の誰からも、こうしたことで「当該生物の保護に支障を及ぼすおそれ」が生じたとの意見は出されていない。
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異議申し立てをしてから1年。
私も何度も非公式”呼び出し”に応じて県庁に足を運び、「環境に関する情報開示のあり方」についてレクチュアをしてきました。
2006年に水機構徳山ダム建設所が作成した「徳山ダムにおける環境の保全 第Ⅱ編 希少猛禽類」のCD-Rデータを提供してあげたりもしました。
今般、ようやく、内容的な前進が見られたので(かつその旨をマスコミにも説明する、という約束だったので)、「取り下げ」に応じることとなりました。
一番重要なのは「河川課長」名でだされた文書の下の囲みの「2」です。
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〔希少種情報の扱いの観点〕
2.希少種が存在する生態系全体を保全するために、住民全体の意識を高め、
保護を進めることは有意義であり、これに資する情報は公開すべきである。
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2012.3.5河川課長名文書
「内ヶ谷ダムに関する環境調査資料の公開について」
PDFファイル http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota5/IMG_0001.pdf
「3」は大いに気に入らない。
実際、ハリヨ(環境省RBD 絶滅危惧1A類)は、「ここに居る」と宣伝して町興しに使われ、それがハリヨそのもの及び水環境の保全に役立っている。(醒ヶ井、「ハリヨの里」)
さはさりながら、百歩譲って、今のようやくの「前進」を確保するために、「取り下げ」というこれまた千歩も譲る話に応じた。
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異議申立取下書
2012年3月6日
岐阜県知事 古田 肇 様
異議申立人 近藤ゆり子
私は、2010年12月9日付けで、内ヶ谷ダムに関る環境調査資料の開示を求めました。この開示請求に対する2011年(平成23年)1月12日付け河第490号による公文書非公開(部分公開)決定は承服できないものだったので、異議申立てを行いました。
今般、「内ヶ谷ダムに関する環境調査資料の公開について」という文書が担当課長より提示されました。
この文書の内容は、私の異議申し立ての核心部分を認めて頂いたものと受けとめます。鳥類以外のものについては問題を残すものの、全体として岐阜県の環境保全への取り組みのあり方を大きく前進させるものと評価します。
この担当課長文書及びこの文書に沿った新たな公開決定について了解し、上述の異議申立てを取り下げます。
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1996年3月に「徳山ダム建設中止を求める会」で大型猛禽類調査の要望書を出してからの16年の道のりが頭をよぎる。
感慨深いものがある。
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