熊野川台風12号水害調査行(7) 相野谷川その3 |
(承前)
高岡地区に向かいました。
左岸の集落を囲む”輪中堤(伝統的な輪中堤とは全然違う)”の天端を4mも超えて水が入ってしまいました。
屋根の上まで浸水したことが分かります。


近畿地整があれだけ鳴り物入りで自慢していた「透過窓付特殊堤」。
洪水で水位が上昇したときは「魚と目が合う」という話だったそうで、まさに水族館(誰が誰を見るのか、何のためなのか、分からない)。
下の写真は高岡輪中堤の下流側の天端から撮ったもの。
「水族館窓」から西日が射し込んでいます。決壊(倒壊)箇所-鋼矢板-が見えます。

この「特殊堤」は堤外の水位が高いときの圧力に耐えるようには設計されていたようです(だから「魚と目が合う」ということになる)。
けれど、堤内が天端まで浸水し、その水がひくときはどうなるか、ということは全く「想定外」だったようで、「特殊堤」は外に向かって倒れてしまいました。

とりあえず鋼矢板で囲ったものの、このまま住めるはずがありません(今は無人の状態)。
公表資料がないので、お話を伺っただけですが、どうやら「TP9.40m(特殊堤の天端の高さ)まで土盛りをして宅地嵩上げをする。その上に家を建てて貰う」という案を行政側が示しているようです。83億円とかの事業費が提示されているとか。
数枚の写真でも分かるように、特殊堤の天端の高さまで土盛りをしたところで、その遙か上(4m以上上)まで水が来たのです、新たな家をそこに建てる、ということは「同じ規模の洪水なら、また2階まで浸水する」ということです。住民が呑める話であるはずがありません。
TP9.40mに拘っているのは河川管理者だ、という話と、いや紀宝町だ、という話(河川管理者がそうほのめかした)がありますが、いずれにしても、この圧倒的な「事実」を前にして従来の数値に拘るという愚かさが理解できません。
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相野谷川右岸も凄まじい被害です。


土石流が押し寄せるような場所に(沢を人為的に迂回させて)小学校を建ててしまった・・・土石流が押し寄せたときに児童が居なかったのは不幸中の幸いです。
(「土石流が押し寄せるような場所に小学校を建ててしまった」酷い例を、八ッ場でも見ました。被害者が出ないことを祈ります。)
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相野谷川右岸から”輪中堤”を見たところ。鋼矢板の部分が決壊(倒壊)したところ。私のカメラでは全体は撮れませんでした。
