熊野川台風12号水害調査行(10) 熊野川・十津川を遡る2 |
(承前)
国道168号線沿いにひたすら川を遡ります。
ダム湖はどこも「泥色」です。
”日本一広い村”十津川村役場のある集落をちょっと通り過ぎたあたりでしょうか。
左岸の山が頂上付近から崩れて、土砂が十津川に入った場所が目に入りました。
土砂+水が下からのり面を駆け上り、国道168号線に乗り上げて、また下っていった痕跡を見ました、が、写真にはっきりとは撮れず。(手前がのり面)。

とても大きい規模です。河原の土砂の段差(陰がついている部分)の高さは、軽く人の背丈の2~3倍はあると思います。けど、この写真だとなんだかわかりませんね。工事用車両とかがあれば、規模(高さや幅)がはっきりするのでしょうが。
◇ ◇
近畿地方整備局>>台風12号被災地関連情報
http://www.kkr.mlit.go.jp/typhoon12/index.php
★ 栗平
栗平(河道閉塞)緊急対策工事 (施工・大成建設(株))
http://www.kkr.mlit.go.jp/scripts/cms/plan/infoset2/data/pdf/info_9/20111010_02.jpg
栗平の工事現場 2012.3.9の写真

★赤谷
赤谷(河道閉塞)緊急対策工事 (施工・鹿島建設(株))
http://www.kkr.mlit.go.jp/scripts/cms/plan/infoset2/data/pdf/info_9/20111009_06.jpg
赤谷の工事現場 2012.3.9の写真

◇ ◇
栗平の土砂ダムを見に行きました。
車が行き止まったところから杣道のようなところを奥へ。 随分歩きました。

途中で、下のほう(河床のほう)から何か機械音がするな、と思ったら、水陸両用の車が河床に仮設したを走って私たちを追い越していく形になりました。
乗せて欲しいなぁ・・・・。
飾りのようなものがついているのは、土石流感知のためのワイヤ-。沢筋ごとに何本も張り巡らされていました。
この地点から一見楽そうな河床の仮設道路を行こうとして失敗(道が川の下に潜ってしまった)。 別の道を採った一行に大分遅れたので、諦めて少し戻って分岐地点のここに留まりました。お腹もすいてきたし・・・
断固として土砂ダムに向かってアタックした人たちは、この分岐から1.5km先で土砂ダムの直下にたどり着いたそうです。
「大きすぎてよく分からない」「土砂ダムの上に登る時間はないのでここまでで断念」ということで、この写真をおみやげに。

◇ ◇
栗平奥の土砂ダムをちゃんと見られなかったので、何とか他のは見たい、と先を急ぎました。
谷瀬の吊り橋も途中までで引き返し。
何となく足もとが覚束ない風情なのは誰?(左)
「吊り橋」の陰が河原に映っているの、分かりますか?(右)


風谷ダム。ゴミはしっかり捕獲されている、というべきか。

長殿発電所。長殿発電所「跡」というべきか??? 発電所の建物は全くない。
導水管は完全な破壊を免れたようです。こちらから見て左側の斜面に(小さな)崩落の痕跡が見えます。この写真ではまるで管が水平に置かれているように見えますが、相当な急斜面に設置されています。私は”イナバウアー”状態で見上げて、この写真をやっと撮りました。(左)
タービンは新たに設置された?(右)


◇ ◇
赤谷の入り口に着いたときは陽が沈みかけていました。
工事現場に行く途中にかなりきっちりしたゲートがあって「鹿島(建設)の許可をとってくれ」。鹿島建設ではなく近畿地整だろうに、と思うけど、いろいろな意味で時間切れ。

これは赤谷のほんの入り口の土砂崩壊現場。対岸では巨石が斜面に危なっかしく乗っている。この瞬間にちょっと地震でも揺すったら、巨岩が落ちてくるのではないか、と怖さを感じました。

この場での「あれ?肝心な1人がいない!」集合写真。
◇ ◇
薄暗くなって”文明社会(?!?!)に復帰。
まずはキョロキョロとコンビニを探し、駆け込んでトイレを使う、というコンビニ依存が良いことなのかどうか?
近鉄大和八木駅の近くで、夕食兼「打ち上げ」。
異口同音に「事実の前に圧倒されてしまう」「言葉を失う」「相当期間、頭を冷やして考えないと、何も言えない」。
いくら多雨の紀伊山地とはいえ、1800mm以上の降雨があった、という事実の前に、思考が止まってしまいます。
山から平地から、ずずっと家の鴨居くらいの高さにまで一面に水がある(「浸水」ではなく!)、ということが想像できない。
あまりの水量、あまりの崩壊・・・圧倒されてしまって、言葉が見つかりません。
この雨が熊野川に流出したわけです。
家々も道路も橋も全て水没させ、谷幅いっぱいの水が流れることになった・・・。
仮に、計画(新宮川水系河川整備計画は未策定)に、こんな降雨・洪水を見込もうとしたら・・・・「お手上げ」。
これまでの「計画」という概念では、何ら対処できないでしょう。
まだ直感的印象にすぎませんが「ここ百数十年の”近代治水”概念がひっくり返されるような事象」だと思います。
新たな”治水”理念の構築とそれに相応しい新たな河川行政の展開が求められている、と感じました。
お酒も大分入ってから(運転者は一滴もアルコールを口にしていませんよ!)、かなりくだけた場面で皆が共有できた感想は「これまでの河川管理者の数々のウソや悪行は、ぜぇぇ-んぶチャラにしたってもエエ。これからの治水を一緒に考えるほうが大事」。
◇ ◇
博識な人、人脈を駆使する人、資料を準備する人、行程を詳細に調べる人、そしてもちろん、車を出して動かす人・・・
参加された皆さん、案内して下さった現地のお二人の、力と才能に感謝!!
ありがとうございます、有意義な旅でした。

↑ 真ん中へんで思い切り歯を見せている不謹慎なヤツは誰だ?
やっと終わり
•熊野川台風12号水害調査行(1) 出発前 [ 2012-02-26]
http://tokuyamad.exblog.jp/17243575/
•熊野川台風12号水害調査行(2) 日足 [ 2012-03-01 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/17259728/
•熊野川台風12号水害調査行(3) 相賀 [ 2012-03-02 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/17263772/
•熊野川台風12号水害調査行(4)那智川 [ 2012-03-04 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/17271931/
•熊野川台風12号水害調査行(5)相野谷川その1[ 2012-03-05 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/17275187/
•熊野川台風12号水害調査行(6)相野谷川その2 [ 2012-03-06 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/17279005/
•熊野川台風12号水害調査行(7)相野谷川その3[ 2012-03-09 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/17291300/
•熊野川台風12号水害調査行(8)浅里地区 [ 2012-03-10 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/17294429/
•熊野川台風12号水害調査行(9)熊野川・十津川を遡る1 [ 2012-03-12 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/17302406/
•熊野川台風12号水害調査行(10)熊野川・十津川を遡る2 [ 2012-03-13]
http://tokuyamad.exblog.jp/17305699/