大垣は廃墟となる-もし敦賀原発が事故ったら-(3) |
承前。
岐阜県放射性物質拡散シミュレーション
http://www.pref.gifu.lg.jp/bosai-bohan/bosai/nuclear/simulation.html
大垣市は人口の97.4%、16万3000人が、年間20ミリシーベルト以上となる可能性が示された地域にはいる。⑦のような条件であれば、1週間程度内に年間10ミリシーベルト以下(色付けのない)地域に避難することになっている。
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岐阜県トップ > 防災・防犯 > 防災 > 防災体制 > 地域防災計画
http://www.pref.gifu.lg.jp/bosai-bohan/bosai/bosaitaisei/chiiki-keikaku/
原子力災害対策計画
第三章 緊急事態応急対策(pdf:617KB)
第5節 屋内退避、避難等の防護活動 p39
2 避難の実施 p40
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どこへ避難するの? (1)避難先の決定
どうやって避難するの? (2)避難手段の確保
情報はどうやって得るの? (3)避難に資する情報の提供と避難誘導
この「計画」では抽象的な一般論しかわからない。
一生懸命情報収集に努めてやっと、大垣市民のほぼ全員が、市外に(西濃圏域外に)避難しなければならない可能性があるということがようやくわかる。大垣市が空っぽになる。・・・とても大変なことだ、ということがわかる。
16万人が、整然と移動(避難)して、避難先に落ち着く(かなり長期間を覚悟しなければならない)ことができるのかどうか、かなり厳しい、困難だ、ということがわかる。
「知らなかった、教えてくれなかった、説明されなかった」・・・行政は(岐阜県は、大垣市は)、住民の安全を本当に考えているのだろうか、という疑念が芽生える。
ケース⑦

「年間20ミリシーベルト以上」が危険でないとは言わない、人が暮らしていけない高線量であることは確実だ。「年間100ミリシーベルト以上」(濃い赤に色付けされている)となると一層深刻である。
福島第一原発事故から2年。
【帰還困難区域 : 原子力災害により放射線の年間積算線量が50ミリシーベルトを超え、5年間を経過しても年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある地域。】
「年間100ミリシーベルト以上となる可能性が示された地域」は、帰還困難区域になる可能性大である。
だのに避難想定人口調査票では大垣市の「年間100ミリシーベルト以上」人口はゼロとなっている。
さよなら原発ぎふブログ
敦賀原発事故想定 岐阜県内自治体地区別 避難対象人口 修正 ( 2013-05-01 11:42:39 )
http://ameblo.jp/611gifu/entry-11521796960.html
大垣市中心部がまるっと帰還困難区域になるかもしれない・・・こんな重大な問題なのに、避難想定人口はゼロ!!!
自ら情報収集をした人はブチ切れる。
ゼロでないものをゼロにするって何さ!
わざわざシミュレーションを行ったのは、最悪のケースにも備えよう、ということなんでしょう? マズイ話は無いことにしてしまう気?
本気で住民の安全を考えていないんじゃない?
肝心のときには肝心な情報が(SPEEDI情報が隠されてように)隠されるってこと?
国も県も市も信用できない!!
芽生えた疑念は不信へと決定的に転換する。
◇ ◇

「その地区に少しでも色付けがあれば「○」を記入」とある以上、その作業をやってみるべきだった。数字が大きくなりすぎることに不安を感じたのだろう、「数字が一人歩きする」というのは行政が数字を出したがらないときの決まり文句。
都合の悪い数字は小さく、できるならゼロ(「ない」)にしておきたい、「パニックになるから」マズイ情報は伏せておくほうが良い・・・
こうした行政の論理が破綻したのが「311/福島第一原発事故」なのだ、ということが、岐阜県及び大垣市の防災担当者(責任者としては知事、市長)にはまだよくわかっていないらしい。
福島第一原発事故では、国も福島県も(東電は論外)情報を出さず、危険を過小評価し続けている。このことはすでに誰の目にも明らかだ。避難している人々はもちろん、原発事故現場で働く人も、福島にとどまって暮らしている人も、帰還を考えている人も、国や県を信頼してはいない。
喪った信頼は簡単には取り戻せない。
そして防災計画とは、住民がその計画の意味を理解し、納得し、協力する気になってナンボのものである。
住民にとって信頼できない行政が作った「計画」は単なる分厚い紙の束、机上の空論でしかない。いざ、というときには、何の役にも立たないどころか混乱の元でしかない。
行政を信頼できない住民は、自らと家族を守るため。自ら収集した情報と自らの判断で動くしかない。大混乱となるのは必至である。(自衛隊の治安出動で対応するってか?)
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2月28日~3月7日まで募集した岐阜県の原子力災害パブコメ(の一部)で、私はこんなことを書いた。
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★ 「住民」の視点がみられない。
1)この計画(案)概要版では情報共有(享有)主体としての住民が「いない」。
防災の基本は、普段から住民自身が自らを守るための知識を得ていることである。
住民が防災計画の中身を承知していて、かつ主体的に動くことができなければ、計画は実効性を伴わない。防災計画というものの基本的視点が欠落している。
2)住民が原子力防災の基礎知識を共有することが必要である。
原子力施設から数十キロ離れている岐阜県内では、五感で危険を感じることはできない。予め知識として危険を知っている以外にはない。「○μSv/h」が、何を意味するのかの理解がなければ、行政からの指示や勧告があっても、行動はとれない。
3)、4)略
5) このパブコメ募集期間の時点で、「対策強化地域」になりうる地域の住民に対する県のシミュレーション結果の説明がなされていない。(岐阜県民全体に対して2月15日に1回行われただけ)。 住民が自らの地域の問題として、この計画(案)を理解する契機が奪われている。
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大垣市は6月をメドに避難計画(どこまで具体性があるのか?)も含めた原子力防災計画を策定すると聞いている。
今からでも遅くない(遅いけど)。
岐阜県地域防災計画・原子力災害対策計画、放射性物質拡散シミュレーションに関する、きめ細かい住民説明+意見交換会を積み重ねるべきだ。
以前の地域防災計画には原子力災害の観点は一切なかったから、これまで積極的に防災行政に協力してきた層は、必ずしも原子力災害についての知識は豊富ではない。
311以後、関心をもってネットなどで情報を蓄積してきた層は、これまで行政との接点をほとんど持ってこなかった。
関心のあり方も、行政への視線も、知識や情報の量も一様ではないこれらの人々が、情報を共有し、話し合いを重ねる場、機会が是非とも必要だ。
「敦賀半島の原発で何かあったら、大垣にとっておおごとだ」。
このこと自体は、逃れようもない事実だ。
大垣が廃墟となるかもしれない、数十年も戻れないことになるかもしれない・・・こんな重大な「可能性」を無視して、「大垣の未来、まちづくり」を語るとしたら、あまりにも空疎、おためごかしではないだろうか?
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「原子力災害対策」に関する私自身の立場は明確である。原発ゼロ!それしかない。
防災の第一は災害発生を予防すること。
地震は自然災害で人あって、発生することを間が止めることはできない、被害が可能な限り軽減されるようにに努めるしかない。
だが原発災害は人災である、地球上にもともとは存在しなかった大災厄を人間が作りだしたのだ。まずは原発を(そして再処理工場を、もんじゅを)動かさないこと。使用済み核燃料が存在する以上、すぐに危険はゼロにはならないが、まずは稼働させないことで災害の確率も、規模も小さくする努力はできる。
再稼働反対!
少なくとも札付きの危ない原発-老朽原発(美浜1、2号機、敦賀1号機はすでに40年超。美浜3号機も後3年で40年)、直下に活断層がある原発(敦賀2号機)-は動かすな!
岐阜県放射性物質拡散シミュレーションが示したサイアクのケースを直視すれば、避難計画は立つはずもない。何とか住民が避難できたとして、帰還、復興のメドも立たない。未来が描けない。大垣市は敦賀半島の核施設と共存できない。
こんなとてつもないリスクをとらねばならない理由はあるのだろうか?
原発なくても電気は足りてる!
国策だから犠牲はやむを得ない、命と未来をお国のために差し出せ、とでも? (安倍内閣ならそういうかも)。
大垣市が、岐阜県が、住民の生命の安全を第一に考えるなら、「敦賀半島の原子力施設の稼働は止めて」と国に言うべきだ。
敦賀半島の原子力施設は、大垣にとってのダマスカスの剣だ。落下の確率は高くないとしても。
頭上のダマスカスの剣が存在しないないフリをしても、問題は解決しない。
落下しないうちにダマスカスの剣を取り除く努力をしよう、将来世代のためにも。
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10日の原子力規制委員会は穴だらけの新規制基準を決めたという。
そっと「5年間猶予」を前提として滑り込ませて。
原子力規制委員会は、4月10日、新規制基準案を了承した
◆フクロウの会ブログ
【規制委傍聴報告】5年猶予…全く議論もなしに新基準パブコメ案の前提に
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2013/04/post-5a9f.html
◆ 【動画】新基準「5年猶予」~原子力規制委が議論せずに提示
(OurPlanet-TV、4/10、約7分)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1571
住民の生命より経済って?! 再稼働できないと「困る」(誰が)?!
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原発と人は共存できない。
樹齢1300年の薄墨桜。
