「徳山ダムの今」-(2) |
<承前>
徳山ダムの発電事業の不透明。
<参照>
201311.27 徳山ダム堤体の上から見る 工事中の徳山発電所。
•2013.11.27 徳山ダム行[ 2013-12-20]
http://tokuyamad.exblog.jp/21131179/
徳山ダム審(1995.12~1997.2)のときの総事業費は2540億演。うち「発電」は、最大出力42万4000kWで約478億円。2004年の事業費増額では(揚水発電計画がリストラされて)最大出力15万3000kWで約490億円。
単純にダム発電負担分/最大出力で単価比較はできないが、それにしても「高くなりすぎ」。
1996年に多くの資料がダム審資料として公開されたのを機に(ダム審では傍聴者からの質問等ば受け付けなかったので)、心ある国会議員を通して質問主意書を出したり、聴き取りを行ったりしていた。
電源開発促進法の下では、「電源開発株式会社」は完全に資源エネルギー庁の監督下にあり、資源エネルギー庁に対して、「説明せよ」ということが可能であった。2003年10月に電源開発促進法が廃止され、2004年10月には株式が上場された。「完全民営化」されることで、すべてが隠されることになった・・・。
徳山ダム事業費増額問題はその過渡期に当たっていた。まだ幾分かは、情報収集ができた時期になる。今から考えれば「古き良き時代」か?
◇ ◇
2003年6月7日、中日新聞は1面トップで
徳山ダム さらに1000億円超
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota/030607chunichi.pdf
と報じた。
•徳山ダム堤体盛り立てゼロメートル(0m)の小石~2003.6.7~[ 2008-12-03 14:26 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/9814211/
徳山ダムの従来の総事業費2540億円は、底をつきかけていた。
この年度中(実際は政府予算案ができる12月末まで)に、事業費の大幅増額が、もっといえば、その法的手続きが済まなければ、徳山ダム本体工事がストップしかねない、というギリギリの年であった。
私たちは2003年2月に名古屋でシンポジウムを行い、事業費増額を巡る攻防に備えていた。
→ 「徳山ダムをやめさせる会」結成。
http://www.tokuyamadam-chushi.net/backnumber/ 参照
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この「事業費増額問題、大荒れ」の際の聴き取り。
★ 2003年7月16日
電源開発(広報/M)から聴き取り
「① 水公団から費用増額についての検討依頼はない。
増額とは限らない、アロケの負担率は変わりうる。
② 中部電力と電源開発の共同事業である。中部電力もアロケを負担する。」
この②発言は、かなりビックリなので、河川局水政課に確認したのが以下、それにしても「広報」の立場の人間がこんなに根本的なことを「思い違い発言」するのはどうしてなんだろう?
★ 2003年7月18日
国交省河川局水政課/K補佐から聴き取り
「発電については(「中部電力と電源開発の共同事業」ではなく)受委託関係である。徳山ダムの場合は水公団が電源開発から委託を受けてダムを建設する。増額変更については(先に同意を取る、とかではなく)「契約変更」ということになる。
Q 「電発が、増額されるなら事業から撤退する、とした場合、ペナルティは?」
A 「決まったルールはまだ作られていない(→水公団事業からの利水者の撤退新ルールについて)。民営化といっても資源エネルギー庁が監督官庁であることは変わらない。公的な責任はある」
Q 「勝手にダム事業から抜けて良いのか、という責任もあるかもしれないが、予定外のコスト高の事業を継続して良いのか、という側面の責任もある。」
A 「仰るとおりです。」
★ 2003年7月23日
中部電力(広報・S)から聴き取り
Q 徳山ダム発電所・杉原発電所の発電開始時期と契約は?
A H26年度発電開始。電源開発とはこれから契約交渉に入る
Q 揖斐川に現に存在する中部電力の発電所の発電量は?
A 個々の発電所の発電量を公開すると中部電力に不利になる
横山・久瀬・西平3発電所のH14年度発電量 2億3580万kWh
70000kw+17000kw+10000kw=97000kw 26918kw
平均的発電出力/最大出力 27.8%
★ 2003年9月5日~9月8日
電源開発(広報/M)から聴き取り
Q 「8月8日の公団発表(事業費1010億円増額)を受けて、どういう立場か?」
A「発電経済性の面から受け入れるのは難しい。中部電力とも協議して態度を決める」「事業から降りるルールはないので、公団と協議する」
Q「1)発電所の建設費 (ダムの負担 478億円)
2)H27まで繰り延べる-HPとの不整合
3)どう考えるか/どうするか 」
A「 1)発電所の建設費 (質問主意書答弁書と同じ)
1196億8000万円 (ダム建設費負担分 477億5000万円を含む)
発電所本体建設費用は719億3000万円
ダム建設費について協議が終わった後で考える
2)H27まで繰り延べる-HPとの不整合
事業開始の繰り延べは地元と協議中でまだ決まっていない(2008年開始ということでHPには載っている)。電気事業連合会の資料で、電力需要は微増する。2014年には需要が発生する。
3)どう考えるか/どうするか
費用増加は受け容れがたい
★ 2003年9月5日~9月9日
中部電力(土木・N)から聴き取り
Q「1)中電はどういう法的立場か?基本協定?
2)増額をどう考えるか
3)H27に電発から電気を買わなくてはならない理由・根拠
A 「1)中電はどういう法的立場か?基本協定?
徳山ダム発電所で発電する電気を中電が全部買うという協定書(私企業間の協定書なので公表できない。締結時期も言えない)
2)増額をどう考えるか
水公団の示した増額案を精査しているところ。合理的な理由があれば・・・。しかし発電負担額の増加は受け容れがたい。
3)H27に電発から電気を買わなくてはならない理由・根拠
毎年春に向こう10カ年の予測・計画を出している
★ 2003年11月17日
電源開発(広報/M)から聴き取り
1)10月9日の事業評価監視委員会の後、国交省から「治水は重要だが、利水の見直しがありうる。発電にも影響がありうるので協力して欲しい」との説明があった。
2)発電計画を再検討する。(事業は継続する。運用開始、H26年は変わらない)
3)これ以上の費用負担増加は受け入れがたいという立場に変更はない。
4)
Q「遅くとも1996年には『2540億円では済まない』ことを知っていたはず。知りながら問題を放置してきた責任は?」
A「知らなかった」「共同事業者である水公団から正式な数字が示されるまではリアクションできない」
Q「知っていたはず。知らないとしたら、知らないことにおいて経営者責任が問われる。1996年以来の問題を明らかにして」
A「答えは変わらないと思う」
★ 2003年11月17日
中部電力(土木・水力G N)から聴き取り
1)Q「増額をどう考えるか?」
A「9月9日と変わらない。水公団の示した増額案を精査しているところ。合理的な理由があれば・・・。しかし発電負担額の増加は受け容れがたい。」
2)Q「ダム審のとき以来、(株主総会での事前質問でも質問してきたが)どういう検討をしてきたか?」
A「1996年段階では、増額を認識していなかった。 縮減努力をするよう要請し、公団も何とか総事業費の枠内に収めるように努力すると言っていた。1996年には電気は要ると思っていた。」
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事業費大幅増額問題が、「960億演増額、利水容量を減らして[治水]にシフト」という方向で収斂し始めた2004年春~初夏。発電事業に関する新聞報道。
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★ 2004年4月23日付 岐阜新聞朝刊一面
杉原ダム凍結検討/徳山ダム事業費増額/中電など、発電規模縮小へ
揖斐郡藤橋村に建設中の徳山ダムの事業費増額問題に絡み、追加負担を求められている電源開発(東京)と中部電力(名古屋)が発電計画を全面的に見直し、徳山ダムとセットで計画されている杉原ダムの建設凍結を検討していることが二十二日、明らかになった。
両社は徳山ダムの総事業費が九百六十億円増額されたことに伴い、発電容量に応じて計百八十億円の追加負担が求められているが、杉原ダムの建設を凍結し、発電規模を縮小することで追加負担を回避したい意向。
徳山ダムは治水と利水、発電を目的とする国内最大級のダム。現行の発電計画によると、徳山ダムでは電源開発が、下流約四・五キロに造る中部電力の杉原ダムにたまった水をくみ上げて再利用する揚水式発電により最大出力四十万キロワットを確保。杉原ダムは単独でも同二万四千キロワットの発電する。
関係者によると、これを徳山ダムだけで発電する方式に変更し、発電に利用する水量を削減。中部電力は電力需要の低迷から杉原ダム不要論も強かった。両社は近く検討結果を地元自治体に報告する。
藤橋村によると、杉原ダム建設のため約七十世帯が移転。村幹部は「これまで協力してきたのに凍結は心外だ」と話している。
県水資源課は「今のところ、杉原ダムを見直すということは聞いていない。徳山ダムとも関連するダムで、(建設凍結となれば)徳山ダムの計画見直しに、どんな影響が出るかが問題」と話している。徳山ダムの増額問題をめぐっては、同様に追加負担を求められている愛知、岐阜両県と名古屋市も負担圧縮のため、利水量を当初計画から四-五割削減する方針を決めている。
★2004年5月29日付中日新聞 朝刊
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20040529/mng_____sya_____000.shtml
杉原ダム建設を凍結へ 徳山ダム発電量削減の検討で
事業費増額が問題になっている「徳山ダム」(岐阜県藤橋村)をめぐり、発電事業者の電源開発(東京)が発電量の大幅削減を検討していることが二十八日、分かった。従来は、中部電力が下流に建設する杉原ダムの水をくみ上げる「揚水式発電」の計画だったが、徳山ダム単独の発電に変更、これに伴い杉原ダムの建設は凍結となる見通し。電源開発と中電は週明けに同村へ伝えるが、固定資産税収入などを見込んでいた藤橋村など地元の反発は必至とみられる。
従来の計画によると、徳山ダムは四・五キロ下流に建設する杉原ダムの水も利用する揚水式発電。最大出力は徳山ダムが四十万キロワット、杉原ダムが二万四千キロワット。
しかし国土交通省が四月末に発表した事業見直し案では、徳山ダムの発電に必要な高さを維持する「底水容量」が10%減の二億五千三百六十万トンとされ、発電容量は事実上減少。このため電源開発などが計画の見直しに入っていた。関係者によると、電源開発は徳山ダムでの発電量を62・5%削減し、十五万キロワットにする。
杉原ダムは、総貯水量千七百六十万トン、高さ約六十メートル。中電は電力需要の低迷で、完成時期を二〇〇八年度から一四年度に延期することを地元に伝えていた。
中電は電力自由化による競争激化でコスト削減を加速しており、これまで珠洲原子力発電所(石川県)を計画凍結、木曽中央水力発電所(長野県)を計画中止している。
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★2004年6月1日付 朝日新聞
★2004年6月1日付 中日新聞
★2004年6月1日付 中日新聞(岐阜県版)
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この項、続く