「徳山ダムの今」-(5) |

<承前>
(1)で、以下を紹介しておくべきでした。 右の写真は、5月7日撮影の徳山水力発電所。
☆ 中部電力発表(2014年5月15日)
徳山水力発電所2号機の営業運転開始
http://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/3240018_19386.html
別紙 徳山水力発電所の位置図・全景[PDF:1,084KB] http://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/__icsFiles/afieldfile/2014/05/15/0515.pdf
弊ブログ記事
•徳山水力発電所 営業開始 1年延期[ 2011-12-02 17:44 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/16900023/
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2011年3月11日の福島第一原発の大事故以来、電力会社は「原発はクリーンなエネルギー」というウソを大宣伝するのは少しは控えているようだ。「原発は低コストのエネ次ー」というウソはまだ付いているが、それに騙される人は激減した。
だが電力会社がウソを吐かなくなったわけではない。
「水力発電は次世代型の自然再生エネルギー」というウソだ。(2014.6.26の中部電力株主総会で、堂々とそう説明していた)
水力発電の全てが悪い、ダメだ、とはいわない(それを言えば、煎じ詰めれば私たちが-家庭の消費電力を減らす努力はしているといっても-、エネルギー多消費型の経済活動に依存していることが「悪い」)
だが、大規模なダムと発電所を作り、高圧の送電線を使って遠方まで電力を送ることを「推奨すべき次世代型の自然再生エネルギー」などと言わせてはならない。
過去の過ちを正当化し、未来にまで同じ過ちを犯し続ける愚(罪)に通じるから。
2012年に記事を書きかけたが、諸事情で「お蔵」にしていた記事、以下。
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徳山水力発電所は「自然エネルギー」か?
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★ 岐阜新聞 2012年08月24日

地下掘削や鉄管設置進む 中電、徳山水力発電所を公開
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20120824/201208241003_17865.shtml
[写真]発電機や工事資材を搬入するための縦穴。直径12メートル、深さ50メートルある=揖斐郡揖斐川町、徳山水力発電所建設現場
◆2014年発電へ
中部電力は23日、揖斐郡揖斐川町の徳山ダム直下で建設中の徳山水力発電所を報道陣に公開した。
徳山水力発電所は2号機が2014年6月、1号機が15年6月に発電を開始する予定で工事が進んでいる。最大出力は1号機が13万1000キロワット、2号機は2万2400キロワットで、一般水力発電所としては同社最大規模。工事の進ちょく率は50%ほどで、今後加速していく。
現在は1日150人から200人の作業員が工事に従事する。地下に発電機を設置するため、発電機や工事資材を搬入するための縦穴や、発電機を置く主機室を掘削。また、導水路内で水を流す水圧鉄管は直径5メートルと大きく運べないため、現場脇で半円状の鉄管部品を溶接して導水路内に搬入している。
徳山水力建設所の浦上博行所長は「水力は純国産のエネルギーで自然エネルギーへの注目も高まっている。これから工事のピークを迎える。地元の協力、理解をいただきながら、安全第一で取り組む」と話した。
★ 岐阜新聞 2012年08月26日
県内水力、関電支える 木曽川12ヵ所で48万キロワット
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20120826/201208261109_17892.shtml

◆流域全体で原発1基分
「節電の夏」を迫られている関西電力を、岐阜県でつくられた電気が支えている。県内を流れる木曽川には関電の水力発電所が12カ所あるのだ。木曽川流域の全33水力発電所の出力は104万キロワットと、ほぼ原発1基分に相当。関電全体の発電能力に占める木曽川流域の割合は3%程度だが、安定供給できる電力として存在感が高まっている。
定期点検を延期して発電を優先させる。効率的な水の運用を進める。関電は今夏、木曽川の水力発電所でこうした対策を取っている。関西により多くの電力を送るためだ。
関電管内では2010年の夏と比べて10%の節電目標が掲げられている。今のところ電力は安定的に供給され、計画停電も回避できる見通しだが、関電東海支社(名古屋市)の担当者は「火力発電所が1カ所でもダウンしたら、計画停電の可能性もある」と話す。
その危険を防いでいるのが木曽川の発電網だ。関電が保有する県内の水力発電所は東濃、可茂地域の木曽川に広がる。最大出力は合計48万8000キロワット。中部電力の県内の44水力発電所、計279万4000キロワットより規模は小さいが、7月に再稼働した大飯原発(福井県)3、4号機を除く全ての原発が停止している関電では貴重な戦力だ。
木曽川の水力発電所は関電東海支社が管理運営する。発電所は全て無人で、東海給電制御所(名古屋市)が遠隔コントロールする。電力は関市などの開閉所を通り、約200キロの送電線を通して関西に送られている。
水力発電は水利権が複雑に絡むものの、木曽川が枯れない限り安定的に発電が見込める。同支社担当者は「水力発電は原発と同じくらい重要。1キロワットでも多くのクリーンエネルギーを関西に届けたい」と話す
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原発の電気は要らない!という人々の気持ちを「水力発電所は自然再生エネルギーだから良い。徳山水力発電所は先見の明だ」というふうに結びつけられては困る。
この岐阜新聞記事がそうだ、というのではないが、電力会社の「水力発電」そういう中部電力のプロパガンダに乗せられそうな記事も見た。
あまりにも大きくて、「死に水」(ホントに貧酸素の死の水。異常渇水時に流れ出たら下流の生物が大変)が3億トンも貯まってしまうようなダムが「環境に優しい自然エネルギー」と称賛されていいはずがない。
中電が徳山水力発電所を公開した記事が各紙に載って、それを見た人からといくつかのメールの やりとりがあった。
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>巨大ダムの建設費とダムの地下に建設する水力発電所と。両方
>あわせて電力の原価はいくらになる?徳山ダムの発電コストは?
水力発電は、最大出力でフル稼働する時間は非常に短いので、
(ダム建設費負担分+発電所建設費)÷ 最大出力
の計算では、コストの評価としてあまり意味がないのではないか、と、(反原発の立場から)電力コストを計算している人はいっています(私もそう思う)。
1990年代、「徳山ダム建設の総事業費2540億円」の時代から、Jパワーの「親」である資源エネルギー庁は「これ以上少しでもコストが上がれば採算がとれない」と言っていました。
事実はコストが増大したのだから、採算がとれるはずがない。それでも事業は止まらず、発電所が建設されてきました。2007年の「事業主体の変更。Jパワーから中部電力への権利譲渡」に何か大きな隠し事がある、と考える所以です。
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>なぜこんな高比率の底水を生む欠陥ダムをつくったのか
1957年に浮上した徳山ダムが、電源ダムとしてはコスト的に引き合わない、といったん消えかかった頃に、「水資源開発促進法」ができました。
水資源ダムとして再浮上したときにも、「ダムをつくるからには大きなことは良いことだ。高度成長なのだから、使い道はきっと出てくるだろう」とばかり、地形上つくりうる最大のダムとなったようです。
高比率の底水は、ダム事業費の負担からいっても、とてもヘンです。 使い道のないものを誰かが-結局は納税者あるいは水道水ユーザーが-国民が-負担することになってしまいます。
どうやら、「もともと電源開発ダムとして計画されたことへの配慮」として、発電落差をつくるためにできるだけ高い(ゆえに最も大きな)ダムが計画され、その大きな底水分は、利水と治水に押しつけた、ということらしい。(1996年から数年、このことをシツコク事業者に訊きました。言を左右にするのは彼らの得意とするところですが、結局いちばんそれらしいのが「発電落差をつくるため」でした)
長良川河口堰や他のダムもそうですが、「作る」と決めてしまうと、不合理なことを、一般の人には押し隠しながら、どんどん積み重ねてしまう、一つの典型のように思います。
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この項、いったん終了。
関連記事をまたアップします。