再び「長良川」-その1- |
連想ゲーム風にいえば「長良川」には「清流」「鮎」「鵜飼」というような言葉が続くのだろう、いや、もしかすると「河口堰」かもしれない。
昨年秋から、何かというと「長良川」がマスコミに登場している。再び(何度目か)「長良川」に世間の耳目が集まるかもしれない。
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2010年、海なし県の岐阜で「豊かな海づくり大会・ぎふ長良川大会」が開催された。
大いに「便乗」し、長良川の抱える問題を訴えた。
市民による「豊かな海づくり大会」などについては
弊ブログ 2010年6月
http://tokuyamad.exblog.jp/m2010-06-01/
カテゴリ:長良川の話題 http://tokuyamad.exblog.jp/i8/13/
この年の秋、生物多様性COP10が名古屋で開催されることもわかっていた。長良川-生物多様性と意識的に話題を繋げることで、2011年の「村々コンビ」の共同公約を引き出したといえる。
そして丸4年。
2期目を目指して2月1日投開票の愛知県知事選に立候補している現職・大村秀章氏。前回は、「村々コンビ」で自民党に楯突く姿勢をアピールして大勝した。しかし今回は様変わり。「盤石の相乗り」で、国会でも愛知県議会でも巨大勢力である自民党の意向に逆らうことは公約にしていない。まあ、元官僚・元自民党の政治家らしい振る舞いというべきなのだろう。
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★ 2015.1.11 朝日新聞
朝日新聞 2015年1月11日05時10分
長良川河口堰、開門調査いつ実現 周辺自治体と連携なし
http://www.asahi.com/articles/ASH194HWPH19OIPE00N.html
完成から20年を経ても、環境への影響が問われ続ける長良川河口堰(かこうぜき)。15日告示の愛知県知事選で再選をめざす現職の大村秀章氏(54)は、開門調査を前回に続き公約した。だが、問題なしとする国などとの調整はほとんど進んでいない。どう実現するのか、期待した県民は言動を注視する。
6日発表された大村氏の300の公約集には1行、「長良川河口堰の開門調査等」とある。先月の出馬表明会見では自身から言及せず、質問に「調査をという投げかけはしていくべきでは」と語るにとどめた。
■前回の愛知県知事選は公約の柱
前回は違った。国連生物多様性会議が名古屋市で開かれた直後で、市長選とのダブル選を控えた2010年末に河村たかし市長と河口堰を視察。「まず開門調査をすべきだ。公約の柱にします」と表明した。
国を巻き込もうと、地元との協議会設置を当時与党の民主党幹部に打診、前向きな反応を得た。だが、河口堰建設を進めた自民党政権が12年末に復活。国土交通省中部地方整備局は「問題を感じない」と協議会にすぐ応じる構えはない。
長良川が境の隣県とも開門調査へ調整が進まない。海水がさかのぼり塩害が起きる可能性がネックで、三重県の鈴木英敬知事は取水に影響するとして「困る」。アユなどの生態系回復が望めるはずの岐阜県も、自民が最大会派の県議会が事実上反対の「適正運用」を決議。知事同士で国に脱ダムを迫った大阪、京都、滋賀のような連携はない。
愛知県では大村氏当選後の11年に専門家チームが発足。河口堰完成後の環境への悪影響や「水余り」があるとし、5年以上の開門調査を提言した。その後もある委員が河床を独自に調べ、国交省が言う塩害が起きない可能性を指摘した。
だが13年度末、県は開門期間として春と秋の各40日程度を一案とする報告を出した。専門家チームから求められての報告だが、「5年以上」との差は大きい。検討したのは、河口堰の目的でもある水資源開発に携わってきた職員らだった。
■「難しいことはわかっている」
大村氏の発言は弱含む。昨年10月には県主催の講演会で「いったんできた河口堰を開放し、調査することは外国でもなかなか例がない」と説明。「難しいことはわかっているが、引き続き提案したい」と述べた。
ネット上では大村氏に開門調査の公約実現を求める署名運動もある。大村氏の講演会に来ていた元小中学校長、伊奈紘さん(69)も署名した。自民党政権が愛知県設楽町で進める設楽ダム建設にも反対で、前回知事選の際、大村氏は会って意見を聞いてくれた。
態度を保留した大村氏だが、県議会最大会派の自民や地元首長らが建設を求める中、専門家の意見も聞き13年末に容認。今回は自民県連の推薦も受ける。開門調査はどうなるのか――。伊奈さんは大村氏に環境政策への意欲を認めつつ、「政治家なら成果を出してくれなきゃ」と話す。
知事選には県社会保障推進協議会の事務局長、小松民子氏(64)も共産党推薦で立候補する。7日に発表した公約では長良川河口堰に触れず、質問に「建設に反対したし、開門(調査)は進めたい」と答えた。(編集委員・伊藤智章)
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〈長良川河口堰〉 三重県桑名市にあり、旧水資源開発公団が利水と治水を目的に95年、事業費1500億円で完成。建設の閣議決定は高度経済成長期の68年だが岐阜県の漁民らの反対で着工が遅れ、本流にダムのない長良川に人工構造物を造ることへの反対が88年の着工前後に全国に広がった。水利用は増えず、開発した毎秒22・5トンのうち愛知、三重両県で約3・6トンにとどまる。
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愛知県、名古屋市では、長良川の話題は遠のいているかのようだ・・・だがしかし、である。
なんだかんだ言っても、長良川は岐阜の川。岐阜県の人口の半分は長良川流域住民である。岐阜県が「清流の国ぎふ」と謳うとき、その言葉を使う側も聴く側も、まず「長良川」が頭に浮かべるであろう。
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★ 岐阜新聞 2014年10月22日09:17
長良川「里川における人と鮎」 世界農業遺産候補に
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20141022/201410220917_23565.shtml
写真:世界農業遺産の候補に選ばれた長良川=岐阜市上空(本社ヘリから)
農林水産省は21日、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産の候補に岐阜、和歌山、宮崎各県の3件を選んだ。岐阜県の候補は、長良川の鮎漁を中心とした「清流長良川の鮎~里川における人と鮎のつながり」。長良川流域の漁業資源や水環境、人の生活などの連関を「里川」をキーワードにした循環システムとして捉えているのが特徴。県や漁協などでつくる協議会が年内にも認定申請書をFAOへ提出し、来年5月ごろに予定されるFAOの国際会議で認定の可否が決まる。
このほか候補となったのは、和歌山県の「みなべ・田辺の梅システム」、宮崎県の「高千穂郷・椎葉山の森林保全管理が生み出す持続的な農林業と伝統文化」。全国から7件が名乗りを上げ、農水省の専門家会議が現地調査などを経て20日の最終審査で3件を承認地域に選んだ。
岐阜県の候補は、長良川上中流域(郡上市、美濃市、関市、岐阜市)で、豊かな森林が生み出す長良川の清流に育まれた鮎を中心として、鵜飼や水舟といった伝統漁法や水辺景観、食文化、生態系機能などのつながりを「里川」の循環システムとしてアピールしている。
県内では、7月に活動母体となる「清流長良川の農林水産業推進協議会」(玉田和浩会長)が設立され、農水省へ申請。8月に関市でシンポジウムを開くなど、県民への理解浸透に努めてきた。今後も出前講座などを通じて、認定に向け機運を高めていく。
【世界農業遺産】 正式名は「世界重要農業遺産システム」。審査はおおむね2年に1度行われ、これまでに13カ国31地域が認定済み。日本では①トキと共生する佐渡の里山(新潟県)②能登の里山里海(石川県)③静岡の茶草場農法(静岡県)④阿蘇の草原の維持と持続的農業(熊本県)⑤クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環(大分県)-の5地域が登録されている。
★ 朝日新聞 2014年10月22日03時00分
「清流長良川の鮎」世界農業遺産の候補に
http://www.asahi.com/articles/ASGBP4130GBPOHGB005.html
農林水産省は21日、県内の「清流長良川の鮎(あゆ、長良川上中流域)」など3地域を、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産の候補に選んだと発表した。来年5~6月ごろに開かれる国際会議で認定されるか決まる。
(中略)
県によると、認定されることで知名度が上がって観光客が増えたり、住民の水に対する意識が高まったりする効果が期待できるという。
「清流長良川の鮎」の対象エリアは岐阜、関、美濃、郡上の4市の長良川上中流域。長良川鵜飼(うかい)のほか、天然アユを増やすための孵化(ふか)放流、特別天然記念物のオオサンショウウオや天然記念物の淡水魚ネコギギが生息している豊かな自然などをアピールしていく。今後は12月にFAOに認定申請書を提出し、来年2~3月に国連の視察団が現地を視察する見通し。
古田肇知事は「(会議がある)来年の春まで全力で、どのように世界へアピールしていくか、いろいろと考えたい」と話した。(森直由)
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農業遺産に登録されれば観光客が増える・・・そうした意識ばかりで良いのだろうか。
中日新聞は11月16日の「ニュースを問う」で
世界農業遺産をめざす長良川流域 清流守る努力こそ財産に
という記事を載せた。大きいのでPDFファイルにて。
2014.11.16 中日「ニュースを問う」
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota10/20141116chunichi.pdf
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「認定に向けて機運を高める」べく、こんな話も出て来る。
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◆ 中日新聞 2014年12月30日 朝刊
アユ稚魚の飼育場を増設 岐阜県、漁獲量日本一目指す
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2014123002000055.html
アユ漁獲量の日本一を目指し、岐阜県は二〇一五年度、河川に放流する稚魚の飼育施設の増設に着手する。完成する一八年度から三年ほどで、漁獲量を現在の一・六倍以上に増やす計画。県はアユが生息する長良川流域の世界農業遺産への登録を目指しており、減少が続く天然アユの復活に力を入れる。
県水産振興室によると、河川でとったアユから卵を取り出して人工授精し、放流用の稚魚を育てる「県魚苗(ぎょびょう)センター」を増設する。美濃、関両市にある飼育施設をそれぞれ広げ、年間約六十トンの放流量を十トン以上増やす。採卵用のアユを育てる施設も新設し、放流する稚魚を安定的に確保する。
岐阜県の一二年のアユ漁獲量は二百十六トンで、神奈川県の三百四十六トン、茨城県の三百五トンに次いで全国三位。自然環境のアユは、稚魚になるまでにほとんどが食べられたりするため、育てた稚魚の放流量を増やすことで、二一年には三百五十トン以上を狙う。
「清流の国」を掲げる岐阜県は、鵜飼いを中心とした伝統的なアユ漁と、アユが生息する水質の清らかさを国内外にアピールするため、長良川流域を、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に登録することを目指している。三カ所の国内候補地の一つに選ばれ、一五年五月以降の国際会議で出る最終結果を待つ。
ただ河川に生息するアユは、病気の流行や環境の変化などで減少傾向にある。全国の漁獲量は二十年前の五分の一以下に落ち込み、岐阜県でもピーク時の一九九二年の13%ほどにまで減った。県は今回の取り組みで、放流魚が自然界で繁殖して生息数が増えることも期待。担当者は「アユは県の貴重な財産。漁獲量日本一だけでなく、アユが多い『豊かな川』を実現したい」と意気込む。
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今は、かなりの量、他の地域で獲った(飼育した)アユを放流していると聴く。だとすれば、その分を長良川でとったアユ由来の稚魚を長良川流域の飼育施設で育てたもおに置き換えることは「よりマシ」であるといえるだろう。
けれど、この記事では、岐阜県が「(長良川のアユについて)人為的手段をもって漁獲量を増やしさえすれば良いのだ」と考えているように読めてしまう。
長良川のアユは「野生生物としては健全な状態ではない」のが現状である。漁獲量日本一を目指すとしてさらに人為的要素を拡大することは、「世界農業遺産」としてもどうなんだろう?
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★ 岐阜新聞 2014年09月20日09:48
長良川の鮎、レッドリスト候補 岐阜市版、漁獲量の激減危惧
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20140920/201409200948_23328.shtml
写真:産卵時期に川を下ってきた鮎=昨年11月、岐阜市の長良川
清流長良川の象徴で、「県の魚」にも指定されている鮎が、岐阜市が作成作業を進める「市版レッドリスト」への記載候補「第1次選定種」になったことが19日、分かった。長良川での漁獲量が減少し、卵を人工ふ化させて長良川河口堰(ぜき)下流に放している現状から、人為的な手助けで遡上(そじょう)数を維持している実態が懸念されたとみられる。
今後、絶滅危惧や準絶滅危惧などのランク付けがなされるが、リスト作成は草案段階で、シンポジウムなどを通じて出された市民からの意見で、リストから鮎が外れる可能性もある。
市版レッドリストは、2009年度から5年間行われた「自然環境基礎調査」の成果を生かそうと、確認された魚類61種を含む5366種を対象に選考。識者や研究者でつくる検討委員会の委員らが先月、危機にある約560種を記載候補に抜き出した。
長良川流域(県内)の鮎の漁獲量は、1992年の1029トンに対し、2004年には180トンと5分の1以下に落ち込んだ。研究者らでつくる「長良川下流域生物相調査団」は10年の報告書で、1995年に運用を始めた河口堰の影響を指摘。「仔(し)魚の海域への流下が堰によって妨げられたことによる」とした。
県水産振興室によれば、遊漁者の減少や97年に長良川で初確認された冷水病などの感染症、カワウの食害も打撃になっているという。
事態を受け、流域7漁協でつくる長良川漁業対策協議会は2005年、親魚から採った卵を河口堰脇の人工水路でふ化させる事業を開始。当初は500万粒で始まり、13年には最高の1億200万粒を持ち込んだ。遡上数は回復してきたが、漁獲量は伸び悩んでいる。
鮎のレッドリスト記載は、隣接する長野県が「野生絶滅」(04年)、奈良県が「絶滅寸前種」(06年)。いずれもダムなどの河川構造物が遡上や降海に与えた影響が指摘されている。ただ、長野県は指定後に遡上例が見つかり、本年度末に「絶滅危惧ⅠA類」に改訂される見通し。滋賀県も遺伝上の特性から「分布上重要種」に指定している。
岐阜市の場合、リストに記載されても釣りや鵜飼を含む漁に影響はないとみられるが、後に策定を目指す「生物多様性地域戦略」の内容次第では、流域の開発で配慮が求められるケースが出てくる可能性もある。
検討委は20日に岐阜大で開かれる公開シンポジウムで第1次選定種を公表。市民の意見も反映させながら、絶滅の緊急度に応じて4、5段階程度のランク付けをし、年度内に正式なリストをまとめる予定。
★岐阜新聞 2014年09月21日09:40
第1次選定の421種公表 「岐阜市版レッドリスト」候補
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20140921/201409210940_23335.shtml
写真:公開シンポジウムで鮎を準絶滅危惧種候補とした理由を説明する向井貴彦岐阜大地域科学部准教授=岐阜市柳戸、岐阜大
絶滅の恐れがある野生動植物を記載した「岐阜市版レッドリスト」の年度内作成を目指す同市は20日、記載候補の「第1次選定種」421種を公表した。長良川の鮎は、生息条件の変化で絶滅危惧に移行する可能性がある「準絶滅危惧」とする案が検討委員から示された。
内訳は、植物268種、ほ乳類11種、鳥類23種、は虫類6種、両生類11種、魚類36種、昆虫類20種、貝類42種、甲殻類4種。ギフチョウやスイレン科のヒメコウホネも盛り込まれた。
リストは「市版レッドリスト等作成検討委員会」(委員長・田中俊弘岐阜生物多様性研究会代表)の検討委員5人が作成に当たっている。第1次選定種は、同市柳戸の岐阜大で開かれたシンポジウムで発表された。
席上、魚類を担当する向井貴彦同大地域科学部准教授は、鮎を準絶滅危惧と提案した理由について「1990年代半ばから漁獲量が激減しており、増殖のため受精卵をふ化・放流している。人の手で個体群を維持しており、野生生物として健全な状況ではない」と説明した。
同市は市民から寄せられた意見を踏まえ、第1次選定種をランク付けしたレッドリスト案を11月23日の次回シンポジウムで公表する予定。
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その11月23日の公開シンポジウムにて。向井准教授。
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真冬に・・・頑張ってるぅ。
続く。