満面の水 どう使う-朝日新聞記事を巡って- (1) |
2月1日の朝日新聞に、「日本一の徳山ダム」の記事が載った。
(でら日本一 東海) 満面の水 どう使う
2015年1月31日18時03分
http://www.asahi.com/articles/ASH1W5T90H1WOIPE01Z.html
- - - - - - - - - - - - - -
木曽3川のひとつ、揖斐川最上流部の山奥に中部電力徳山水力発電所(岐阜県揖斐川町)はある。民家のような外観の建物の地下で昨年11月、発電機の据え付け作業があった。
天井からつるされたクレーンを使い、直径8・3メートル、重さ約200トンもある筒状の装置がゆっくりと床に置かれた。下にある水車が回り、中のコイルで発電する。計画から半世紀を経過した発電事業はようやく最終段階に入った。本格発電の開始は今年6月の予定だ。
発電所が使う水は、隣の徳山ダムのダム湖。その総貯水容量は6億6千万トンで、日本のダム湖で最も多い。静岡県の浜名湖の約2倍だ。
【写真】徳山ダムがある岐阜県揖斐川町は県有数の豪雪地帯でもある。ダムの堤の直下(写真左下)には、発電所の建物がある=朝日新聞社ヘリから、吉本美奈子撮影
ダム計画が浮上した1957年は、政府が経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言した翌年だ。濃尾平野を長年悩ませてきた洪水対策に加え、右肩上がりの経済成長に必要な水や電気をまかなうことを目的とする一大プロジェクトだった。
事業費は3327億円に達し、旧徳山村(現揖斐川町)の全466世帯に移転も強いた。南北朝時代に北朝に敗れた新田義貞が隠れていたとの伝説もある歴史ある村。87年3月の廃村式典で、神足正直・村議会議長(当時)は「今まさにこの地を失うことは痛恨極まる」と、無念の思いを残した。
そうした犠牲のうえに立つダムは、どれだけ世の役に立っているのだろうか。
揖斐川中流の岐阜県大垣市。荒崎地区では大雨が降ると支流から水があふれていたが、ダム完成後はそうした事態は招いていない。大垣市治水課の担当者は「ダムの効果が出ている」とみる。
ただ、人口減を迎えて低成長が定着したいま、経済成長を前提にした利水や発電での活躍は、むしろ期待外れだ。
発電所規模の最大約15万キロワットは76年に立てた計画の半分以下。工業用水や水道用水として毎秒6・6トン使うはずだった水はいまだに一滴も使われていない。国の予測によると、木曽川水系の水は徳山ダムがなくても、通常時は5割以上も余る。「10年に一度」の渇水時でもまだまかなえる。
国土交通省は、ダムの水を使えるようにと、新たに木曽川に水を通す導水路の新設を計画する。「10年に一度以上の渇水に備えるため」という。必要な事業費は890億円。「コンクリートから人へ」をスローガンにした民主党政権のもと、2010年に必要性の再検証を始めた。だが、それから4年余り。建設の是非は、結論を出す時期すら決まっていない。(大日向寛文)
■伸びぬ水需要、導水路には疑問 岐阜大教授・富樫幸一さん
1973年の当初計画から見直しの連続だったのが徳山ダムの歴史です。毎秒15トンだった水道用水や工業用水向けの水量は、2004年の見直しで6・6トンと半分以下に。「成長が続いて水需要が右肩上がりで増える」という想定が外れたからです。
これからは人口減少に加えて、節水型トイレなどへの切り替えも進み、水需要はさらに減っていくでしょう。国、自治体ともに未曽有の借金を抱えるなか、新たに徳山ダムの水を木曽川まで導水路で運ぶ余裕があるのかどうか。環境や住民の生活を壊してまでダムをつくる時代はもう過去のことではないでしょうか。
- - - - - - - - - - - - - -
ダムで「開発」した水の使い途はないのは明白である。
特に岐阜県は、使い途の検討すらしない(できない)でいる。
自噴井のある水の都・大垣。水道水減は100%地下水である。
まず水源費が安い、水質も良い、浄水場も要らない。地下水なので、冬は暖かく、夏は冷たい。
「徳山ダムを作って貰って有り難い」と言いたがる議員だって、こんな良い地下水水源を放棄してダム依存する揖斐川の表流水に水源を切り替えよう、そのための専用施設建設に予算を計上しよう、などとは言い出せるはずもない…市民にソッポをむかれること必定、「次の選挙が危ない」状態になってしまう。
徳山ダムの水を使うという水道事業者が存在しないので、岐阜県は徳山ダム建設費のうちの新規利水用途の負担分を、実に一般会計から支払い続けている。明らかに地方財政法6条違反だが、裁判所は「将来にわたって絶対に使い途がないと断言できない」という論理で岐阜県の「裁量」を認めてしまっている。
参照 弊ブログ
•「徳山ダムの今」その続き[ 2014-07-12 23:37 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/22504468/
愛知県や名古屋市はお金持ちなのかお人好しなのか、新たに890億円の導水路建設を進めるということになっている(ホントにちゃんと検討した上で、そんなお金を出す気なのかどうか、よくわからない。「徳山ダムができちゃったから」以上の理由があるのだろうか?)
「完成」後も、徳山ダムは多くの問題を抱えている
弊ブログ カテゴリ:現在の徳山ダム問題
http://tokuyamad.exblog.jp/i2/
◇ ◇
2月16日。新規川堤防上から伊吹山をのぞむ。
2月19日の迎春(旧暦の元旦)を経て、心なしか伊吹山の白さも緩んできているように感じる。
続く
(2)(3)は
カテゴリ:荒崎水害と流域治水 http://tokuyamad.exblog.jp/i11
に分類、掲載。