満面の水 どう使う-朝日新聞記事を巡って- (2) |
•満面の水 どう使う-朝日新聞記事を巡って- (1)[ 2015-02-20 18:02 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/23707840/
(承前)
私の周囲では、当然ながら、記事中の 【揖斐川中流の岐阜県大垣市。荒崎地区では大雨が降ると支流から水があふれていたが、ダム完成後はそうした事態は招いていない。大垣市治水課の担当者は「ダムの効果が出ている」とみる。】 という部分にブーイングが出た。
大垣市治水課の担当者に直接訊いてみたが、時系列的に徳山ダム完成後には大きな浸水被害が出ていない、という「事実」を指したという以上の意識があるのかないのか、よくわからなかった。県がそんなふうに言っている、ということかもしれない。
2012年9月出水のとき、岐阜県は「徳山ダム・横山ダムの連携操作で洗堰地点で0.5mの水位低下効果があった。もし徳山・横山ダムの連携操作、河川改修が無かった場合、洗堰で約45cmあふれたことになる。」と発表している。
岐阜県トップ > 県土づくり > 道路・河川・砂防 > 河川 > 安心で安全な郷土づくり > 河川改修事業
> 平成24年9月洪水における徳山ダム・横山ダムの連携した防災操作、河川改修の効果について
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/anshin/kasen-kaisyu/24-9kaisyu-koka.html
中部地方整備局木曽川上流河川事務所と水資源機構の発表を使っているわけだが、この両者、2004年10月の長良川の出水で「長良川河口堰に2mの水位低下効果があった」という口から出任せ(と何度でも言いたい。そもそも河口堰自体が塩止め堰であって洪水対策に直接の効果などあるはずがない。河口堰建設の理由とされた”浚渫”効果の前提となる数字も現在の河道の実態もきちんとデータ開示されていない)を十数年間も「長良川河口堰の治水効果」として使い続けている役所の言い分をそのまま丸呑みして受け止めるわけにはいかない。
「大谷川洗堰地点で0.5mの水位低下効果があった」という言い分を認めるとして、それは「徳山ダムの効果」なのか?実は木曽川上流河川事務所もそうは言っていない。「徳山・横山ダムの連携操作+河川改修による効果」だと言っているのだ。
(さらに「徳山・横山ダムの連携操作の効果」の場合、「もし徳山ダムがなくて横山ダムだけであったらピークを低減できなかった」と主張しているのかどうかも不明。「曖昧さ」による印象操作こそキモなのか?)
上記ページ中の《水位低下効果/大谷川洗堰》
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/anshin/kasen-kaisyu/24-9kaisyu-koka.data/03ootani-doro.pdf
図の一部を拡大する。

この説明図でも、牧田川・杭瀬川合流部の改修(この時点で引き堤と旧堤撤去工事は完了しており、河積は確保されていた)と大谷川洗堰の1.05m嵩上げ工事の完成(2008年3月)が大きく寄与していることは明らかだ。
弊ブログ
•堤防をなんとかするのが先でしょ?[ 2012-10-05 17:49 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/18037143/
•荒崎水害訴訟結審・来年2月26日判決[ 2008-10-28 01:52 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/9507384/
住民の願いを裏切って/水害常襲地域の河川改修費を削って徳山ダムに投入!
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota/arasaki-tisuitokkai.pdf
◇ ◇
しかし、この「大谷川洗堰の1.05m嵩上げ工事」と徳山ダムは関係ない、とも言い切れない。技術的・実際的「効果」はほとんどないと私は思っているが、社会的な関連性は大きい。
「徳山ダム建設推進」と「洗堰嵩上げ(TP7.8m →TP8.85m)への対岸及び上流域の同意」はリンクさせられていた。
大出水の場合に河道から洪水を逃がす「洗堰(越流堤)」の嵩上げ・閉め切りは、河道水位を高くすることになり、対岸や上下流域の住民にとっては危険の増大になってしまう。だから、1990年の大浸水被害を経て、大雑把ながら「まず洗堰を嵩上げし、将来的には左右両岸堤を同じ高さまで嵩上げする」としていた「相川全体計画」は、なかなか進捗せず、実質的には棚上げされてしまっていた。
そこに「徳山ダムさえできれば…」論が登場する。
およそ以下のような論法だ。
①徳山ダムによって揖斐川本川の水位が下がる。
②揖斐川本川の水位が下がれば牧田川から揖斐川への流れがよくなる
③牧田川の流れが良くなれば杭瀬川の流れも良くなる(牧田川からの背水もなくなる)
④杭瀬川の流れが良くなることで、相川への背水もなくなる
⑤相川の水位が下がり、流れも良くなるので大谷川の水位も下がる
⑥大谷川全体の水位が下がるので越流が回避される。将来的には左右両岸堤を嵩上げして同じ高さにする流域住民の合意も形成できる
こうして対岸や上流の住民に洗堰嵩上げを承知させ、「徳山ダム完成と同時に洗堰(越流堤)嵩上げする」こととしたのだ。荒崎地区住民は必死に「徳山ダム早期完成要望署名」を集めることになってしまった。
大垣市治水課にしてみれば、こうして洗堰の1.05m嵩上げがようやく実現できたのだから、「ダムの効果が出ている」のである。
◇ ◇
2月21日。経産省前脱原発テント。
強権・安倍政権のやり方からして、そう遅くないうちにテント破壊攻撃があると覚悟しなければならないだろう。

続く