「長良川河口堰の耐震化、未着工」&岐阜県の治水事業&水道事業 |
毎年岐阜県河川課から貰って、ブログにアップしている
「岐阜県 治水関係事業費の推移」グラフ →
下の方に大きなサイズのものを載せています。
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<2015.7.31 中日新聞 1面>
長良川河口堰の耐震化、未着工
調査遅れ「危険を放置」
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015073102000080.html
[写真]耐震性調査が終わらない長良川河口堰=三重県桑名市で、本社ヘリ「おおづる」から
本格稼働から20年を迎えた長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)について、管理する独立行政法人水資源機構(さいたま市)が、東日本大震災後に改定された新指針に基づく耐震性調査を終えていないことが分かった。調査結果がないと、必要な耐震工事に入れないため、河川の専門家は「危険性を放置している」などと、機構の対応を批判している。
国土交通省によると、震災翌年の二〇一二年二月に耐震性調査の指針が改定された。国や水資源機構が管理する堤防や水門、堰などが対象で、想定される震度や地盤のデータを基に液状化や津波、地盤沈下による影響を調べ直すことになっている。既に国と水資源機構が共同管理している淀川大堰(大阪市)は一三年三月までに調査を完了。今年から補強工事に着手した。
長良川河口堰は、建設当時の地盤データを使用しており、指針改定直後の一二年二月に再調査を始めた。水資源機構中部支社(名古屋市)によると、ボーリングなどの現地調査はせず、コンピューター上での影響解析が主という。
しかし、三年半近くたっても調査は継続中。機構の担当者は「基準となる地震動が妥当かどうかなど、一つ一つ確認しながら進めているため」と説明している。調査が終わる時期や、結果を公表するかどうかも決まっていない。
内閣府が一二年に発表した南海トラフ巨大地震の被害想定では、桑名市の最大震度は6強。河口堰のすぐ近くを通るとされる「養老-桑名-四日市断層帯」での直下型地震は震度7に及ぶことも想定されている。同市には海抜ゼロメートル地帯が広がり、大地震の際には河口堰周辺の地盤も液状化する恐れがある。
機構によると、河口堰の設計時に想定されていた地震は一八九一年の濃尾地震。マグニチュード(M)8・0だったとされ、M9・0だった東日本大震災より規模が小さく、さらに大きい揺れに備えて補強が必要になる可能性もある。
また南海トラフ地震による津波の想定は桑名市内で最大五メートル。機構側は「津波が遡上(そじょう)して来たら、ゲートを開くので問題ない」と説明する。しかし、東日本大震災では、地震と津波による水没で、多くの堰や水門で電源喪失や断線などが起き、開門操作に支障が出た。
国交省治水課によると、指針に基づいた調査に期限はなく報告の義務もない。水資源機構は、単独で管理する長良川河口堰を含む全国四カ所の堰すべてで「調査を実施中」としている。
◆津波被害拡大の恐れ
<京都大の今本博健名誉教授(河川工学)の話>地震で河口堰の堰柱が曲がるなどしてゲートが動かなくなった場合、川を遡上した津波がせき止められて両岸にあふれ、被害が拡大する可能性がある。調査に時間がかかりすぎだ。どんな危険性があるのか、すみやかに調査を終え、結果を住民に知らせるべきだ。
(記事、ここまで)
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岐阜県が毎年行っている[長良川河口堰県民調査団」。公募が始まってからは毎年のように参加しているが、 毎年、長良川河口堰管理所で、同じ「説明」を聞かされる。
「伊勢湾外から大きな津波の到達が予測されるとき(伊勢湾口の神島観測所で2m以上の津波が観測された時)は、全てのゲートを堤防高より高く引き上げます。このため、津波時にゲートが支障となることはありません。」
長良川河口堰管理所HP≫ 河口堰の概要≫ ゲート操作の基本
http://www.water.go.jp/chubu/nagara/22_gaiyou/kihonsousa.html
この説明を聞かされている側は思う…「大地震が来たとき、ゲートはまともに上がるのか?堰柱が損傷したりしないか?機械がに異常が起こったりしないか?」 質問すると長良川河口堰管理所長は(先代も今も)「大丈夫です」と即答する。
「即答するところがアヤシイ。隠し事があるか、何も考えていないか、その両方か?」
なので、この記事を見たときには「やっぱりね」と思った。
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ウソをウソとも考えずに「宣伝」してしまえる人たちだからねぇ…以下の「説明」もやっぱりウソなんだと確信してしまう。
毎年の説明で曰く「治水効果=平成16年の出水のときは、2mの水位低下効果があった」。
これを聞かされると普通の参加者は「2mも推移が下げられるというなら結構なことだ」と感じることだろう…しかし、若干でも冷静に考えてみれば「ああん?」である。
なぜ河口の河道横断構造物が「2mの水位低下効果」を発揮するのか?当たり前だが、洪水時にはゲートを全開する。可能な限り「堰がないのと同じ」状態にして洪水を海へと流そうとしている。では「水位低下効果2m」とは一体なんなのか。
長良川河口堰管理所HP ≫ 管理情報 ≫ 主な治水効果の実績
http://www.water.go.jp/chubu/nagara/14_kanri/chisuikouka.html
「 平成16年10月21日の台風23号による出水は、河口から39.2kmの墨俣地点において最大毎秒約8000立方メートルと、長良川の治水計画上想定している最大の流量に匹敵する観測史上最大の出水となりました。」「この出水による最大流量が河道浚渫前の昭和45年当時の断面を流れた場合の最高水位を推定し、実際に観測された最高水位と比較すると、河道浚渫前に比べ、墨俣地点(河口から39.2km)で約2mの水位低下効果があったと推測され、洪水を安全に流すことができました。」
幾つもの前提と幾つもの推測を積み重ねた上での「推論」にすぎないことがわかる。
ではそれらの前提や推測は妥当なのだろうか?建設当時の「治水のための河口堰」論を検証しなおす必要がある。
愛知県HP ≫ 第10回愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会 (2015.7.28)
http://www.pref.aichi.jp/0000085378.html
【別添資料3】
http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000085/85378/07_kaitou_betten3_1.pdf
国交省の「回答」は疑念を払拭できるものではない。
昨年の「長良川河口堰県民調査団」では、木曽川上流河川事務所のS調査課長は「2mの水位低下は、出発水位(潮位)の問題だと思います」と驚くべき発言をしていた。2004年の木曽上の発表直後に、私が「もしかして出発水位の差の問題ではないか?と質問したとき、当時の木曽上の調査課長さんは否定した。その後、今本先生も「38kmの墨俣地点まで潮位が直接影響することはないだろう」とおっしゃるので、私の意見は引っ込めていた。それを10年後に木曽上の側から蒸し返す? つまりは「2mの水位低下効果」なるものは、きちんとした科学的根拠を示すことができないシロモノなのだ。
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でもって、毎年の岐阜県の治水事業費の推移。
↓ 画像をクリックすると拡大できます
PDFファイル
岐阜県 治水事業費推移 2014
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota8/jigyohisuii2014.pdf
岐阜県 治水事業費推移 2013
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota6/suii2013.pdf
岐阜県 治水事業費推移 2012
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota6/suii2012.pdf
岐阜県 治水事業費推移 2011
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota8/jigyohisuii2011.pdf
岐阜県事業費推移 2010
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota2/suiigraf.pdf
何度でも言う。飛騨地域も含めた(内ヶ谷ダム建設費も含めた)全県の治水関係事業費は100億円そこそこ。往事の五分の一にまで縮小している。
「金がない」のだ。
他方、これから先、「新たな治水効果」も出て来ようもない徳山ダム建設費(維持管理費は別に2億数千万円)の借金返しのために、毎年三十数億円ずつ一般会計(! 本来は福祉や教育に使えるはずのお金)から支払っている。
2010年に岐阜県河川課から貰ったエクセルデータ「徳山ダム 岐阜県負担分」
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota2/gifukenhutan.XLS
岐阜県は「新規開発」した都市用水は一滴も使う予定はない(別途取水・導水・浄水の設備投資をしなければ使えない。そんな投資の余裕はどこもない)。
梶原拓・前知事は「揖斐川の安全のため(洪水防御)のためだから良いのだ」と今で絵も宣っているらしい。梶原氏は「徳山ダムさえできれば揖斐川流域住民は枕を高くして寝られる」とほざいたが、徳山ダムが完成した今も、揖斐川本川に限っても「1/100」の安全度は実現していない。脆弱な堤防の強化もままならない。
「金がない」から遅遅として進まないのだ。
「無駄な公共事業」は、そのとき限り、その施設限りの「無駄」では済まない。
回り回って、住民の生命と暮らしを危うくする。
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ちなみに、昨日のNHKニュースで名古屋市水道の赤字転落を報じていた。
★ NHKニュース 東海 07月30日 19時02分
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名古屋市水道 19年ぶり赤字
http://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20150730/3704941.html
名古屋市の水道事業の昨年度=平成26年度の決算が19年ぶりに赤字となる見通しであることがわかりました。
水道使用量の減少によって料金収入が落ち込んだことが背景にあり、名古屋市は、今後、料金制度の改定も含めた長期的な事業の見直しを迫られることになりそうです。
関係者によりますと、名古屋市の水道事業の平成26年度の決算は、収入が、前年度より7億円余り少ない457億7300万円にとどまったのに対し、支出は458億900万円で、最終的に3600万円の赤字となる見通しであることがわかりました。
名古屋市の水道事業が赤字になるのは平成7年度以来、19年ぶりのことで、市は、浄水場の改築工事などが遅れたことで、前の年度に計上されるはずだった10億円の支出が繰り越されたことが赤字の要因だとしています。
ただ、市によりますと、1人あたりの水道使用量は節水技術の進歩などによって、減少傾向が続いていて、事業収入の9割近くを占める水道料金収入は、この10年間で56億円減少した一方、支出面では、老朽化した水道管の補修など事業を維持するための設備投資が必要になると見込まれています。
水道事業の決算が、赤字の見通しとなったことを受けて、名古屋市は、今後、料金制度の改定も含め、長期的な事業の見直しを迫られることになりそうです。
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名古屋市は「水道料金値上げ」で対応する、ということなのだろうか。
それでも、名古屋市上下水道局は「万が一の場合でも(節水などを求めず、好きなだけ使えるように)供給するのが水道事業者の責任だ(ゆえに市長が何を言おうが、德山ダムの水を使うための導水路事業は推進する)」と言い続けるのであろうか。
当たり前のことを控えめに言ったにすぎない「新水道ビジョン」が常識になる前に破綻する水道事業者がヤマと出そう。
厚労省 新水道ビジョンポータルサイト http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/newvision/1_0_suidou_newvision.htm
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