「『撤退ルール』は撤退しやすいルールである」その3 |
「『撤退ルール』は撤退しやすいルールである」
その2 http://tokuyamad.exblog.jp/24675213/
から続く。
自治体の主体的判断を促す「撤退/撤退ルール」
~ 愛知県、名古屋市は、徳山ダム導水路から「撤退」するべきだ
Ⅰ 「撤退」「撤退ルール」が定められた趣旨とその受け止められ方
③ 国交省の「説明」
水資源機構法施行令に「撤退ルール」が定められたのに伴い、国土交通省は、特定多目的ダム法適用の事業に関しても特定多目的ダム法施行令にも「撤退ルール」を追加した(特定多目的ダム法施行令第1条の2)。中味は同趣旨であり、この規定の条文のほうがわかりやすい。
それらをまとめて図解にしたのが「国交省説明資料(PDFファイル)」である。
参考:資料3: 撤退ルール国交省説明


また、この「撤退ルール」(撤退時の関係者負担額算出ルール)は、元々の事業計画策定時の負担額算出ルール(=分離費用身替り妥当支出法)に則って、撤退が生じたとき、撤退者と事業残留者とに公平な負担を課そうとするものである。
参考:資料4:在間「撤退」(2)

④ 実際の受け止められ方
自治体が独自に「要らない」と判断して事業から撤退することができる、という画期的な(地方自治の本旨、地方自治法、地方財政法の趣旨からすれば当たり前のことなのだが)規定は、残念なことに、従来の自治体のお役人の思考の枠を超えてしまっているようだ。霞が関にお伺いを立ててお許しを得けなければすでに存在する計画を変えたりできるはずがない、撤退など自ら決められるはずがない、という受け止められ方をしてきたようである。
また、実は自治体独自で撤退ができる、と気付いた地方公務員がいたとしても、「どんな事業であろうとも、いったん決まったからにはやめてはならない、やめさせない」と考える勢力は、自治体にも、霞が関にも、大きな割合と力をもって存在する。さらに水資源機構は「組織の存立をかけて絶対やめさせない。自治体やマスコミから訊かれれば、ウソとわかっていても『勝手にやめることなどできるはずがない』と受け取られるようにで答える」としているようだ(水機構の「回答」を国交省水資源部にぶつければ「そんなことを言いましたか?聞き違いではないですか?」と来る。どちらも文書回答では超玉虫色の曖昧な官僚作文で言質をとられない努力をする).。
結局のところ、これまで「撤退ルール(独立行政法人水資源機構法施行令21条・30条2項、特定多目的ダム法1条の2)」を適用した十数例は、すべて何年も前から事業者と事業参画者が話し合いを重ねた末の「円満撤退」ばかりである。こうした実態がまた「関係者全員が合意をしなければ撤退などできない」という誤解を強め、利水者が「撤退」判断を躊躇うことに繋がり、撤退通知を躊躇っているうちに(事業からの撤退の通知がなければ工事は止まらないので)撤退者が負担する「不要支出額」も増えて「撤退」決断の時機を逸する・・・と悪循環に陥っている。
「撤退/撤退ルール」が本来の使われ方がされないまま封印されてしまっているのが現状のようだ。
参照:2012.3.1 国交省治水課作成資料
<利水参画予定者の撤退及び参画量の減少に伴う「特ダム法施行令第1条の2」及び「水資源機構法施行令第21条、第30条第2項」の適用事例>
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota5/tettaitekiyo.pdf
◇ ◇
「『撤退ルール』は撤退しやすいルールである」
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その4 http://tokuyamad.exblog.jp/24675256/