「『撤退ルール』は撤退しやすいルールである」その4 |
その3 http://tokuyamad.exblog.jp/24675224/
から続く。
自治体の主体的判断を促す「撤退/撤退ルール」
~ 愛知県、名古屋市は、徳山ダム導水路から「撤退」するべきだ
Ⅱ 徳山ダム導水路事業(木曽川水系連絡同類路事業)の場合
① 利水者が撤退した場合の負担額
徳山ダム導水路事業(木曽川水系連絡同類路事業)について利水者が撤退した場合の負担額をみてみる。徳山ダム導水路事業の利水者としての参画者は愛知県と名古屋市の二つである。
⑴ 本体工事着工前に一利水者が撤退した場合
2009年5月、名古屋市長になったばかりの河村たかし氏が「(徳山ダム導水路事業から)撤退したい」とマスコミに喋って、かなりの大騒ぎになった。
Ⅰで縷々述べたように、本来、首長の腹を括っての決断で「撤退」は可能である。手続き的には、(水資源機構事業なので)、事業者たる独立行政法人水資源機構理事長に公文書をもって「名古屋市は木曽川水系連絡導水路事業から撤退する」と伝えれば撤退は完了する。
あとは、導水路事業が継続するとなれば、「撤退ルール」に沿って、撤退者たる名古屋市の撤退負担金の額、及び残った利水者(この場合愛知県)と治水分負担者(国と3県)の新たな計算し直された負担額が算出されることになる。そして、次年度までに、撤退後の縮小された事業に対応する事業実施計画変更がなされるのが原則である(そうでないと事業は止まったままになる)。
では、名古屋市が「撤退」したら負担はどうなるか?
2009年時点で、徳山ダム導水路事業の本体工事は行われていない。なので「不要支出額」は生じない(このことは2009年に中部地方整備局に確認している)。本事業は2009年秋に「凍結」となっているので、現在も同様である。身替り建設費をもって妥当投資額としている(このことの妥当性には疑問があるが)以上、本体工事前に撤退すれば撤退負担金はゼロ円なのである。
参考:資料5:在間「撤退」(3)
こうなると、果たして愛知県は「事業参画を継続する/事業参画者として残る」という選択をすることになるのかどうか?
⑵ 二利水者が両方とも撤退した場合
すべての利水者が撤退すると、水資源機構法に基づく水資源機構事業としては成立しないので、事業実施計画は廃止される。この場合は、元のアロケ-ションに従って清算するのが原則で、結局は各関係者が既支出分を負担して事業を終了することになるはずだ。
ただし、丹生ダムの例をみると、利水者全てが何らかの形で撤退意思を表明してから十数年経つのに、未だに事業実施計画は廃止されていない。水資源機構は事業を手放さないためのありとあらゆる「努力」をし、国交省は(積極的か消極的かはともかく)それに手を貸し続け、自治体は確信をもって撤退意思を通知する公文書を出さず・・・かくて、いつまでもダラダラと税金がムダ遣いされている。
愛知県と名古屋市が両方とも、確信をもって、明確に「撤退」を告げる公文書を独立行政法人水資源機構理事長宛てに送付するのが、一番スムーズで現実的な選択だ。
② 2009年に起こったこと-撤退させないための「撤退ルール」隠し
2009年⒌月15日、中日新聞朝刊一面トップに「名古屋市が導水路撤退」という見出しが躍った。これを受けて、、同年7月10日に、「木曽川水系連絡導水路に係る三県-市副知事・副市長会議」(出席者-三県(岐阜・愛知・三重)副知事、名古屋市副市長、中部地方整備局長・同河川部長・水資源機構中部支社長。以下「副・副会議」という。)が非公開で開催された。
このときに中部地方整備局が作成した資料は以下のようなものであった。
参考:資料6: 090710 副・副会議資料
「名古屋市が撤退した場合の概算の事業費等の試算」
2009年8月2日、名古屋市公館で開催された「公開討論会」では、名古屋市上下水道局は副・副会議資料を受ける形で、「撤退したら徳山ダムの水が使えなくなる上に、111億円もの負担をしなければならなくなる」としか受け取れない資料を作成した。
参考: 資料7: 090802公開討論会/名古屋市上下水道局説明資料
この資料作成にあたった職員は、副・副会議資料にミスリードされて、「撤退なんかしたら111億円を払わされるだけになて丸損だ」と本気で考えてしまったのかもしれない。しかしこれが事実でないことは上述の通りである。結果的に、名古屋市上下水道局は、市長と市民を騙したのだった。
河村たかし名古屋市長は、この「111億円がタダ払いになる」という脅しにビビってすっかりトーンダウンし、あとは「導水路問題は忘れ去る」ことにしてしまったようだ。河村市長はどうやら今でも「111億円の呪縛」から逃れられていないらしい。
③ 愛知県、名古屋市は、徳山ダム導水路から「撤退」するべきだ
いかに「徳山ダムに多額のお金を注いだ」「徳山ダムはできちゃった」であっても、徳山ダムの水は要らない。さらなるムダ遣いは許されない。これ以上の自然環境破壊は罪悪である。
愛知県、名古屋市は、徳山ダム導水路から「撤退」するべきだ。「撤退ルール」は撤退しやすいルールなのである。早い段階で撤退すれば、それだけ住民・納税者が被る負担も軽くなる。できるだけ早く「撤退」決断をすることこそが最良の判断である。
以上
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この項終わり。