続・愛知県警の違法捜査「無断で車にGPS」国賠訴訟の報道 |
•愛知県警の違法捜査「無断で車にGPS」国賠訴訟の報道[ 2014-12-31 17:03 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/23497919/
の続き(?)の話題。
•続・「通常の警察業務」…参議院内閣委員会の質疑から[ 2015-06-05 14:54 ]
http://tokuyamad.exblog.jp/24102375/
でも触れているが、きちんと言及できていない(→ 下に)
☆ 2016.1.15 朝日新聞
GPS捜査、名古屋地裁も「違法」判決 大阪地裁に続き
http://www.asahi.com/articles/ASJ1F5KGXJ1FPTIL012.html
捜査対象者の車にGPS(全地球測位システム)端末をひそかに取り付ける捜査手法をめぐり、名古屋地裁が昨年12月、警察が摘発した連続窃盗事件の判決で「プライバシーを大きく侵害するもので違法」と判断したことがわかった。大阪地裁が昨年6月に同種事件で初の違法判断を示しており、2例目とみられる。大阪の事件は15日から控訴審が始まり、検察側は引き続き違法性を否定する方針。
名古屋地裁(奥山豪(たけし)裁判長)は昨年12月24日、住宅や店舗を狙った窃盗事件の男性被告(44)を懲役6年とした。判決によると、愛知県警は2013年6月、被告が乗る乗用車の底部に裁判所の令状なしにGPS端末を装着。位置検索をしながら行動を追った。3カ月後に被告が端末に気づいて取り外した後まで検索は1653回に及び、多い時は1日109回に達した。
判決は、位置情報を正確に把握できるGPS捜査を県警はいつまで続けるかも決めておらず、長期にわたるプライバシー侵害の恐れがあったと指摘。「任意の捜査として許される尾行とは質的に異なる」と批判し、令状のないGPS捜査は違法とした。事件当時はこうした司法判断がなかった点を考慮し、被告側が求めた捜査資料の証拠排除は認めなかった。無罪主張の被告側は控訴している。
昨年6月の大阪地裁決定は、令状なきGPS捜査を「重大な違法」と初めて認定し、捜査資料の一部を証拠から外した。ほかの証拠から有罪とされた被告側が大阪高裁に控訴。「違法捜査による起訴は無効。有罪でも量刑に考慮すべきだ」と主張する。検察側は「GPS捜査は尾行の補助手段。令状なしでも行える」と正当性を訴える方針だ。
☆ 2016.1.15 中日新聞夕刊
2つの記事、PDFファイル。
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota12/20160115.pdf
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記事で言及されている昨年6月の「大阪地裁判決」報道
★<NHKニュース> 2015年 6月5日 12時14分
GPS使った捜査「令状なしは違法」初判断
警察が、容疑者や関係者の車にGPS端末を付けて行動を監視したことについて、大阪地方裁判所は「令状なしに長期間行動を監視したのはプライバシーの侵害にあたり、違法だ」という判断を示しました。弁護士によりますと、GPS端末を使った捜査について裁判所が違法と判断したのは初めてです。
大阪・門真市の43歳の被告は、おととし8月、兵庫県小野市の郵便局に侵入して窃盗などの罪に問われ、警察が、本人や関係者の車にGPS端末を付けて行動を監視していたことが明らかになりました。弁護士が「プライバシーの侵害にあたる」と主張したのに対し、検察は「尾行と同じ任意捜査の範囲で問題ない」と主張していました。
これについて、大阪地方裁判所の長瀬敬昭裁判長は「警察が無断でGPS端末を付け長期間に渡って行動を監視したのは、プライバシーの侵害にあたり違法だ。警察内部で令状の取得を検討した形跡すらうかがえず、令状主義を軽視したものだ」という判断を示し、捜査の記録などを裁判の証拠にしないことを決めました。
GPS端末を使った捜査は法律に明確な規定はなく、警察の内規に基づいて運用されていて、ことし1月、大阪地裁の別の裁判長が「プライバシー侵害の程度は大きくない」として、違法ではないという判断を示していました。
弁護士によりますと、こうした捜査について、裁判所が違法と判断したのは初めてで、今後の警察の捜査にも影響するとみられます。
弁護団「監視社会の在り方考えるうえで意義」
弁護団の亀石倫子弁護士は「捜査権限の乱用によって、私たちのプライバシーが危機にさらされている現状に歯止めをかける、画期的な判断だ。今後、GPSを利用する捜査手法は司法による審査を通じて慎重に運用されるべきで、『監視社会』の今後の在り方を考えるうえで、極めて重要な意義がある」と話しています。
警察庁「コメントは差し控える」
大阪地裁が、GPS端末を使った大阪府警の捜査について「プライバシーの侵害にあたり、違法だ」と判断したことについて、警察庁は「裁判が継続している事案であり、コメントは差し控える」としています。
GPS端末を使った捜査について、警察庁は平成18年に全国の警察本部に運用の要領を通知していて、こうした捜査は裁判所の令状がいらない任意の捜査だとしたうえで、容疑者の追跡が困難で、捜査上特に必要がある場合に使うことができるとしています。そして、GPS端末を使う場合には事前に警察本部の課長の承認を得たうえで、捜査の担当者は毎日運用の状況を所属長に報告し、必要がなくなったときは直ちにやめることにしており、適正な運用を行っているとしています。
GPS 捜査の現状と課題
GPS端末を使った捜査について、警察庁は、平成18年に、全国の警察本部に運用の要領を通知しています。
弁護士が情報公開請求で入手した資料によりますと、GPS端末を使った捜査は、裁判所の令状がいらない任意捜査だとしたうえで、容疑者の追跡が困難で、捜査上、特に必要がある場合に使うことができるとされています。GPS端末を使う場合は、事前に課長の承認を得るほか、捜査の担当者は、毎日、運用の状況を所属長に報告することになっています。平成23年11月からは、携帯電話のGPS機能を利用して容疑者の居場所を割り出せるようになりましたが、電話会社から情報の提供を受けるには、裁判所の令状が必要です。さらに、位置を探索していることを、画面の表示や音などで相手に知らせることが条件になっていましたが、総務省は、ことし4月、相手に知らせなくてもよいとする電気通信事業者向けのガイドラインの改正案をまとめました。
一方、アメリカでは、平成24年に、連邦最高裁判所が、麻薬事件の容疑者の車に令状なしでGPS端末を付け、28日間追跡した捜査を違法とする判断を示しています。
日本では、去年、警察の捜査で、GPS端末を無断で車に付けられプライバシーを侵害されたとして、名古屋市の男性が、愛知県に賠償を求める裁判を起こしています。
法律の専門家からは、GPS端末が犯罪の捜査に有効なことを認めたうえで、使用の条件などを法律できちんと決めるべきだという指摘も出ています。
★<朝日新聞> 2015年6月5日12時16分
GPS捜査「令状なく違法」 大阪地裁、証拠採用せず
捜査対象者の動向をつかむため、GPS(全地球測位システム)端末を令状なしの任意捜査で車両に取り付ける手法について、大阪地裁の長瀬敬昭(たかあき)裁判長は5日、窃盗事件の公判で「(対象者の)プライバシーを侵害するもので、令状なく実行されたことは重大な違法」との判断を示した。GPSの位置情報をもとに事件と被告らとの関わりを示す捜査報告書を証拠採用しない決定をした。
警察によるGPS捜査は各地で明らかになっているが、被告弁護団によると違法判断は初とみられる。
大阪府門真市の無職岩切勝志被告(43)は知人ら3人と共謀するなどして2012年2月~13年9月、大阪や兵庫など6府県で事務所侵入や車上荒らしを続け、計約416万円相当の金品を盗んだとする窃盗などの罪に問われている。
地裁決定によると、大阪府警は13年5~12月、犯行グループやその関係者の所有とみられる乗用車やバイク計19台の下部にGPS端末を磁石で装着。これによって取得した位置情報をもとに被告らの行動をビデオに撮影した。検察側は映像に基づいて作成された捜査報告書などを証拠採用するよう地裁に申請していた。
地裁決定は、一連の捜査で取得された車両の位置情報の中にはラブホテルへの立ち入りを示すものなど、一般的に他人には知られたくないプライバシー情報が含まれると指摘。端末の装着は捜査当局が任意に行える捜査ではなく、憲法や刑事訴訟法上、裁判所の検証許可令状が必要な「強制処分」にあたると判断した。
そのうえで、府警が裁判所の判断を仰ぐことなくGPS捜査に踏み切り、端末交換などの際に私有地に無断で立ち入ったことなどを重大な違法と認定。「その是非について内部で検討した形跡すらなく、弁護側から端末の装着を指摘されるまで検察側にも伝えていなかった」と警察を厳しく批判した。
検察側は「(GPS捜査は)尾行や張り込みの補助にすぎず、プライバシー制約の程度は低い」と主張したが、地裁決定は「プライバシーが保護されるべき空間でも位置情報が得られる点で、尾行や張り込みとは性質が異なる」と退けた。
判決は7月10日の予定。
GPS捜査をめぐっては、今回の被告の共犯とされた男(36)=窃盗罪などで実刑確定=が同様に違法性を訴えたが、大阪地裁の別の裁判官は今年1月、重大な違法はなかったと判断していた。(阿部峻介)
★<東京新聞> 2015年6月5日 夕刊
GPS捜査令状なし違法 大阪地裁「プライバシー侵害」
大阪府警が裁判所の令状を得ず、捜査対象の男や知人女性の車に衛星利用測位システム(GPS)端末を付けて得た資料を裁判の証拠にできるかが争われた広域窃盗事件の公判で、大阪地裁は五日、「プライバシー権への制約が強く司法のコントロールが必要なのに、令状なく長期間捜査を続け違法だ」として、関連の収集証拠を採用しない決定をした。
刑事訴訟法にはGPSの運用に関する直接の規定はない。過去の司法判断では大阪地裁の別の裁判長が関連事件の公判で今年一月に「違法ではない」としており、結論が分かれた。事件の被告側の弁護団によると、捜査の違法性を指摘した決定は全国で初めてとみられる。
長瀬敬昭(たかあき)裁判長は五日の決定理由で、約半年間にわたり十九台の車に端末を付けた捜査手法について「プライバシーを大きく侵害し、強制処分に当たる」と判断。「請求すれば令状が出た可能性は高いのに、警察は取得の検討すらしておらず、令状主義軽視の姿勢がある」と捜査側を批判した。
検察側はGPSの役割を「捜査員の尾行や張り込みの補助」と見なし「位置情報は大まかにしか把握できず、二十四時間記録するわけではないため権利侵害の程度は低い」として、捜査報告書などを証拠採用するよう主張。だが長瀬裁判長は「精度は高く、相手を見失っても位置情報を取得し追尾を続けることができる。目視のみの捜査とは異質だ」と却下。「今後技術の発展に伴い、精度も高まる。将来的な違法捜査の抑止も考慮すべきだ」と述べた。
弁護側は「プライバシー権などへの制約が強く、司法の抑制が必要だ」と訴えていた。
◆全国での運用実態不明
GPSによる捜査は、位置情報の精度が高くプライバシーの侵害が懸念される一方で、令状のいらない任意捜査の補助手段として捉えられており、令状が必要で件数が公表される通信傍受とは違って全国での運用実態は不明だ。
五日の大阪地裁決定は「公判で弁護側が問題にするまで警察は検察にもGPS捜査の結果を伝えず捜査報告書にも記載していない」と批判した。
「ここまでするのかと思った」。車体の下にあったのは黒いビニールテープでぐるぐる巻きにして磁石で設置したGPS端末。地裁で審理されている広域窃盗事件の被告の男(43)は発見時の様子を公判で振り返った。
逮捕の数カ月前に知人のミニバイクへGPS端末が付けられたと知ったのがきっかけだった。「警察がそんなことしていいんですか」。逮捕後の二〇一三年十二月、亀石倫子弁護士との接見で訴えた。
GPS捜査による証拠は当初開示されず、男の訴えを聞いた亀石弁護士らが開示を求めてようやく存在が明らかに。もしGPS端末に気付かなければ警察による位置情報の把握が表面化しなかった可能性がある。
これまでの公判で出廷した捜査員の証言によると、今回の事件では十六台の端末を使用。三~四日おきに対象車の端末を交換しながら約半年で計十九台の車両に取り付けた。交換などの作業はホテルや商業施設への駐車時にも実施していたという。
亀石弁護士は「GPS活用の有用性は否定しないが、司法のチェックが働かなければ知らない間にプライバシーが侵害される。今回の公判では、警察がこうした捜査をひた隠しにする姿勢が見て取れた」と批判した。
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愛知県警を相手取ってGPSを無断装着された男性が名古屋地裁で国賠訴訟を起こしている件、再掲。
GPS違法捜査国賠訴訟関係報道20141219 PDFファイル
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota10/GPS20141219.pdf
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刑事部門での相次ぐ違法判断はこの訴訟の追い風となるか?
そして私たちが準備している国賠訴訟の追い風となるか?
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