2月2日 陸自情報保全隊国民監視違憲訴訟控訴審判決(2) |
2月2日 陸自情報保全隊国民監視違憲訴訟控訴審判決(1)
http://tokuyamad.exblog.jp/24943378/ から続く
以下、ウェブ記事から。
★河北新報 2016年02月03日水曜日
☆ <自衛隊監視訴訟>1人のみ違法性認定
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201602/20160203_13020.html
自衛隊の情報保全隊がイラク派遣に反対する市民運動を監視したのは違憲として、東北の住民91人が監視差し止めと計9100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は2日、住民1人にのみプライバシー権侵害を認定し、国に10万円を支払うよう命じた。差し止めの訴えは退けた。仙台地裁判決はこの住民と地方議員4人の計5人への賠償を命じていた。住民側は上告する方針。
古久保正人裁判長は「イラク派遣反対運動の一部には実力行使を含むものもあり、自衛隊が情報収集すること自体は違法ではない」と判断。違法性の認定には(1)目的や必要性(2)収集・管理方法(3)情報の秘匿性-などを総合的に考慮する必要があると結論付けた。
高裁はその上で、各住民のケースを個別に検討。宮城県亘理町で派遣に反対するライブ活動を芸名で行った住民1人について、「自衛隊員に直接的な働き掛けをしたとは言えず、本名や勤務先まで探る必要性は認めがたい」と指摘した。
地裁判決が賠償対象としたほかの4人については、地方議員として公の場で活動していたことを理由に請求を退けた。差し止めの訴えは地裁判決同様、「対象が特定されておらず、不適法」と却下した。
住民側は閉廷後に仙台市内で記者会見し、「2回続けて国の違法行為が認められた意義は大きいが、4人の請求が棄却されるなど大変問題がある」と語った。
国側は、防衛省が「主張が理解されなかった部分があり、厳しい判決だ。判決を慎重に検討し、対応を決める」との談話を出した。
2012年3月の地裁判決は、5人について「思想信条に直結する個人情報
☆ <自衛隊監視訴訟>判決に二面性 評価割れる
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201602/20160203_13019.html
《写真》「勝訴」と「不当判決」。控訴審判決後、仙台高裁前で相反する垂れ幕を掲げる弁護団=2日午前11時5分ごろ、仙台市青葉区
自衛隊の情報保全隊による情報収集の違法性を認めた2日の仙台高裁判決。原告・弁護団は、仙台地裁判決に続き違法性を認定した点は評価しつつ、損害賠償が認められた原告が5人から1人に減ったことなどを挙げ、複雑な表情を浮かべた。
「勝訴」と「不当判決」。閉廷直後の午前11時5分ごろ、弁護団の弁護士2人が掲げたのは相反する垂れ幕だった。「二面性がある判決」。矛盾する内容をあえて前面に出し、弁護団の思いを代弁させた。
地裁段階で国の違法性を認めても、高裁で覆されるケースは少なくない。小野寺義象弁護士は「高裁も違法性を認めた点は画期的」と強調したが、「1人しか認めないのは不当。怒りを禁じ得ない」と話した。
仙台市内であった記者会見などでも、判決への評価は割れた。
「問題は人数ではない。たった1人でもプライバシー侵害が認められ、勝ったと思っている」。原告団長の後藤東陽さん(90)は力説した。
宮城県亘理町で芸名でライブ活動をしただけだとして、唯一、請求が認められた原告の男性は「戦前の憲兵がやっていたような情報収集や探索は全て違法として、全員の請求を認めてほしかった」とのコメントを出した。
高裁判決で請求が退けられた原告4人の1人、小沢和悦・大崎市議(71)は「政治家であっても、堂々と意見が言えなくなる恐れがある」との懸念を口にした。
◇ ◇ ◇
自衛隊の情報保全隊がイラク派遣に反対する市民運動を監視したのは違憲として、東北の住民91人が監視差し止めと計9100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は2日、住民1人にのみプライバシー権侵害を認定し、国に10万円を支払うよう命じた。差し止めの訴えは退けた。仙台地裁判決はこの住民と地方議員4人の計5人への賠償を命じていた。住民側は上告する方針。
☆ <自衛隊監視訴訟>諜報活動限界示す
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201602/20160203_13034.html
<鈴木正朝新潟大教授(情報法)の話>
一審判決から後退したかに見えるが、原告1人に関し情報保全隊の情報収集活動を違法と認めたことは意義がある。プライバシー権保障の観点から、本来の業務を逸脱した同隊の諜報(ちょうほう)活動の限界を示した。今後、日本で対外諜報機関設置の議論が進む見通しだが、判決は設置の是非や活動範囲を検討する中で判断材料の一つになり得る。
☆ <自衛隊監視訴訟>情報収集活発化も
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201602/20160203_13035.html
<軍事評論家の前田哲男さんの話>
一審判決から大きく後退し、実質的に国の勝訴だ。一審では情報保全隊の活動に厳しい見方をしていたが、二審では緩和された。自己の個人情報をコントロールする権利などについても、ほとんど否定した。特定秘密保護法や安全保障関連法の運用について、防衛省など政府が強気になる恐れがある。自衛隊による市民への情報収集はより活発になるだろう。
を集め、人格権を侵害した」と判断し、国に賠償を命じた。住民側、国側の双方が控訴していた。
高裁判決によると、情報保全隊は03年11月~04年2月、全国各地で自衛隊のイラク派遣に反対する活動に参加した住民の氏名や職業などを記録し、内部文書を作成、配布していた。
◇ ◇
★河北新報社説 2016年02月03日水曜日
自衛隊監視判決/権力の圧力は許されない
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20160203_01.html
国家権力を背にした組織によって監視活動の対象とされれば、自由に物が言えない社会になる-。そんなまっとうな訴えに、正面から答える判断は示されなかった。
イラク派遣反対集会に参加した市民に対する自衛隊情報保全隊の監視活動の違法性が問われた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁がきのう、情報収集の一部でプライバシーの侵害があったことを認め、国に損害賠償を命じた。
判決は、原告の市民側が求め続けた監視活動自体の差し止め請求を却下し、賠償の対象を一審判決の5人から1人に絞り込んだ。
限定的ながら、情報収集の違法性をいさめた意義は決して小さくはないが、全体としては市民感覚をくまない内容と言わざるを得ない。
特定秘密保護法が施行され、国による秘密裏の情報管理と統制の在り方に懸念が強まる中、切実な恐怖感を訴えて人権重視の観点から一定の歯止めを求める市民の声に、司法はきちんと向き合う必要があったのではないか。
国と自衛隊ともに、判決の聞き流しが許されないことは言うまでもない。一部ではあっても情報収集の行き過ぎが高裁でも認定されたことを謙虚に反省し、監視活動の適正化と説明責任に努める姿勢に徹することを求めたい。
情報保全隊の活動が、何の目的でどの程度の広がりをもって行われているか、詳細はいまだ判然としない。
控訴審では元情報保全隊長が証人尋問に答え、「外部の働き掛けから部隊を守り、…機密を探り、業務を妨害する可能性のある団体の動きを情報収集する」と初めて公の場で活動内容を説明した。
具体的な妨害行為がなくても情報を集めることや、集める個人情報には場合によって交友関係などプライバシーに関わるものが含まれる可能性があることも示唆した。
高裁判決は「反対運動が自衛隊に直接的対応を迫る形でなされる場合は必要性がある」として、イラク派遣反対運動が活発だった当時の活動の妥当性を認めたが、一般的な市民集会での発言や行動までもが業務に影響のある行為と解釈されるのでは、監視活動は野放しになりかねない。
実際に判決は、情報保全隊が年金改革反対や春闘の集会も情報収集の対象にしていたことを「必要性を認めがたい」と批判している。「一定の限度があるべきで、態様によっては違法性を有する場合があり得る」とも指摘しており、無制限でないことの確認があらためて求められる。
判決は、情報収集が強制的な形で行われなかったとして市民側の不利益を認めなかったが、不必要な場面も含む度重なる監視を市民側が萎縮につながる圧力、精神的苦痛と受け止めた事実は重い。
公権力による有形無形の圧力を広く許しては言論や表現や思想の自由は脅かされ、社会の基盤は危うくなる。
安全保障関連法の成立などで国の行く末を懸念する声も高まる中、その振る舞いはより抑制的であるべきだ。自衛隊の監視活動に限らない警鐘として、訴訟の問いかけを肝に銘ずる必要がある。
★信濃毎日新聞 社説 (2月3日)
情報保全隊 信頼を損なう国民監視
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20160203/KT160202ETI090012000.php
自衛隊の情報保全隊による市民集会の監視に対し、違法性を認める司法判断が重ねて示された。防衛省は真剣に受け止め、情報収集の在り方を直ちに見直すべきである。
自衛隊イラク派遣に反対する集会を監視し、市民の個人情報を集めていたことをめぐる訴訟だ。東北6県の住民が、監視の差し止めと1人当たり100万円の損害賠償を求めている。
2012年の一審判決は、原告107人のうち氏名や職業、思想信条に直結する所属政党などの情報を収集された5人について、人格権を侵害したとして計30万円の賠償を国に命じていた。
きのうの仙台高裁判決は、5人の1人で反戦ライブ活動をしていた男性に10万円を支払うよう命じている。非公表の本名や勤務先などの情報収集で「プライバシーを侵害された」との判断だ。一審より後退したものの、再び違法性が指摘されたことは重い。
保全隊は自衛隊の秘密情報を守ることなどを任務とする。隊員が外部の不審者と接触していないかといった点を調べる。自衛隊への攻撃に対する情報も集めるとはいえ、本来は内部に対する監視が主眼の組織のはずである。
国民を守る組織である自衛隊が国民を監視した。自衛隊を攻撃しようとした人たちではない。違法性を認められたのが1人だからといって、他の情報収集を是とすることはできない。自ら信頼を損なう行為であることを防衛省、自衛隊は自覚するべきだ。
訴訟で国側は、収集の目的や方法は適切だと主張した。これからも同じことを続けようというのだろうか。安全保障関連法に基づいて自衛隊が海外に派遣されることになれば、各地で反対運動が見込まれる。国民への監視が繰り返される不安が拭えない。
情報収集は、保全隊の内部文書に記されているとして共産党が07年にコピーを公表したことで表面化した。今後、同様の活動が行われても特定秘密保護法の下では明るみに出ない恐れもある。
判決は、反戦ライブ活動について「隊員や家族に影響があるとは考えにくい」として個人情報収集を認めなかった。保全隊の活動への戒めにしなくてはならない。
中谷元・防衛相は「判決内容を精査し、適切に対応したい」と記者会見で述べている。監視されている恐怖感を国民に与え、萎縮させるような活動は今すぐやめるべきだ。情報収集のルールを明確にし、国民に説明するよう求める。
★京都新聞 社説 2016年02月06日掲載
自衛隊市民監視 情報収集の見直し必要
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20160206_2.html
自衛隊の情報保全隊がイラク派遣反対集会に参加した市民を監視したのは違憲として、東北6県の住民が国に監視差し止めと1人当たり100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は違法性を認め、男性1人に10万円を賠償するよう国に命じた。
一審判決に続く違法性の指摘だ。防衛省は情報保全隊による情報収集を根本から見直すべきだろう。
2日の控訴審判決は、男性が公表していない本名や勤務先などの情報を収集され、「プライバシーを侵害された」と判断。反戦ライブ活動をしていた男性について「自衛隊員や家族に影響があるとは考えにくい。本名などを探索する必要性は認めがたい」とした。
一審判決は、氏名や職業、思想信条に直結する所属政党などの情報を収集された男性を含む5人の人格権を侵害したとして、計30万円の賠償を国に命じた。内容は後退したが、防衛省と自衛隊は重く受け止めるべきだ。
情報保全隊は自衛隊の秘密情報を守ることなどを任務とする防衛相の直轄部隊で、約千人の要員がいるとされる。自衛隊員が外部の不審者と接触していないかを調べ、自衛隊への攻撃に対する事前の情報収集も行うが、攻撃する意思を持たない国民を監視することは不当だ。
秋田市の成人式会場周辺でイラク派遣に反対する街頭宣伝をした元教諭の女性は、活動内容や明らかにしなかった氏名が、情報保全隊が作成したとされる文書に載っていた。仙台高裁での「見えないものに監視されている恐怖感でいっぱいになった」との意見陳述は当然だろう。
安全保障関連法の成立によって今後、自衛隊の海外派遣に対する反対集会などが増える可能性がある。参加者の個人情報を収集し、監視を通じて圧力を加えるような行為は、表現の自由を脅かしかねず決して許されない。
情報保全隊による情報収集は、共産党が2007年に同隊の内部文書だとして公表した資料により明らかになった。特定秘密保護法に基づき、防衛関連の多くが特定秘密に指定され、情報保全隊の活動がこれまで以上に国民から見えにくくなる恐れがある。
衆参両院には特定秘密保護法の運用状況をチェックする情報監視審査会が設けられている。国会は審査会の権限強化などを通じ、情報保全隊の情報収集が不適切なものにならないよう、しっかり監視していくべきだ。
◇ ◇
2月2日 陸自情報保全隊国民監視違憲訴訟控訴審判決
(1) http://tokuyamad.exblog.jp/24943378/
(2) http://tokuyamad.exblog.jp/24943456/