丹生ダム やっと終止符(2) |
丹生ダム やっと終止符(1)
http://tokuyamad.exblog.jp/25500954/
から続く
丹生ダムは水資源会月促進法に基づく水資源開発のためのダムである。全部の利水者が「ウチは水は要らない」と言い始めた時点で中止になるはずのダムだった。中止まで、なんと長い時間が経ってしまったことか。
7月20日、例の「再検証」の”残り事業”のうちの5つに結論を出し、そのうち一つの丹生ダムを「中止」とした。
城原川ダム建設事業、五名ダム再開発事業、綾川ダム群連携事業、丹生ダム建設事業に関する国土交通省の対応方針について
http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo05_hh_000013.html
http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/seisaku_hyouka/gaiyou/hyouka/h2807/pdf/sanko01.pdf
丹生ダムを「中止」とした上で、備考欄に【今後の治水対策のあり方に関する有識者会議のご意見を踏まえ、検討内容 は、基本的に「中間とりまとめ」(※2)の 共通的な考え方に沿って検討されてい ると認められる。総合評価の結果が、 「『ダム建設を含む案』は有利ではない」 であり、検討主体の対応方針「中止」は 妥当であると考えられる。】とある。
では、その「有識者会議」ではどんな議論があったか、というと
国土交通省水管理・国土保全局 http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/index.html
>検討会等>今後の治水対策のあり方に関する有識者会議
今後の治水対策のあり方に関する有識者会議
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/
検証主体の報告書※を承認した平成28年7月8日の会議の議事要旨によれば
「・丹生ダムについては、対応方針(案)のとおり、事後措置について、関係機関とともに連携しながらしっかり進めることが重要である。」と要旨に回出すほどの意見もなかったようだ。
※ 近畿地方整備局TOP > 河川部 >
検証対象ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場
http://www.kkr.mlit.go.jp/river/kensyou/kaigisiryou.html
◆淀川水系
◇丹生ダム(検証主体:近畿地方整備局・水資源機構)
○報告書 平成28年6月
ちなみに、ここで正式にリストラになる(はずの)丹生ダム建設所のHPには何も載っていない。
(7月28日現在,「新着情報」は6月10日で停まっている.)
独立行政法人 水資源機構 丹生ダム建設所
http://www.water.go.jp/kansai/niu/
淀川水系流域委員会が設置された2001年には、利水者は「水は要らない」と何らかの形で(議会で、とかマスコミに、とか)表明していたのだった。
新規利水がなくなれば、水資源開発促進法に基づく水資源開発公団(当時)事業としては成り立たない。いったん丹生ダム事業実施計画を廃止し、淀川フルプランも全部変更し、水資源開発公団事業としての丹生ダム建設事業はきっちり白紙にするべきである。「治水」目的のダムとして検討したいというなら、国直轄事業として調査段階から-当然、環境アセスから-やり直すのが、法のスジというものである。
しかし日本の「法のスジ」はいつも「現実の利害」に歪められる。
1997年の河川法改正の方向に忠実であろうとした淀川水系流域委員会の設置は良かった、流域の”シロウト”も含んだ委員達が、一生懸命にダムの問題を考え、「原則ダムなし」提言を出していったのは素晴らしい。
だが、だからといって、期限切れになる淀川フルプランの全部変更のために2002年秋に水資源部から発出されていた「需給想定調査票」への回報を止めて(誰が止めたのだろう?)、淀川水系流域委員会の設置者である河川管理者としての近畿地整が「水需要の精査・確認を行う」としたのは義もんである。せめて、淀川フルプランの全部変更の手続きが進行中であることを、きちんと委員会に説明するべきであった・・・もっとも、傍聴していてびっくり仰天だったが、近畿地整河川部の河川調査官が、「丹生ダムに関して特ダム法施行令1条の2で『撤退ルール』の説明をした」というのだ。知っていて口にチャックした、というより、ホントによく知らなかったのかもしれない。官僚さんはそれなりに緻密で法律もよく御存じのはずなのだが、ときどきビックリ大穴が開いていたりする。指摘すると「いつの間にか穴を塞ぐ」・・・これはどなたもお上手だ。
◇ ◇
淀川水系水資源開発基本計画(淀川フルプラン) 2009.4.17 閣議決定
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/d_plan/fullplan/fp4ydh.pdf
には、丹生ダムは位置付けられていない。
どんなに遅くともこの時点で事業実施計画は廃止され、丹生ダム建設所もオワリになるはずなのだが、このフルプランには法的根拠も定かでない次の1文で、丹生ダム建設所を生き残らせてきた。
「なお、丹生ダム建設事業の見直しに係る諸調査は、当面の間は、独立行政法人水資源機構が引き続き行うものとする。」
年間3億円とかの予算のは税金から出されている。法的根拠に基づかない支出ってありかぁ?
◇ ◇
しかし、かの「再検証」で、水没地住民の移転が終了したダムで「中止」となったのは、丹生ダムが初めて、ということはみておかねばならない。
集落を挙げて移転し、帰るべき故郷がなくなってしまった、という事実は重い。(繰り返すが、「だからダムを造れ」という意見には、もちろん与しない)。
大都市が水を、電気を必要としているから、とダムや原発を過疎地にリッチするのは当然だ、としたのは、独占大企業と官僚と金権政治家の「鉄の三角形」で説明できるのだろうか?
「滅びの村にダムか来る」という言葉を旧徳山村のある人が自嘲気味に書いておられた。
丹生ダムもまた現地住民がダム計画を引き込んだともいえる。
だが「誰か故郷を思わざる」・・・自らの故郷をダムに水没させようとなんてことまで考えさせたのは一体誰の所為なのか?
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丹生ダム やっと終止符(3)
http://tokuyamad.exblog.jp/25506222/
に続く
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