11月 利根川下流域 見学行(1) |
11月12日(土)
2015年9月の鬼怒川水害の現場を訪ねた。
(↓ 画像をクリックして下さい、拡大します)
出典:第5回鬼怒川・小貝川有識者会議 資料1
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000634942.pdf
このときの状況については上の資料及び下の資料が詳しい。
第1回鬼怒川堤防調査委員会配付資料
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000632889.pdf
常総市の浸水範囲。
【八間堀川氾濫】
<国土交通省八間堀川排水機場>
洪水時の排水機場の運転(ポンプ操作)は適切だったのか?適切な判断・操作が行われていたら、被害は最小化できたのではないか?…住民がこのことを言いたい気持ちはよくわかる。
が、大きな出水時にダムのゲート操作、排水機場のポンプ運転が、適切に行われる保障などないのだという現実を直視しないわけにはいかない。
「大の虫」を活かすために「小の虫」に被害を押しつける、という意図的な場合もあるだろうし、予想を超える出水で動転してしまった、ということもあるだろう。それらない交ぜになって、合理的説明のつかない判断に至ったかもしれない。そのときには「歴史的・社会的事情」が判断に混じり込んでしまっているのかもしれない。
「適切な判断・操作が行われていたか?」は繰り返し問わねばならない。同時に、現場の判断ミス、現場の操作担当者のマニュアル違反の追及をやっても、本質的な問題解決には至らないのではないだろうか。
ゲートの開閉やポンプの作動状況も含めて、必要な情報が十分に周知されているようであれば、被害はもっと少なくて済んだはずだ、と地域の方がは言う。その通りだろう。
そして、出水時にそうした情報が役に立つためには、普段から地域を流れる川がどういう川なのか、その川の流域で暮らすとはどういうことなのかの知識と知恵が欠かせない。
そうした知識と知恵を喪失してしまった現代社会(つまり私たち)、その喪失に気付かせることなく、市街化させてきた行政。問題は根深い。
<大生(おおの)小学校付近>
鬼怒川への出口を閉じられた八間掘川は水海道地区中心部で越水し、大生小学校西側で決壊した。決壊した水は大生小学校を飲み込み、小貝川に隣接する東端の大崎町まで流れた。
遠方にみえるのが筑波山。
【鬼怒川堤防決壊および溢水】
<三坂町の破堤箇所-鬼怒川21km付近->
上野写真の真ん中の白い建物が、決壊の後の泥海の中に残っていた「ヘーベルハウス」。一躍有名になったらしい。その傍に(みえにくいが)人がしがみついていた電柱がある。
<若宮戸の溢水箇所-鬼怒川25km付近->
溢水すべくして溢水してしまった若宮戸地区。
本来河川区域に指定される場所が河川区域にも河川保全区域にも、河川予定地にもなっておらず、河川管理者が関知しない(できない)ままにソーラー発電施設が作られていた。
写真①
写真②
昔、鬼怒川が形成した河畔砂丘があり、自然堤防となっていた。
現在の河川法に切り替わった頃、高度成長期真っ只中、この砂丘の砂は工事用資材として高く売れた。地域住民にとって宝の山であった…これを堤防として河川区域・河川保全区域に指定されたら砂は売れない。
誰がどう働きかけたのかは知らない。
河畔砂丘よりずっと川寄りの箇所が河川区域となった… 砂丘がどんどん削られて、地区は無堤のまま放置されてしまった… 写真②の左端に砂丘の一部がみえる。写真③の右奥の仏塔も河畔砂丘の中にある。
つまり丁度ソーラー発電施設が作られてしまったその間の砂丘が消えてしまったのだ。
そしてその消えた砂丘のところを洪水が流れ込んでしまった。
<下妻市前河原地区の溢水箇所-鬼怒川33km付近->
若宮戸の溢水箇所よりさらに上流の下妻市前河原地区の溢水箇所。
やはり無堤だったそうだ。現在、築堤工事中。
揖斐川万石地点での計画高水流量は3900立方メートル/秒。 頭の中で河積を比べてみると…「この河道で4200立方メートル/秒流れれば溢れるわなぁ」。
対岸には堤防があるから、流下能力を超える水は無堤のこちら側に溢れることになる。
「人柱行政」-甚大な被害があるまでは、必要な対策がとられない。
ダムだけはとてつもなく大きな想定災害に「備えて」「予防的に」作られていく。
大東水害訴訟最高裁判決に曰く「河川管理の特殊性/財政上・時間的・技術的・社会的制約」
なればこそ、洪水被害を最小化する方策は「ダム」ではないはずだ。
(続く)
◇ ◇
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