18/5/31 岐阜県河川課交渉 |
5月31日、「毎年恒例」の対岐阜県交渉を行った。
2018.6.1 毎日新聞

2018.6.4 中日新聞

http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota13/20180531gifukenate.pdf
◇ ◇
要求項目に対してゼロ回答なのは「想定内・織り込み済み」だが、井上課長の対応がちょっとお粗末なのは残念。
井上課長は、「市民団体との交渉なんて、その場の1時間ちょいくらいを適当にやり過ごせば良い」とお考えなのだろうけど、「その場」で終わるとは限らない。
国交省キャリアさんはあちこち異動される-地方整備局や河川事務所と転勤もあれば、地方自治体への出向もある-。
それぞれの場所で市民団体と遭遇することもありうる。
どこかで「あいつは対応が悪い」となると、悪い噂は千里を走って「あいつは前は××にいたはずだがどんなふうだったか?」とメールで「手配」が回ったりする。
2008年度から4年間も岐阜県河川課長だった堂園氏んは、岐阜県河川課長のあと、八代河川国道事務所長になったそうな。
球磨川関係の運動をしている市民団体から「今度来た堂園という所長は、官僚的な態度で話にならないが」と「手配」があったとき、私は思いきり堂園氏の肩をもってしまった。
「まだ慣れない所為だと思いますよ、もっと話し込んでみたら」と。
堂園さんは「一生懸命だった」のは確か。
(「私たちの思い通りの返答をした」などいう類い話ではない、彼はきっちり「本籍・国交省、ただ今ま岐阜県幹部職員」としての-私たちからすれば決して嬉しくない-職責を果たした。)
ついで、2008年以降の岐阜県河川課長
・堂園 2008年度~2011年度
・岩崎 2012年度~2014年度 (兼 県土整備部次長)
・三戸 2015年度~2016年度 (兼 県土整備部次長)
・井上 2017年度~
岩崎氏は張り切りすぎて調べもしないで、「1976年長良川安八決壊の洪水はHWLを超えていた」などと断言して、こちらがビックリ。だけど口をつぐむことで「失敗しない」ように保身を図る人よりよほど好感が持てる。私は、あのムッツリ表情も一種”好き”だったなぁ。
それに比して、三戸さんはいかにも「どうせ短期間、腰掛けのつもり」を露わにしてしまって頂けなかった。
◇ ◇

1.木曽川水系連絡導水路事業について長良川の環境悪化の危惧を表明し、「事業の中止」を求めること。本導水路事業にかかわる東濃地域の渇水対策論は取り下げること。
《否定回答への感想》
(1)
岐阜県の負担分は「利水」分ではなく、「治水」分の地方負担分だから、通常渇水のレベルであれば(=「1/10(2/20)を超える異常渇水」でなければ)、「渇水」云々の言葉が出る要素はない。
水機構事業に移管される前の段階で、中部地整は「(単に1/10を超えるというだけでなく)平六渇水並みの異常渇水のときだけ長良川に(ダムの水を)補給するのだ」と言っていた。
さて「平六渇水並みの異常渇水」への対応はいかにあるべきか?
既報最大渇水への備えをハードで行ったら、水の単価はペットボトルの備蓄以上になってしまう。
だからこそ河川法53条を設けたはずだ。大規模異常渇水のときこそ53条の出番なのだ。
岐阜県は上流県(下流大都市に水を供給してあげる立場)なのだから、加茂・東濃のほうが本当に水が足りなくて困る事態になるなら、(例えば名古屋市がもっている「自流」などの)既得水利権に切り込む調整を(国交省に)堂々と要求すれば良いはずだ。
(2)
「加茂・東濃の渇水に御利益がある」などと公然と言うのは、対他県にとっってマズイのでは?
岐阜県の負担分は「(平六渇水並みの異常渇水時の)古津地点より下流の長良川の水の補給」に対してのもの。
「他に御利益があるなら、ウチの負担分を減らして、岐阜県につけ回してよ」という意見が愛知県や三重県から出てもおかしくはない。(私が、愛知県や三重県の担当者だったら、この言葉にくらいついて、「岐阜県はもっと治水の分担割合を増すべきだ」と言う。自分のところの負担へ減らすために頑張る。)
導水路事業はまだ「再検証」中。アロケの見直しはありうる。
そんな状況下で、他から「岐阜県はもっと負担すべき」などと突っ込まれるようなことを岐阜県の河川課長が吹聴して良いのかな?
(3)
(1)や(2)の問題は、やはり井上課長が「岐阜県職員である以上に『本籍・国交省』だからだ」、と痛くもない腹(?)を探りたくなる。
岐阜県プロパーの職員は岐阜県議会を乗り切ることだけ考えて、他県から突っ込みがありうことは考えていない。課長は「本籍・国交省」で岐阜県の利益(不利益)に関心がない。これでは岐阜県民はたまったものではない。「一度は”国”が入って、3県1市で合意したのだから、もうよそから突っ込まれることはないはずだ」という常識は、もう1990年代から崩れ始めているというのに。
(4)
それにしても、井上課長は事業の根拠たる木曽川水系河川整備計画(そして基本方針)の議論・経緯、さらに「徳山ダムに係る導水路検討会」の本チャンの資料、及び(あれだけ隠した※)「幹事会資料」にざざっとくらいは目を通してからモノを言って欲しい。
なぜ水資源施設・徳山ダムから”水利権”をもつ愛知県や名古屋市に水を引くく導水路なのに、「建設費 治水分/異常渇水対策」が65.5%もを占めるのか?
「異常渇水対策」によってどんな「御利益」がある、と標榜してきたのか。(河川整備基本方針/正常流量の資料にお目通しを)
導水路事業を位置づけた木曽川水系河川整備計画を審議した「木曽川水系流域委員会」で、どのような「説明」がされてきたのか?
その説明と2007年の「上流分割案」は、どう整合し、どう整合しないのか。
「29億円の負担」は岐阜県にとって「大したことない」では済まないし、もし鵜飼いの現場の川底にヘドロが堆積、なんてことになったら本当に「タダじゃ済まない」。「世界農業遺産」が泣く。「清流の国」が吹っ飛ぶ。
※2006年の「上流一通案」が2007年に「上流分割案」になった経緯を情報公開請求したとき、中部地整は「文書不存在」を言い募った。
同時並行で岐阜県も情報開示請求をかけていたが、これも「不存在」。
ま、モリカケ、自衛隊日報問題で露わになった「文書隠し」は今に始まったことではない、といえばそう。
(だからといって安倍政権が免罪されるわけではない。「導水路」の場合、国会で虚偽答弁した上、文書改ざん・・・というところまでは行っていない。モリカケ拒否答弁+公文書改ざん問題は「首相(夫妻)の関与を隠すため、安倍の虚偽答弁を『本当』にしてしまうため」というトンデモ権力犯罪、民主主義の根幹を破壊する大罪だ)
<参照>
・不透明すぎる!木曽川水系連絡導水路-上流分割案-の「合意」 [ 2008-11 -25 14:25 ]
https://tokuyamad.exblog.jp/9751449/
修正・加筆 →08.12.06
http://www.tokuyamadam-chushi.net/sonota/kuni081206.pdf
◇ ◇
<要求項目2>
2.長良川河口堰の「開門調査」に向けた取り組みを行うこと。長良川河口堰調査検討委員会と県民調査団の運営は県民に開かれたものにすること。

揖斐川は砂、長良川はヘドロ。
「河口堰の存在」以外のこの差を説明できるだろうか?

《否定回答への感想》
(1)
「弾力的運用」を、私たちが「ダメだ、やるべきでない」と主張しているかのごとき反応だったので、ちょっと驚いた。それはこの間の経緯を知っている岐阜県プロパーの職員が予めフォローしておくべではなかったか。
(2)
せっかく1997年の河川法改正のときに盛り込んだ「環境」を、「水質基準」レベルでしか捉えられない「国交省河川官僚さんの認識の遅れ(国際水準で言うと『恥ずかしくて話にならない』)」を露呈してしまっていた。
「フラッシュ操作ごとにDOの数値が改善する」・・・だから?
DOの数値が改善されることが一般的に良いことだが、それが生態系の回復にどう寄与したのか、は、どこも検証せず、全く議論されていない。(フォローアップ委員会などでも)
日本全体の環境への認識の遅れが目立つ言っても、仮にも生物多様性COP10を名古屋で開催し、「アイチ・ターゲット」なるものまで取り纏めたのだ。
「あれは環境省マターだからウチには関係ない」では済まなはず。
(環境省の環境影響評価法の担当部署の人は「国交省さんはまだ理解がある(経産省に比べて)」と言ってた。本当かいな。経産省が「話にならないほど酷い」ということか)
(3)
ついで、導水路に関して
「平六渇水並みの渇水時にダムの水を補給して環境改善を図る」というのは全く通らない話だ。
平六渇水並みの渇水時に徳山ダムの水を補給したら、大環境破壊が生じるだけで、環境改善にはならない。
だから「環境レポートに向けた岐阜県の109項目の質問」だったはずだ(そのあたり、すでに引き継ぎがないのか?)。
ちなみに、「古津に冷たいダムの水を流しても、そう長い距離を流れないうちに攪拌されて混ざる」と井上課長は力んで主張していたが、中部地整がそのように言った根拠に使われている「二次元垂直モデル」の試算条件とか、実測での検証とかを、確認した様子はない。
「長良川に7m3/Sしか水が流れていないときにどうなるか」という話をしているのに「二次元垂直モデル」試算を実際の川の流れに当てはめて実測したときの長良川の流量は70m3/Sだった・・・少なくとも洪水に関するあれこれの試算と実測の関係は、そこまでいい加減だとは聞いていないが?
◇ ◇
<要求項目3>
3.ダムによらない伝統的防災施設施策の充実をはかり、内ヶ谷ダム建設工事を中止すること。本事業の費用・便益を明らかにすること。
これは時間切れ。こちらも突っ込んで何かを引き出すカギをもっっていないことも事実だ。
「洪水調節に役立って、環境に優しい穴あきダム」なる宣伝の下、あちこちで大事な生態系や暮らしが破壊されていく。
これを、何とか食い止めねばならない。
◇ ◇

