4月25日 長良川河口堰ヘドロ観察会
市民による豊かな海づくり大会プレイベント
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岐阜新聞 2010年04月26日
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20100426/201004260912_10545.shtml
長良川河口堰付近の河床のヘドロを観察する参加者=25日午前、三重県桑名市長島町
長良川河口堰一帯でヘドロ観察、市民団体
岐阜・愛知両県の市民グループで構成する「市民による『豊かな海づくり大会』実行委員会」は25日、三重県桑名市長島町の長良川河口堰(ぜき)上下流で河床環境を調べ、堆積(たいせき)しているヘドロを観察した。
実行委員会は市民の目線で河川環境を訴えていくため、岐阜大学地域科学部の粕谷志郎教授と「藤前干潟を守る会」の辻淳夫会長の呼び掛けで発足。この日は河口堰付近の現状を知ってもらおうと開いた環境観察会で、元淀川水系流域委員会委員長の今本博健京都大学名誉教授(河川工学)ほか、市民ら約30人が参加した。
参加者は3隻のボートに分乗し、河口堰の下流と上流、河口堰横の揖斐川の計4地点で河床の堆積物を採取。揖斐川の採取地点では砂地にヤマトシジミの生息が確認されたが、長良川の河口堰上下流の採取地点ではヘドロのみで貝類は確認されなかった。
粕谷教授は「長良川河口堰が河川環境に悪影響を及ぼしている」と語り、「全国豊かな海づくり大会を実りある大会にするためにも、長良川の現状に目を向けて」と参加者に呼び掛けた。
また、今本名誉教授は「河川工学者は治水や利水だけでなく、もっと環境に目を向けるべき。水資源機構は市民団体との環境調査や対話に積極的になってほしい」と語っていた。
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中日新聞 4月26日岐阜県版
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20100426/CK2010042602000008.html
長良川河口堰の上流で採取したヘドロを見る参加者ら=三重県桑名市で
河口堰、酸欠で「死の海」 長良川で環境団体がヘドロ調査
東海3県の環境団体などでつくる「市民による『豊かな海づくり大会』実行委員会」は25日、三重県桑名市の長良川河口堰(ぜき)周辺で「ヘドロを見る会」を開いた。堰の上下流の川底からは真っ黒で異臭を放つヘドロが採取され、参加者は船上からゲート開放を訴えた。
同実行委は、6月に関市の長良川で開かれる「第30回全国豊かな海づくり大会」に合わせて「河口堰問題を直視しよう」と結成。大会の1週間前に独自の海づくり大会を開く予定で、プレイベントとしてヘドロを見る会を企画した。
参加者は船に乗り、長良川の河口堰の下流2カ所、上流1カ所と、河口堰のない揖斐川河口1カ所の計4カ所の川底の泥を採取し、比較した。
長良川の3カ所の泥はいずれも、含有酸素量を示す「酸化還元電位」の数値がマイナスで酸欠状態。真っ黒で粘性の高いヘドロがほとんどだった。一方、揖斐川の川底はすべて砂で酸素が豊富。生きたヤマトシジミも確認された。
岐阜大の粕谷志郎教授(環境生態学)によると、堰上流には川から流れてきた有機物が堆積(たいせき)。堰が海水と淡水を分離したため、堰下流ではゲートを超えた比重の軽い淡水と、重い海水が層を形成。底に新しい酸素が行き渡らず「酸素が必要な生物が生きられない死の海」になっているという。
また、堰で潮の干満がなくなったために激減したヨシ原も見学。岐阜大の山内克典名誉教授(動物生態学)によると、1995年の堰運用から8年で、河口のヨシ原の9割が消え、水の浄化作用が失われたという。今本博健京大名誉教授(河川工学)は「当時の河川工学が環境への配慮を欠いていたことは明らか。これらの情報を市民や行政が共有し、ゲート開放の必要性を考えるべきだ」と話している。 (山本真嗣)
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岐阜新聞・読売新聞PDFファイル版
中日新聞PDFファイル版
・・・というわけで大盛況。3艘の船に分乗し、河口堰の下流から堰の閘門をくぐって上流までへめぐってきました。
エクマンバージという金属製の採泥器を使って、4地点で川底の砂・泥を採取し、手触りや色や臭いを観察するとともに、酸化還元電位(ORP)も調べました。ORPは酸素が多ければプラス、酸欠状態ならマイナスになります。
参照 blog やっぱりヘドロが溜まっている/長良川河口堰
http://tokuyamad.exblog.jp/13197020/
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(1)揖斐川4.0km
砂で褐色。無臭。
小さなヤマトシジミを確認。
ORP +135mV
(2)長良川4.2km
表面に薄く褐色の層。これはシルト粘土有機物などで酸素が多少あるために褐色をしている。この表層にはヤマトスピオという貧酸素耐性のあるゴカイの仲間がみられる。
薄い表層以外は黒色のねっとりと固まったヘドロ。黒色。腐臭あり。
ORP -358mV
(3)長良川5.0km(揖斐川からの水が流れ込む通り道)
見た目は(2)に似ている
ORP -30mV
(4)長良川5.8km(堰直上流)
見た目は(2)に似ている
ORP -225mV
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(1)地点と(2)地点のものを比較したのが下の写真です。褐色のものが(1)、黒色のものが(2)。
さて、「初めて」体験で面白かったのが、堰の通過。下の写真は「閘門に向かっていざ!」です。
パナマ運河のような閘門を通過します。
下流から上流に通過するときは閘門内にどうっと水が流れてきます(写真左下)。水平面を目の高さで見るというのは短くない人生で初めてのように思います。
この日は上流側と下流側の水位差が少なくてこの程度。水位差が大きいと「滝の真下にいる」ような感じになるそうです。
河口堰上流のヨシ原。河口堰運用以来、9割近くも失われ、こうして歯抜け状態になってしまいました。
根本の土壌がより失われやすくなって、さらに生育条件が悪化しています。このままでは早晩なくなってしまうでしょう。
事業者側は、これまでも植栽などを行ってきましたが、ことごとく失敗しています。笑止なのは、「ヨシ原再生事業」と称してわざわざ中州を造成したこと。ここにヨシを植えたけれど、結局はヤナギやセイタカアワダチソウにとって代わられてしまいました。 ヨシは根元が浸ったり浸らなかったり、という水位差があるところで元気よく繁茂します(川の感潮域など。干満の差の大きい地域のほうがヨシ原の広がりが大きいという相関関係があるといわれる。琵琶湖にもヨシが生えるが、琵琶湖も年変動で水位が上下する)。
ヨシは、完全に陸化した場所では他の植物との競争に勝てないのです。・・・植物の生息環境についてのろくな知見もなしに「環境改善」「環境再生」と宣う河川管理者のオマヌケぶりがここにもあらわれています。
木曽川下流河川事務所では、木曽三川下流部でヨシ原再生事業を行う、と言います。しかし、長良川での繰り返された失敗について「民間主体でやったようだが、よく知らない」(=木曽川下流河川事務所河川環境課長、10年3月11日)そうです。前の失敗の要因も「知らない」ままに、「環境改善・再生」を図っても同じ失敗をエンドレスに繰り返すだけ。まさに税金の無駄遣い。
参照 blog 長良川河口堰直下流に関する疑問
http://tokuyamad.exblog.jp/d2010-03-15
blog 続 長良川河口堰はやっぱり「大問題」
http://tokuyamad.exblog.jp/12965784/
長良川河口堰湛水域でヨシ原が失われた主たる要因は、水位差が失われたことにあると考えられます・・・とすれば、やはりゲートを上げて汽水域・感潮域を取り戻すことこそヨシ原再生の重要なカギ。
ヨシ原が水質浄化に大きな役割を果たしていることは、今や誰も否定できません。「環境改善のため」に890億円×65.5%も税金を使って環境破壊にしかならない導水路などを作っていないで、金もかからない(せいぜい調査費用しかかからない)長良川河口堰ゲート開放を行うことこそ、COP10議長国のやるべきことのはずです。
皆さん、興奮して(面白すぎて)、記念写真を撮り損ないました。
最初に予定を説明しているときと、河口堰をバックに「ゲート開放を!」という横断幕を掲げてアピールしている下の2枚の写真は、自分たちでは撮り損なって遠方から参加した方から頂いたもの。
陸に上がってから、「東海道七里の渡し」の面影の残る川口町の老舗で「その手はくわなの焼き蛤」定食を満喫しました。